第九話 プロポーズの返事と
捉えた旧王の忠臣は魔法使いチャラ男の魅了の魔眼の前に、ことの全てをぽろっと吐いた。
王国は関係なく私情で動いていたこと、先輩記者を利用し、勇者太郎の国に因縁をつけ潰そうとしたこと、人の純血を守ろうとしたこと、既に先輩記者以外の配下も祭りの観光と偽り勇者太郎の国に紛れ込ませ、破壊工作の準備を始めさせていることなど。
至急、勇者太郎達は彼の情報をもとに町中を駆けまわり、計画されていた破壊工作は未遂に終わった。
先輩記者が旧王の忠臣をお持ち帰りしなければ、今頃町が壊されけが人や死者が出たかもしれないと、勇者太郎は彼に感謝を述べた。
全てが無事解決したので、情報を全てを吐いた旧王の忠臣には、代わりにカレーをたらふく食べさせ、異文化を堪能してもらった後、野菜を持たせて帰ってもらった。
戦に負けただけではなく、軽んじていた勇者太郎の国に恐ろしくうまいものを食わされ旧王の忠臣は文化的にも敗北した。
戦いはそうして終わった。皆そういうことにした。
「それじゃ、行ってくるよ、後輩くん」
教会機関からの護送用の馬車に乗り、先輩記者は後輩記者に別れの挨拶をした。
勇者太郎の国が王国軍を退けてから一週間後。先輩記者の告白により、彼は教会機関の牢に入ることになっていた。
要人暗殺、勇者太郎殺害未遂と先輩記者の罪は計り知れない。
しかし、その彼の能力は研究対象として有用とのことで懲役400年が定められ、死罪は免れていた。
「先輩! ちょっと待ってください。まだ私は先輩の返事を聞いていません!」
後輩記者は先輩記者が乗り込んだ馬車に近寄り、彼に声をかけた。
彼女のプロポーズに対して先輩記者はいまだ答えを出していなかった。
(……やっぱり懲役400年じゃ無理だよね)
先輩記者は自身の手を見る。罪に汚れた人殺しの手。
答えを決めた先輩記者は彼女に答えた。
「それは、その、外に出られたときに言うよ」
「……」
泣きそうな顔の後輩記者。
プロポーズを断る言葉にしては、未練がましい台詞に自分を恥じ、先輩記者は言葉を変えた。
「……ごめん。やっぱり、僕に縛られないで後輩くんは好きな人生を歩んで」
「先輩……分かり、ました……」
汚れた自分の手では、一緒にいてはいけないという気持ちがどうしても先輩記者の中で先行していた。
彼女とどこか別の国で生きていくということも考えなかったわけではない。
だけど、それは果たして彼女の幸せなのだろうかと、先輩記者は考え、プロポーズを断った。
そうして馬車は出発した。
そして城門を抜ける少し手前――。
「待っててくださいね!! 先輩!!」
――彼女の声が遠くから聞こえてきた。
後輩記者の意図がつかめず、何のことだろうかと先輩記者は首をひねった。
少し考えたが、意味がつながらず、もしかしたら何か聞き間違えたのかもしれないと、先輩記者はそう結論付け、それ以上は深く考えなかった。
(もう二度とこの景色をみることはないのだろうな……)
馬車の窓から外を見れば、遠くに勇者太郎の国が見えた。
観光や、国王たちとの出会い、後輩記者のプロポーズ、様々なことがあった。
そのすべてを置き去りにして馬車は教会機関に向けて進んでいった。




