┗SS 王国は赤く燃える【第十二話魔法使いチャラ男視点】
金髪、黒い肌の男はくすんだ金色の瞳で、燃える城を眺めていた。
彼の名は魔法使いチャラ男。己の特技で王お抱え魔法使いにまで上り詰めた人物である。
魔法使いチャラ男には苦手なものがある。一つは炎、もう一つは王国、最後に勇者太郎。
特に炎は苦手だった。それを見るたび王国に両親を焼かれた過去が蘇るからだ。
魔法使いチャラ男の父親はインキュバスだった。そして王国が作った異種族の結婚は極刑という法律に、彼の両親は焼かれた。
彼にとって炎は両親の絶叫、黒く焦げていく肉体、鼻につく悪臭を記憶から呼び起こし、その光景は彼にとっての地獄だった。
だがその地獄は皮肉にも彼に眠るインキュバスの力を覚醒させた。
結果、彼はインキュバスの力を使い極刑を逃れ、彼は王国に潜り込み王に召し抱えられるまでに至る。
更にトラウマによる炎のイメージの強さから、炎系魔法を極め、一時期は勇者太郎とパーティを組むなんてこともあった。
「うひょ! ついに始まった、いや、マジアゲアゲ」
湧き上がるトラウマを茶化すために一人呟き、城を眺める魔法使いチャラ男。
彼が眺める先の城は火の手が上がり、いま、まさに国民による革命が行われていた。
「太郎っちをアングリーさせれば、王国とぶつかってくると踏んだが、いや、これはマジ鬼畜の所業」
それとも勇者太郎が結婚すると宣言した魔族の仕業だろうか。
魔法使いチャラ男が知っている勇者太郎は薬草片手にダンジョンの罠を受けながら進む猪のような男だ。
この状況はそんな男が起こしたとは考えにくかった。
「た、助けてくれ……!」
魔法使いチャラ男は突然、中年の男に抱きつかれた。
彼は城から視線を戻し、その男の肩をつかんで引きはがした。
引きはがした男は現国王だった。
「うほ、王様じゃん、何その恰好、マジ家なき子じゃん」
炎の中を突っ切って逃げてきたのだろう服は焦げ付き、顔は煤だらけ、昨日まで玉座に座り偉そうにしていた人物とは到底思えなかった。
「助けてくれ、魔法使いチャラ男殿、私を、私を助けてくれ」
「ん?」
魔法使いチャラ男は思った。
今ならこの男を殺せる。この男の親、前国王は魔法使いチャラ男の両親を殺した法律を作り上げた張本人だ。
今なら、炎で焼き殺したところで革命に巻き込まれたと処理されるに違いない。
たとえ疑われたところで、父親から受け継いだ魅了の力を使えば、ほぼ問題なく対処できるだろう。
「王国は諦める?」
「え? あ、ああ、諦める! だから」
大の大人がぐずぐずに泣いていた。
死の恐怖で怯えていた。
(炎で破滅するとは、因果応報だ。でも、まあ、親の罪は子にあらずとね)
魔法使いチャラ男はこの男をいたく気に入っていた。
魅了にかけられたともしらず、自分をお抱え魔法使いに引き立てた、バカな人間。
女癖は最悪。酒の趣味も良くはない。しかし情に厚く、成功を分かち合う。彼はそんな人物だった。
「……そんじゃまぁ助けてあげますヨ。」
そういうと魔法使いチャラ男は国王を連れ、その場を離れた。
「ところで王様、この後、何すんの?」
「城から持ち出した装飾品がいくつかある、それを元手に何とかする」
魔法使いチャラ男が見ると彼の腰には、指輪か宝石がはいっていると思われる袋がつるされている。
「じゃっさー、太郎っちの国にいってみなよ。あそこ住民募集中みたいだし」
「お、おお……さすが魔法使いチャラ男殿。今、光明が見えた。感謝する。そうだこれを」
そういうと王様は袋から糸が幾重にも巻き付いたようなデザインの指輪をとりだし、魔法使いチャラ男に渡した。
「たとえ落としても指輪をはめていた者の魔力がこれから伸び、所有者に指輪の位置を伝えてくれる指輪だ。うまく金に換えられれば、かなりの値段になるだろう。礼だ、受け取ってくれ」
確かに魔法を付与したアイテムは高く売れる。
しかし、魔法使いチャラ男はその指輪を国王に返した。
「俺っち男から指輪をもらうのはノーセンキュなんで、王様の生活の足しにしなヨ」
「そうか、すまない……。ところで魔法使いチャラ男殿はどうするのだ? 一緒に来てはくれないのか?」
「俺っち? 俺っちはまだここでやることあるんよ」
「そうか……残念だ」
魔法使いチャラ男は、すでに革命を行った者たちの大半に魅了をかけていた。
彼らの中に入り込むのは容易だろう。
魔法使いチャラ男はこの事態を作り上げた人物に興味があった。
そしてなによりも、勇者太郎が気に食わなかった。
魅了の力が効かないあの男が気に食わなかった。
自分の両親は異種族結婚を認められず炎に焼かれた。だが、両親と同じ状況のあいつだけが幸せになろうとするのがどうしても気に食わなかった。
その後、国王は勇者太郎の国へ旅立った。
それを見届けた魔法使いチャラ男は振り返る。
王国はいまだ赤く燃え続けていた。




