~第四章~◆勇者
色とりどりの光を纏って、1人の少年が世界樹の根元に降り立った。
「ここが・・・」
辺りを見回し小さく言葉を漏らす少年の周りには、小さな老人・赤い大男・青い美女・黄色い小動物が守るように佇んでいる。
と、そこに。
足音も立てず歩いてくるのは、2mほどの偉丈夫の老人。
彼は少年を手招きすると、樹の根元ちかくにある泉を指さした。
少年がそこに剣を突き立てる。
その瞬間。
泉に建てられた石碑から強い光が放たれ、世界樹が呼応するように震えた。
まるで桜の花のように葉が舞い散り、舞い踊るかのように泉にまとわりつく。
少年は驚き、顔を腕で覆って身を縮めた。
我に返った少年が恐る恐る腕を下ろすと、泉に突き立てたはずの剣が見当たらない。
否。
泉には、緑色の小さな竜巻があった。
風と葉で出来た小さな竜巻が剣を包み世界樹の魔力を注ぐ。
だんだんと剣が光を放ちだす。
とうとう目視出来ないほどに光が膨れ上がったその時、天に向かって光が飛んだ。
そのまま弾けて、世界中に飛び散っていく。
少年は呆けたような表情でそれを見送っていたが、背後から声を掛けられたのかビックリした表情で振り返った。
そのまま背後の美丈夫老人と何かを話した後、おもむろに泉から剣を引き抜くと。
不思議なことに剣に嵌った宝石は、虹色に輝いていた。
剣を手にした少年を祝福するかのように様々な色の光の粒が舞い踊り、周りを守る4人の者も祝福を口にする。
ここは古代から神官と王族に連なる者、そしてそれを守護する者のみが足を踏み入れることが許されているという、伝説の島。
この日。長い歴史を持つこの地でまた1人、勇者が誕生した。
次回メモ:王
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