5話
俺は、しばらく沈黙していたが、ふーっと深いため息をつくと
「ドンマイ俺!」
とけっこうなボッリュームで叫んだ。
「ちょっと、急に怖いんですけどっ…」
ハナビがテレビの後ろに隠れながら顔だけを出し、俺の様子をうかがった。
「すまんすまん、これは自分にカツを入れるための儀式みたいなもんだ」
「そんな儀式初めて見たわよ」
まだテレビの後ろで警戒しながらハナビが感想を述べた。
「正直、さすがにまだ自分は死ぬ運命って理解出来てはいない。でもさっき言ったろ?ハナビからどんな話をされたって受け入れるって。俺は俺の運命を受け入れる。だからせめて、最期くらい人助けしてから死にたいさ」
その言葉に、テレビの後ろにいたハナビは飛び出して俺のそばまで来て、俺の顔に可愛い顔を近づけた。
そして、キラキラと瞳を輝かせながら
「気に入った!!アンタいい奴じゃないか!アタシ、アンタみたいな奴、嫌いじゃないよ」
と江戸っ子の如く 啖呵を切った。
顔を近づけたままの2人は、謎の沈黙のまま数秒見つめ合っていた。
一気にハナビの顔が紅潮する。
猛スピードでハナビは距離を取ると
「嫌いじゃないって、別に好きってわけじゃないからねっ!」
あたふたしながらハナビは念を押した。
「分かってるよ。でも、ありがとな、ハナビちゃん」
思いがけない感謝の言葉に虚をつかれたハナビは
「わ、わかればいいのよ」
と、腕を組み顔を隠すように、フンと向こうを向いた。
「ところでアンタ、アタシの名前〝ちゃん〟付けなくていいから」
「え?いいの?じゃ、ハナビ」
「順応早いし!気を使いなさいよ!」
「え?だっていいって言ったじゃん」
「そ、そうだけど、ちょっとはさ、まずは1,2回断ってからさ、それが礼儀ってゆーかさ…。んーーー!もういい!」
ハナビは1人勝手に憤慨すると、ふてくされて再び向こうを向いてしまった。
やれやれ、よくわからんが。これがお年頃ってやつか…。
「なあハナビ。ここにいてもしょうがないし、そろそろ行くわ。異世界に」
ハナビはその言葉を待っていたのか、クルッと振り返ると
「よしよし、いよいよ旅が始まるね!アタシも頑張らないと!」
その言葉に俺は三度キョトンとした。
「え?ハナビついてきてくれるの?」