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勇者だったのかもしれない  作者: ぷっくん
空に向かって駆け上がれ!
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(何回目かの)伝説の世界樹島(保護者同伴)

 早速転移で世界樹島の石碑に向かった。

 行くメンバーはいつもと同じ、召喚者とゆかいな仲間達+東の王&大臣だ。

 プラズマやスライムも含めると、なんと合計18人。数え間違えてたらごめん。

 しかもさらに、王の護衛の近衛兵達も10人ほど合流している。

 この人数でいつも≪世界樹の枝≫が安置されている部屋まで移動するんだよね。ぞろぞろと。


 今日も大臣がいつものように城の≪世界樹の枝≫を使わせようとしたけど、もうここから飛んじゃダメなの? って王に聞いた。

 そしたら「いいよ」って言ったので俺の武器で飛んだ。

 王の間から。

 毎回思ってたんだけど、転移出来る俺達召喚者が居るのになんで世界樹の間に移動してから島に向かうんだ?


 ≪王の間に集合→全員で世界樹の枝の間に移動→島のはずれに転移→森を抜けて世界樹の樹のふもとに到着≫

 って行くよりも

 ≪王の間に集合→世界樹の樹の麓に到着≫

 の方が格段に楽だよね!


 後ろにいる大臣は「王としての格式が・・・神聖な世界樹島の立ち位置が・・・」とブツブツ言ってるけど、王や近衛兵達はいつもより表情が明るかった。

 いつもの方法だと移動距離がある分、身辺警護に気を遣うのかな?


 直接世界樹のふもとの広場に現れた俺達に、麓を綺麗に整頓していた神官さん達が慌てふためいて蜘蛛の仔を散らしたような騒ぎになったけど、さすが世界樹島を守る神官。

 あっという間に居住まいと麓の整理を終えて、世界樹島はいつも通りの物静かな雰囲気に戻っていた。

 そのころになって、南の王と西の女王も来た。

 あ、やっぱりこのくらいに着く予定だったんだ・・・!!!


「世界樹島を守る神官達よ、急な来訪を許してほしい。まずは、礼を言いたい」


 神官達の準備が終わったのを確かめると、東の王が皆にねぎらいの言葉をかけた。

 神官達は「まあしょうがないか」って顔してるな。

 ・・・もしかして大臣がいつも≪世界樹の枝の間≫から出発させようとしてたのって、これが理由だったりするんだろうか。

 そういえば、俺達だけのときは「≪枝の間≫を使え」とか言われたことないような・・・!

 あれ!? 俺余計な事しちゃった!?


「ニルフ! 1人で百面相してないでちゃんと話を聞く!」

 

 横から小声でピンキーにつつかれる。

 俺が考え込んでる間に王の話が結構進んでた。


「今回訪れたのは他でもない。この島の皆は既に気づいていると思われるが・・・。

 世界樹の枝に、勇者が現れたという印が現れたからじゃ」


『え、世界樹の枝? 』


 思わず漏れた声に、王はこちらを向いて頷く。


「そう、城にある≪世界樹の枝≫。

 あの枝が白く輝くのは、世界樹が認めた勇者が誕生したからだ言い伝えられておる」

「あの≪世界樹の枝≫は、元々はこちらの世界樹から賜ったものと聞いています。

 おそらく枝の受け渡しの時にそのような話も一緒に伝えられたのでしょう」


 王の話を、こっそりとポニーさんが補完してくれた。


「そして私達が見つけ出したのが、彼です」


 俺達の横方面から凛とした女性の声が響いた。

 聞き覚えのないその声に全員振り返ると、そこから現れたのは。


「若葉さん!」


 黒蹴の言葉に軽くニコリとした若葉だったが、俺と目が合うとスッと表情を消した。

 俺は若葉の声まで忘れたのか・・・。静かに目線を地に落とし、静かに考える。

 

「こんにちはみなしゃ・・・皆さん。本日はおひがらもよく・・・」

「あら勇者さん、それでは結婚式のご挨拶ですわよ?」


 勇者として呼ばれた男と、クスクスと楽し気に笑う若葉。

 ん? 勇者の声聞いたことあるぞ?

