5、どこの世界の政治もドロドロのようです
下町までいけませんでしたorz
「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ…」
暗闇の中、少女は走っていた。
全身傷だらけで、その傷が腫れてるところもあれば、すでに腐りかけのところもあった。
だが少女はそれを気にしてはいられなかった。
逃げて!早くここから逃げるのよ!
ああ、私の愛おしい子よ、あなたにこの世界は少しばかり恐ろしいわ。
あなたは・・・・・□□□□よ。
不思議な夢を見た。暗闇の中で、女の子の後ろ姿が見えた。暗くてそのシルエットしか分からなかったが、何かに怯えて、必死に逃げてるように見えた。
その後ろをなにか黒いもやもや、目に見えない恐ろしい何かが追いかける。
その夢は、ひどく不気味だった。
正夢とかだったらやだな。
そんな事思いながら着替える。
「お嬢様、今日の服装はいかがなさいますか?商会までならドレスで構わないと思いますが、下町まで出るなら平民の服に着替えた方がよろしいかと思います」
アイリスさん。初対面ではかなりおろおろしていたが、実は凄い落ち着いたベテランメイド。あの日はわたしが目覚めたからかなり動揺したらしい。そりゃあ、数ヶ月も意識不明のままでいるのもおかしくない人がいきなり起きたもんね…うん、ごめんよ。
「そうだね、じゃあ商人っぽい服ちょうだい。今日の目的は市場調査だからただの一般人よりもそっちの方がいいかもね」
「かしこまりました」
やって来ました下町。正確には下町と貴族街の間くらいのところ。えっ、展開が速いって?そんなの知りません。
「ここに兵の待機所があるなんて、一目瞭然だわ。少し分かりやすすぎじゃないかしら」
貴族街と下町の間に王兵の待機所、これじゃあはっきり平民は平民らしくひっそりしてろ、調子のんなって言ってるようなもんじゃん。
この国はアスナタシア教を国教としていて、その教えを簡単にいうと、1番偉いのは神で、あとはそこら辺に転がってるだけの一般人。王であろうと奴隷だろうととりあえず神拝んてればみんな一緒。
というものだ。
一瞬人の上に人あらず、人の下に人あらずに聞こえるけど、実際全部貴族が都合のいい事を並べてるだけで、身分さは依然ある。
そもそも、神ってモンは本当にいるかどうかもわかんないのに。
「反乱とか怒らないの?見た感じ税金高そうだけど」
「はい、その代わりというのもなんですが、この国の福祉厚生は充実してます。医療場の利用も、伝染病でなければ、基本破格の値段で利用頂けます。流石に伝染病だと、教会の上位ヒーラーでないと治せません」
「教会?お祈りするところじゃないの?」
「はい、教会はもちろんお祈りを申し上げるところですが、年間の行事なども基本的に教会で行います。例えばそろそろ始まる星結びの儀式もですね。でも教会の方はかなり聖職者らしくない生き方をしてるので、あまり歓迎されていません」
ああ、あるあるの汚職かな…あまり関わらないようにしよう…
「星結びの儀式?」
「子供が教会で、星選びの玉を通じて自分の属性を知る儀式です。自分の属性を理解して初めて成人として認められます」
要するに成人式ってことだね。
「お嬢様も今年の星結びの儀式にご参加されるので、属性が楽しみですね。お嬢様程の色持ちでしたら3つ頂いたりして」
待って何それ初耳ですが…
「わたし、今年で成人するの?つまりわたしまだ15歳!?」
「令嬢らしくないですよ、お嬢様。お嬢様はまだ14歳でございますが、1週間後の知の日にご誕生日を迎えられます」
この国は1週間7日と地球と変わらない。月火水木金土知と、最後だけ日曜ではなく知曜になっている。全ては創造神アスナタシア様のご知恵によって世界は生まれた。らしい。
ちなみに属性は、基本1人に1つは持ってる。ごく稀に2つ持ちの人はいるが、かなり少ない。3つ持ってる人はまだ現れてない。
わたしの姉セレナーデは2つ持ちだ。だからなのか、今の義兄さんと婚姻を結んだらしい。
「そういえば、色持ちって何?」
「私たち人族は、髪の毛の色によって、魔力の量が変わります。色が薄ければ薄いほど、魔力が高いと言われてます」
なるほど、通りでみんなカラフルだなって思った。
そんなこと思いながら兵の待機所と横を抜け、目の前に下町の風景が広がった。
目の前の風景に、わたしは思わず目をキラキラさせた。
読んでいただきありがとうございます
次こそは下町へGo!