6、商業ギルドと祖国の話
目の前に某ファンタジーRPGに出てきそうな、中世ヨーロッパを匂わせる街並みが広がっていた。
「お嬢様、ここが商店街、主に大商人の組合が集まるところです。商業ギルドもこの地区にございます」
商業ギルド!なんですかその楽しそうな名前。小説の主人公と1度は関わる大事なワード。
「行ってみたい!」
「かしこまりました」
そういってわたしたちは馬車に乗り込んだ。来たときの馬車と違って、少し素朴になってる。流石に家紋付きのキラッキラしてるやつ乗り回すわけにはいけない。
石が敷き詰められた道を、馬車でガタガタと進む。5分くらいしたら運転手?が運転台から降りる音がした。
着いたのかな?
馬車のドアがカチャっと空いた。着いたんだな。
まずはアイリスが降りる。そのあとに、アイリスのエスコートで降りた。
「ほへぇー、凄い大っきいんだね…」
貴族街じゃあるまいし、言葉遣いはとくに気にしなくてもいいみたい。
街は行き交う人でいっぱいだった。
「賑わってるねー」
「王都ですから」
「それにしても大っきいね。想像してたのと全然違ったよ」
「ギルドというのは、国に縛られない組織で、犯罪者でない限り誰でも登録出来るのです。ギルドカードは持ってるだけで身分証明になりますし、とりあえず登録してみた人もすくなくありません。そうすると自然にギルドの規模が大きくなります。
更に、商業ギルドの総本部がここになりますので、これが1番大きい商業ギルドとなっております。地方だったり、他国のギルドよりもより大きいです」
「商業ギルド以外にもギルドってあるの?」
「ございますよ。他には医療ギルド、冒険者ギルドがあります」
「医療ギルド?」
「医療ギルドとは、国に属さない医者の団体です。基本的に医者は教会の高位ヒーラーか国職員にしか属せずに自国の人しか診ませんが、ギルド所属の医者は国などに属さず、戦争などが起きても、許可なく他の国の負傷者も治療できます」
「医学知ってる人って貴重だもんね」
なるほど、いわゆるNGOか。
カランコロン。ギルドのドアを開けると鈴の音が鳴り響いた。
「「「商業ギルドへようこそ!」」」
受付っぽいお姉さんたちが歓迎してくれた。
相変わらず髪色はカラフルだ。
アイリスは3人の内の左のお姉さんのところに連れてってくれた。
「あらアイリス、珍しいわね、屋敷から出てくるなんて。今日はなんの御用で?」
顔見知りかな?
「今日はお嬢様を連れてきました。実は…」
アイリスがお姉さんの耳元まで顔を近づき、何か呟く。
「あら、それは大変ね。いいわ、わたしに出来ることがあったら協力するわ。」
「よろしくお願いしますね。お嬢様、こちらは商業ギルドのエリーさんです」
「はじめましてかしら?エリーよ。分からないことがあったら遠慮なく聞いてね」
「はじめまして。ユーピテトールです。よろしくお願い致します」
「こんなところで立ち話なんていないで、奥に行きましょう」
そう言って、わたしたちを2階に案内してくれた。階段を登ってる途中、わたしはあることに気づいた。
あれ?エリーさんの耳、ちょっと尖ってる気が…
正面からだと前髪で隠れてたが、後ろから見ると少し尖ってるように見えた。
エルフだ!
案内されるまま部屋に入ると、席を勧められた。
お菓子とお茶も出して貰った。
「お待たせ。あら、エルフが珍しいかしら?」
「すみません、ジロジロ見てしまって…」
「50年前までエルフは森から出なかったものね。戦争が終わってから活動が活発になったの」
「戦争…とは何のことですか?」
「10年前まで、20年戦争というのが起きたの」
「10年戦争?」
「今はもう滅んでしまってるけど、昔、このユラスダ大陸には2個の国が存立してたの。今私たちが住んでいるヴェルナイル王国とアルタンブラク帝国よ」
「アルタンブラク帝国?」
「…お嬢様の祖国でございます」
アイリスが申し訳なさそうに言った。
「うーん。簡単にいうと、10年前のアルタンブラク帝国の王様が使者として訪ねて来たヴェルナイル王国の王太子、今の王様の叔父を公開処刑してしまったのよ」
馬鹿だろうちの皇帝…よその国の王太子を普通処刑します?
「で、前から帝国が気に入らなかった王国のその時の王様が全面的に戦争仕掛けて、結果滅ぼして大陸が1つの国にまとまったとさ」
お、おう。20年も戦争したのか…
10年前ってことは…わたし4歳のとき?
うわっ、4歳で国滅んで敵国に姉と一緒な嫁いたのか…
「まっ、この話はこの辺にして、この国の経済について知りたいんだっけ?」
「はい!お願いします」