 顔を上げると、勇者君だった。あざ名ややこしいな。


『あれ、勇者君が勇者だったんだ』

「ええ、勇者様ずっと努力してたからね」


 隣から、言葉と共にいい匂いが漂ってきた。


『あ、メイジさんこんにちは』

「こんにちはニルフ君」

『いいんすか一緒に居なくても? 勇者君PTなのに』

「ええ。私には・・・」


 そのあとに呟かれた言葉は、勇者君と若葉の楽し気な会話にかき消される。

 だけど俺にはしっかりと、シルフのおかげで聞こえていた。

 彼女は悲し気に、こうつぶやいた。


「私には、付いていく資格が無いから・・・」






 *






 メイジさんと勇者君は、ずっと世界樹島の街に逗留してたらしい。

 勇者君が世界に散らばる全ての属性世界樹の石碑に≪登録≫した瞬間光があふれ、それに呼応するかのように大精霊達が集まり、2人を世界樹島に連れてきたという。


「自分が伝説の地に居ることが信じられなかったけど。

 あなたたちもだと思うんだけども、ここって本当に伝説の地なのよね!

 信じられないわよね! それでね!

 周りの雰囲気に萎縮する私に、勇者さまったらねー!

 メイジが頑張ってボクを導いてくれたから、折れずにここまで来られたんだよって!」

『メイジさん落ち着いて落ち着いて』


 ほぼ、2人のラブラブ話だった。

 一方的なメイジさんからの勇者君宛のラブなのか相思相愛なのかは俺には分からないが。

 そういえば俺ここに来すぎてて全然そんな感覚がなかったけど、ここって伝説の地なんだっけ。

 周りを見ると、ピンキー親衛隊が青い顔をしていた。キラ子ちゃんなんて倒れる一歩手前っぽい感じ。

 とりあえず、表情だけ神妙にしといた。話聞いてないけど。



 気づくと、若葉達から東の王に話してる人が変わっていた。


「皆は知っているだろうか。世界に伝わる、古い古い昔話を。

 今日までその話は民間に伝わる不確かなものだと思い込み、調査を怠っていたこの老体を許してほしい。

 さて先に話した通り、この世界樹から天海に行くことが出来るが、行けるのはある資格がある者のみという。

 まずは世界樹が認めた勇者。そして、武器に宿る宝石に彼と同じ現象が起きている者。つまり勇者と同じ努力をした者達!

 皆、自身の分身たる武器を見てほしい。

 この中で宝石が勇者と同じ・・・虹色に光るものは前に進み出るのじゃ!!!」



 勇者君の武器には虹色に光る宝石。つまり!

 俺達はそれぞれ自分たちの武器を見た。

 東王に呼ばれ、召喚者5人は前に進み出る。

 

 そのとき小さな声で勇者君が挨拶してきた。俺も軽く挨拶を返す。

 相変わらず人懐っこいな。

 あれ? 勇者君の武器、なんか静かじゃない?


「ここの泉に突き立てた時からなんか静かになっちゃったんだ」


 何でもないように笑ってるけど、しゃべる剣がしゃべらなくなるってやばくない?

 生きてる?

 そんな俺の余計な考えを他所に、勇者誕生の式典 (?)は着々と進んでいっていた。


 東王は俺達の横に並ぶ。見慣れてる王とはいえ、荘厳な雰囲気の中で王の横に並ぶとちょっと恥ずかしいな。


「向かうのは、この7人じゃ」


 東王が、地に響くような荘厳な声で告げる。

 久々に聞いたその荘厳さに、ちょっとソワソワした。


 そうか、世界樹に選ばれた者の宝石は虹色になるのか。だからさっきメイジさんはあんなことを言ったんだな。

 彼女の宝石は、深い青色を湛えていたから。


 世界樹のさらに上にあると言われる天海。

 そこに行く資格があるのは勇者君と、俺達5人の召喚者。

 

 ん? あれ?1人多くない?

 

 皆が東王の計算間違いに気づいてザワっとしたその時。


「そして、最後の1人。それは・・・ワシじゃあ!!!」


 東王が背中のマントから、身の丈ほどもある大剣を引っ張り出しつつ叫んだ。 

次回メモ:天


いつも読んでいただき、ありがとうございます!!!

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