┗SS そしてそれは証明された【第十八話純朴可愛い系神官視点】
純朴可愛い系神官は食事を運んでいた。
地下への階段を降り、預かっていた鍵で扉を開ける。
ここは教会機関内の牢獄、純朴可愛い系神官はその中で一番厳重な区画。
純朴可愛い系神官はその中の最も奥である能力を制限する檻まで歩みを進める。
彼女は一度深呼吸をし、そこに捕らえている男、魔法使いチャラ男に声をかけた。
「食事です」
返事を待たずに檻に備え付けられている差し入れ用の小窓に運んできた食事を押し込む。
「お、マジきたサンクス。神官ちゃん、マジ久マジ」
魔法使いチャラ男は小窓から食事を受け取るとそれを手元に寄せおいしそうに食べ始めた。
だがすぐに何かを思い出したのか、一度手を止める。
「あれ今日、太郎っちの結婚式じゃね? 神官ちゃんどしてここに?」
「そうですね……私が行くまでもないというか、そういうことです」
「ん?? んんんん?」
魔法使いチャラ男が首をかしげる。
しかし悩んでも仕方ないと考えたのか再び食事に手を付け始めた。
「魔法使いチャラ男さん、あの時、私は自分が魅了にかかっていると知って、自分の気持ちが分からなくなってしまった」
「んー、おっけい。俺っちもさすがにやり過ぎは反省してるヨ、殴られるのは致し方なし」
「私はまっとうな神官です。そうそう暴力には頼りませんよ。……それに貴方は知っているでしょう、私は皆より強くない」
檻越しに純朴可愛い系神官は魔法使いチャラ男に話を続ける。
「私がどうしても勇者太郎さんたちについていけなくなったとき、あなたは私と結婚し、パーティから離れてくれた。あの時は嬉しかった」
「それは神官ちゃんがマジカワだったから」
茶化す魔法使いチャラ男に純朴可愛い系神官は首を振った。
「何時だってそう。あなたは優しい。本当は優しい人」
「こそばゆっ、まじこそばゆっ!」
「幼馴染剣士さんとのことも、彼女がラストダンジョンに行くと死ぬという話を信じパーティから連れ出した」
「ノンノンあの魅惑のボディをいただきたかったわけ、あ、ごちそうさん」
「……そうですか」
純朴可愛い系神官はそう言うと小窓から返された食事の食器を下げた。
「食事は終わりですね。それじゃあ、また」
そうして食器を持ち帰っていく。
そして彼女は牢獄から出て、息を吐いた。
食器を落とさないように気を配りながら背筋を正す。
(……ああ、よかった)
能力を抑制する檻にいる魔法使いチャラ男は魅了の魔眼を使えない。
だからこそ彼女は、彼に会いにいった。誰しもが気になる勇者太郎とラスボス子の結婚式を利用し、仕事を変わると仲間を言い包め。
(私は、やっぱりまだ、あの人を好きなんだ)
そして、それは証明された。




