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俺たちの結婚を認めてくれ!~魔法使いに嵌められて幼馴染に婚約破棄を言い渡された勇者が婚約したのはラスボスでした~  作者: 鏡読み
俺たちの結婚を認めてくれ!

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第十三話 プレゼントの相談をしよう

 ラスボス子の計略で王国が不可侵条約を受け入れた後、勇者太郎は一人魔界を訪れていた。

 あちこち旅をして知り合いの多い彼であったが、さすがに魔族の知り合いはいないので、魔族の慣例やルールを知るためだ。

 ここは魔界の三丁目、四丁目は少し前に消滅し、区画整理が始まっていた。


「ラスボス子に指輪をプレゼントしたいんです。これは魔族的にはどうなんでしょうか?」


 ラスボス子宅にお邪魔し、リビングに通された勇者太郎は緊張しながら切り出した。

 出されたお茶を持つ手が震える。いかに勇者といえど、単身で婚約者の父親に会いに行くのはやはり恐ろしいものなのだ。


「ふぅむ。なるほど、指輪か」


 彼の言葉にラスボス子の父親は考え込んだ。

 その仕草はどことなくラスボス子に似ており、やっぱり親子なんだなと勇者太郎は少し肩の力が抜けるのを感じた。


「魔族としては問題はないが、私以外の意見も聞いたほうがいいだろう」

「え?」

「コール、四天王緊急招集!」


 ラスボス子の父親は元ラスボス権限を行使し、四天王を招集した。

 リビングに四つの転移魔法が発動する。


「緊急招集にお応えしはせ参じました。ハート、クイーンサキュバス」

「到着いたしました四天王が一人。スペード、キングスケルトン」

「お待たせしました。クラブ、グレーターデーモン」

「もう、突然呼び出さないでください。ダイヤ、アスタロト」


 そして四つの転送魔法から中ボスクラスの魔族が4人現れた。

 如何わしい恰好をした美女、鎧付き人骨、筋肉悪魔、竜のぬいぐるみを抱え清楚な服を着ている女の子が、ラスボス子の父親の周りに並び立つ。


「うむ、ご苦労。集まってもらったのはほかでもない。この男――――」

「ぬわあああ! この人間は!!」


 グレーターデーモンは勇者太郎を指さした。


「あ、どうも、その節は」


 勇者太郎は軽く手を上げ挨拶した。

 グレーターデーモンは身構えた。彼は以前、勇者太郎に一本背負いで倒されていた。


「その節はじゃねぇ! さては人間、お前、俺様だけでなくラスボスファザー様まで倒しに来たって言うのか!」

「ほう、あのグレーターデーモンがやられるとは」

「しかしヤツは補欠合格の繰り上がり」

「――我ら四天王の中ではびっくりするほど最弱」


 戦闘に入る流れを感じ取り、残り三人の四天王が次々に口上を述べていく。

 グレーターデーモンは部屋のすみっこで泣いた。さめざめ泣いた。


「いやいや、お義父さんを倒すなんて滅相もない」

「お義父さんですって!」


 クイーンサキュバスは勇者太郎の一言で何かを察したようだった。

 残り三人を集め円陣を組み、情報を共有していく。


「ほら、私、去年、魅了の魔法をラスボス子様に教えたじゃない」

「ああ、あの、お見合い御所消滅事件の後か」

「つまりこれは――」

「魅了にかかっている!」


 駄々洩れの声を聞こえ、勇者太郎はどう説明しようか悩んだが、魅了にかかっていることにした方が話が早そうだと読まなくていい空気を読んだ。

 四人がバッと一斉に勇者太郎を振り向き、手もみをしながら近づいてきた。


「ささ、ラスボス子様の愛し人なら、人間でも我ら魔族も同然」

「あ、お茶なくなってますねお持ちします」

「俺様は認めねぇ。認めねぇぞ。ラスボス子様がお前を選んだなん――」

「ところで、ラスボスファザー様どうして私たちを呼んだのですか?」


 アスタロトの疑問にラスボス子の父親は答えた。


「この男、私の愛娘に指輪を送りたいそうなんだ。魔族としては問題ないが私は最近のトレンドとやらに疎くてな。それで皆の意見を聞きたい」


 四天王は全員驚愕した。

 彼らはもう一度情報を共有しなおすために円陣を組んだ。


「娘のこととなると、お見合い御所すら消滅させるラスボスファザー様が、愛娘をたかが人間に任せようとしている」

「それほどまでに、この男が強いのか……」

「強い、バリツとかいう謎の格闘術で俺の部下たちを圧倒しやがった」

「ほえー。それじゃあ、真面目にいきましょう」


 四天王全員がキリリと効果音が聞こえそうなほど表情を引き締めた。


(こいつら面白いな……)


 勇者太郎はお茶を啜って静かに四天王の様子をうかがうことにした。

 先陣を切ったのは如何わしい服の魔族、クイーンサキュバスだった。


「それで、指輪をラスボス子様に送りたいですって?」

「そうんなんだ。魔族的な理由でNGとかはないか? 送っちゃいけないデザインとか」

「我ら魔族にとって指輪は魔法の媒介にするものですから、どういったものでも大丈夫ですよ。ねぇ、アスタロト」

「ええ、服従の呪いが付いた首輪でもなければ大丈夫よ」

「それは人界でもNG案件……」


 勇者太郎は首輪をつけたラスボス子を想像しかけて、頭を振り、妄想を振り払った。

 支配欲があるわけではないのだが、小動物感がある彼女と首輪の組み合わせは想像以上の破壊力を持っていそうだった。


(いかん、いかん。そういう関係になりたいわけじゃないし……)


「ちょっとまて! 人界ではコンバク指輪といって相手の人生を縛り付ける指輪があると聞くぞ。聞くところによると、それを身に付けてしまったまのは、苦しみを二倍に、喜びは分かち合い半減してしまうそうだ」

「なにそれ怖い」


 グレーターデーモンの一声で四天王たちは震えあがった。

 どうやら間違えているようなので勇者太郎は訂正した。


「それは婚約指輪といって――――」


 その後しばらく話し合って。ラスボス子の得意なゴーレムの操作術に関連したデザインの指輪がいいのではという結論に至った。

 他にも女性陣から結婚式の衣装の話などを仕入れ、勇者太郎は魔族に詳しくなった。

 そうして、魔界名物カレーまでご馳走になった勇者太郎は四天王にお礼をいって人界へ戻ることにした。


(いい情報を手に入れた。うん、城に戻ったら早速店を探してみよう)


 鼻歌交じりに魔界から戻った勇者は俄然、不可侵条約の締結に燃えるのだった。

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