SS ナジミを継ぐもの【アフターストーリー 幼馴染剣士視点】
幼馴染剣士にはナジミという変わった友達がいた。
ナジミは彼女の体の中に同居し、幼馴染剣士に代わり体を動かしていた。
ナジミはとにかく活動的な女性だった。
婚約者とともに世界を冒険し精霊が宿る伝説の剣を作ったり、冒険の後には新興国家の都市開発なんてこともした。
引っ込み思案の幼馴染剣士にとって、それは刺激的な日々だった。
幼馴染剣士はナジミが見せてくれる光景にいつもワクワクしていた。
だが、いつまでもナジミは体に居続けられるわけではなかった。
二人が話し合う時は心の中。
ロクジョヒトマ、と呼ばれる植物の床の上で話し合いが行われる。
幼馴染剣士はよくわからないが、聞くところによるとナジミの世界の一般的な部屋らしい。
部屋にはチャブダイと呼ばれる小さなテーブル、ザブトンとよばれるクッション、どれもこの世界には存在しない家具が用意されていた。そして部屋の周囲は壁がなく、何もなく暗闇が続いている。
その部屋に黒い髪の細身の女性が座っている。
彼女がナジミだ。彼女はビョーインギという薄いガウンのようなものを身につけていた。
『んー、いらっしゃい。それじゃ用件ね。そろそろ時間みたいなので体を返すわ』
ナジミはあっけらかんと幼馴染剣士に言った。
なんの前振りもない別れ話に幼馴染剣士は困惑した。
「そんな、どちらに行かれてしまうのですか?」
『さあ? 天国か、地獄か、現実か、生きているかどうかもわからない身だし』
「そんな……」
『でも、さすがにいつまでもあんたの体を借りっぱなしってわけにはいかないでしょ? チートスキル置いていくからあんたも楽しみなさいって。このスキルを持っていれば自分が望むルートに進むと必ず最良の結果が得られるわ』
でも、あなたがやりたかったことはできなかったのでしょう? と言いかけ幼馴染剣士は言葉を飲んだ。
彼女が勇者太郎と結ばれたいと願っていたことを幼馴染剣士は知っていた。
でもナジミは幼馴染剣士の体を気にかけ、それを捨てた。
それが原因でひどい目にもあったけど、それはそれ、自分だけだったら体験できない思い出だ。
「ありがとうございます。ところでナジミ、ずっと気になっていたのですが、ルートって何ですか?」
『改めて言われると困るわね……。元々は道って意味だけど、この場合は運命とか、そんな感じ?』
「はぁ、なるほど」
『それじゃ、そろそろかな。バイバイ、ありがとう楽しかったわ』
そういうとロクジョヒトマは消え、ナジミも幼馴染剣士の中から消えていった。
気が付くと幼馴染剣士は、自分の体を自分の意志で動かせるようになっていた。
「はじめは誰かに体を操られているようで嫌だったのですけど。……今はとても悲しいですわ」
幼馴染剣士は友達を失ったことに涙した。
泣いて、泣き続けて、そして決意した。
友達が残していったものを大切にしよう。仲間も町も全て。
それがナジミを継ぐものとして、幼馴染剣士がやりたいことになった。
ちなみに勇者太郎達は彼女の変化に驚愕し、少し休んだ方がいいと真剣に彼女を心配した。




