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33話 さらなる何か

「ウフフフ、楽しくなってきたわ。でもあの人狼、弱すぎてガッカリしちゃった。ゴミ以下だわ。奴の家族は後で皆殺しね」


三つ目のカラスの瞳は、おびただしいゾンビに取り囲まれる者たちを、しっかりと映していた。


「ヌビはいい仕事したわ。もうすぐ、もうすぐあの澄ました顔の女騎士が、醜いゾンビに喰い殺されるのよ…。ああ…、ゾクゾクしちゃう…!」


ミランダは、ベッドの上で、自らの身体を弄りながら、喘ぎ声を上げた。


「早く…!早く絶望の悲鳴を聞かせて…!」


ミランダは、1人火照る身体を慰めていた。



◇                       ◇




「ねえ!おじさん!」


ハナビがオズワルドに声をかけた。


「何だい?今、僕は忙しいんだけどね。因みに僕は25才だ」


オズワルドは注釈を添えて返事する。


「おじさん魔法使ってたじゃん!このキモイ奴ら魔法で何とかしてよ!」


「なるほど良い提案だ。〝お兄さん〟が答えよう。僕は基礎的な回復魔法しか使えない。騎士団員は皆、回復魔法の基礎を習うからね。即ち、僕もシャナ団長も攻撃魔法は使用できないのさ」



オズワルドは、絶望的な説明をした。


「オズワルド!ゾンビの脚を狙い、動けない間に逃げるぞ!」


「し、しかし、ゾンビはこのまま放置ですか…!?」


「それが今出来る最善の策だ…」


シャナは歯を食いしばった。


しかし、さらなる駄目押しが彼らを襲う。



ブチブチブチ。


包帯の男の死体の、首の切断面から異様な音がした。


「何なのよ!気持ち悪い…!」


ハナビは半泣きで俺にしがみついている。


「オズワルド、何かが現れる!お前は後ろのゾンビの脚を攻撃し退路を作れ!」


「し、しかし、その何かが想像を超えるものならば、結果ゾンビが増えてしまうだけになるのでは…!」


「構わん!私が相手をする!その2人と共に逃げろ!」


シャナは険しい声でオズワルドに命じた。


「くっ!シャナ団長…!ご無事で!」


オズワルドは後方のゾンビ達の脚を狙う。


「君たち!ついて来るんだ!走って!」


脚を切断されたゾンビは、その場で地面に這いつくばる。しかし、すぐにその切断面から、別のゾンビが蠢き血しぶきを上げながら現れるのだった。




シャナの目の前では、死体から異様な何かが生まれようとしていた。



首の切断面をこじ開け、メキメキと不快な音と共にその何かは傷口から顔だけを出す。その顔はキョロキョロと周りを見て、シャナを確認するや否や興奮したように全身を切断面から必死に出そうと、もがいた。


そして、とうとうそれが現れる。



黒い鱗に覆われた皮膚、長い尻尾、2本足で立つトカゲのような顔のモンスター。シューシューという呼吸音をさせ、しっかりとシャナを黒い瞳で捉えている。


「こいつは…、リザードマンか…!?」


周りには数十のゾンビ、その中心には、リザードマン。それらが皆、シャナを狙っていた。



「私もどうやらここまでのようだ…」


シャナは、諦めにも似た苦笑をし、剣を構えた。



オズワルドと俺たちは暫く走った。


すると、彼が真剣な面持ちで俺たちの肩に手を当てた。


「君たち2人、すまないがこのまま自力で逃げてくれないか?僕はシャナ団長を助けないと。命令違反で怒られるだろうけど、あの方を置いては行けない。僕があの人を守らなきゃ」


ハナビは、大きく頷いて


「そうだよ、おじさん!それでこそ騎士だよ!」


と熱くなった。


「はは。ありがとう、僕は25だけどね」



オズワルドは、シャナのもとに戻って行った。





【お前が皆を守れ】



その言葉が、ずっと俺の頭の中で反芻(はんすう)していた。


そうだ。俺がみんなを守らなきゃいけないんだ。


「なあ、ハナビ、急な話するけど。俺の名前を教えてくれないか?」


と、唐突に俺が頼む。


「はあ!?今どんな状況か分かってんの!?シャナさんもおじさんも危ない時に不謹慎じゃん!!何考えてるの!?」


何だか、さっきとあべこべな気がするが、俺は、ここで引いてはいけないのであった。



「分かってる。でも名前が重要なんだ。頼むハナビ、名前を今つけてくれ…!」



「え~?でももっとさ~。こうゆうのってロマンチックな状況でさ~。こんな緊急事態にさ~。普通さ~」


女子力がそうさせるのか、ハナビはひたすらごねた。




その時。俺は反射的にハナビを抱きしめていた。


「頼む」


ハナビは、顔をぼっと赤くして



「ななななな!何なのよ!何なのよ!名前そそそそんな大事なの!?」



動揺しながら俺に訊いた。


「大事なんだ。ハナビ…」


俺はぎゅっとハナビを固く抱きしめ続ける。




ハナビは何かを悟ったのか、困ったように優しく微笑んだ。




「ねえ、あの星空見て」


空には無数の星が、宝石のように瞬いていた。



「アンタの世界では〝ハナビ〟は空に打ち上げるんでしょ?

だからね、考えたんだ。アンタの名前は〝ソラ〟。だって、アンタとアタシはいつも一緒だから」




俺の名前は



「ソラ…」



その瞬間。


俺の胸元が青く輝き出した。





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