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俺たちの結婚を認めてくれ!~魔法使いに嵌められて幼馴染に婚約破棄を言い渡された勇者が婚約したのはラスボスでした~  作者: 鏡読み
後日譚 結婚が認められた国

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第一話 先輩と後輩

 石造りの城壁は高く、堅牢に作られていた。

 その城壁に沿って、屋根付き馬車が一台走っている。


「ついに来ましたね、先輩。おお、城壁が大きいです!」


 屋根付き馬車の荷台から、キャスケット帽をかぶった小柄な少女が顔を出し、城壁を見上げて、楽しそうな声を上げた。

 彼女は後輩記者。王国唯一のマスメディア、王国出版に去年入社した新人記者だ。


(どうやらかなりご機嫌のようだ)


 長い白髪を紐でひとまとめにした無精髭の男は、そんな後輩記者の様子を御者台からうかがいながら馬車を進めた。

 彼は先輩記者。後輩記者と同じ王国新聞に所属する彼女の先輩だ。

 ここは勇者太郎が作った国。異種族の結婚が認められた国だ。

 二人は王国出版の記者として、勇者太郎へインタビューを行うためにこの国までやってきていた。


(本当は、僕一人でやるつもりだったのだけども……)


 うっかり後輩記者に取材の話してしまったのが先輩記者の失敗だった。

 目を輝かせた彼女に粘り粘られ、連れていくまで放さないと全力でしがみつかれた。

 止むに止む無く、先輩記者は彼女の同行を許可した。そんないきさつを思い出し、彼は苦笑いとため息をついた。


「それで先輩。この国って、入国するにはどうすればいいんですか?」


 後輩記者が今更になってそんな質問をしてくる。

 先輩記者は頭を押さえた。


「……入国用の門から入るんだよ。ところで後輩くん取材対象の予習はちゃんとしてきた?」

「えへへ」

「えへへって……。まったく、笑ってごまかさないの」

「はーい、すみません」


 おそらく勉強していないなと、先輩記者はため息をついた。

 だが、さすがに何も知らないのはまずいだろうと彼は後輩記者に入国手続きの手順を話した。


「他国の人間がこの国に入るためには、まず入国用の門に行き審査と、国内で使う通貨の換金が必要なんだ」

「なるほど、なるほど。こんなに持ってきたのに、王国のお金は使えないんですね」

「そうらしいよ」


 後輩記者が乗っている馬車の荷台には王国の通貨が袋詰めにされ、山積みになっていた。


「まあ、これだけあっても5日分ぐらいの滞在費だけどね」

「王国でもランチ一か月分ぐらいですしね」


 そんなやり取りをしつつ、小一時間馬車を走らせ、二人は巨大な門の前にやってきた。

 入国用の門は見上げるほど大きく、鉄製の扉は人間の力では到底開けられそうにない代物だった。


「ストップ! そこの馬車、止まってください!」


 門の前に立ってた門兵の指示に従い、先輩記者は馬車を止め、御者台から降りた。


「ここは勇者太郎の国です。ご用件をお伺いしてもいいですか?」

「この国で数日滞在をしたいのですが」


 先輩記者の言葉に、門兵は慣れた様子で腰のポーチから記録用の魔法の紙とペンを取り出し手渡した。


「分かりました。ではここに滞在目的と滞在期間を書いてください。換金は必要ですか?」

「ええ、お願いします。五千万G分でお願いします。」

「準備してきます。ここでお待ちを」


 見張りの兵士は入国者用の門の隣にある、詰め所へと戻っていった。

 五千万Gと言えば大金のように聞こえるが、この国でコインという単位で五千前後のお金に変わる。

 朝食付きの宿を取ると一泊200Cほどのお金がかかるとのことなので、それを加味して多少余裕がある額を先輩記者は用意していた。


(滞在目的は取材、期間は三日、っと)


 門兵が戻ってくる間に先輩記者はすらすらと魔法の紙に必要事項を記述した。

 ややあって、先ほどの見張りの兵士が手押し車と大きな木箱を用意して戻ってきた。


「それではすみません。この中に換金するお金を入れてください。枚数はこちらで確認します。木箱が足りなかったらいってくださいね」

「ありがとうございます。後輩くんも手伝って」

「はいはい~!」


 兵士から木箱を受け取り先輩記者は後輩記者と手分けして、馬車の中に大量に詰め込んできていたお金を入れていく。

 一杯になった木箱を兵士に渡し、おかわりをもらい、また詰めていく。

 そんなやりとりを5回繰り返し、ついに馬車に積んでいたお金の山がなくなった。


「お疲れ様でした。こちらが換金された4900Cです。出国前にGに換金しますので、こちらに必ず寄ってください」

「……4900Cですか? 以前そちらに入った方から、5000Cほどと交換できると聞いていたのですが?」

「実は明日がちょうど我が国の建国祭でして、各国からの人が集まってしまい貨幣価値が上がっているので……」

「ああ、なるほど」


 先輩記者はちらりと後輩記者を見る。

 後輩記者は目をキラキラ輝かせながら、先輩記者の視線に答えた。


「いやー楽しみですね。建国祭♪」

「もしかして初めからそれが目的?」

「いっつも、先輩が言っているじゃないですか? 予習はしっかりするようにって」

「まったく――」


(――なんて日に来てしまったんだ)


 先輩記者は首に身に着けているチョーカーを触った。

 彼には記者として勇者太郎を取材する以外に、もう一つ請け負った仕事があった。


(これでは仕事ができないかもしれない――)


 彼が受け負った仕事、それは――勇者太郎の暗殺であった。

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