光
「なんだ!?」
『何も見えない!』
辺りを包む光がまぶしすぎて何も見えない!
俺の脳裏に浮かんだのは、数か月前に起こった祭りでの爆発事件。
『え!? なにか爆発する・・!?』
「嘘!? 逃げないと!」
「落ち・・・け! すぐ・・・収・・・る!」
プラズマが何かを言っているが、皆の声が大きすぎてかき消されている。
ハープを持って走り出そうとした俺を、誰かが捕まえる。
「何なのよこれ! 今までこんなこと無かったのに!」
悲鳴に近いレモンちゃんの声が聞こえるが、場所が特定できない。
皆がパニックになりかける!
誰かが水に落ちる音がした。
その時。
「動くな!!!!!!!」
誰かが、誰よりも大きな声で一喝した。
神殿全体がビリビリと響く大声。
その声に全員があっけにとられている間に、光がゆっくりと収まっていった。
そのままスッと辺りが静寂に包まれる。
光から目をかばっていた腕をそろそろと下ろす。
あれだけ強い光を放っていた割に、泉にも武器にも、特に変わった様子はない。
ん? これで終わりか?
「まだ、だ。まだ触れてはならぬ」
武器に触れようとしたユーカを、抑え気味の声でプラズマが止める。
あぶねえ、俺も取りに行こうとしてた。
そのまましばらくの静けさの後。
急に武器が発光した。
光っているのは、4つの世界樹の枝で出来た武器。
全体的に燃えるように白く光って・・・これ以上は目が痛てぇ!
「強い光だ! 直接見るなよ!」
隊長の強めの声が響く。
俺は手で影を作りつつ、薄目で光を見続けた。
そのまま光はそれぞれの武器から分離し、石碑の上に集まって一つになった。
そして1本の太い光となって、石碑から天に発射される!!!
しばらくすると、光はゆっくりと収まっていった。
「何あれ、ロケット?」
ユーカの呆けたような呟きをシルフが拾う。
ろけっとってなんだ?
「おめでとう!!!」
プラズマのうれしそうな声に、一気に現実に引き戻された。
すぐに言葉の意味に気づき、喜びと驚きが心が一杯になる!
『あ、これで≪登録≫完了か!!!』
「今回は派手だったね!」
真横にいた人物が俺の背中をポンっと叩く。
まるでおめでとうと言ってくれてるみたいだ。
『あ、俺を押さえてたのってピンキーだったのか!』
「そうそう。無暗に走って怪我しそうだったからさ」
『ありがとうな、ピンキー』
俺はピンキーと握手をして、武器を取りに泉に走る。
手に取ったいつもの木刀に嵌った宝石は、なぜか無色になっていた。
『なんだこの色。今まで緑色だったのに』
「僕のは赤っぽかったのが色が無くなりました」
「皆同じ色になったって事かな」
銀の武器も見せてもらうと、同じように宝石は無色になっていた。
しかし何もないガラス玉のような無色ではなく、何か引き込まれるような、未知の力が宿っているかのような不思議な力を感じる色だった。
俺達はしばらくそれに見惚れていた。
その間、黒蹴の全身からは ずっと水が滴っていた。
落ちたのお前かよ。
「ユーカ! 見てよこの石、綺麗だよ!
・・・あれ、なんで皆顔隠してるんですか?」
黒蹴の言葉に振り返ると、女性陣が顔を手で覆っていた。
キラ子ちゃんは隠した上に後ろを向いている。
どしたん、分身プラズマのミンチでも落ちてた?
その横で苦笑いする隊長。どうしたんですか皆さん。
「ピンキーも良かったな、人間に戻れて」
自分の武器のチェックを終えた銀が、ピンキーに声をかけている。
俺も釣られてピンキーに目を向けると、そこには背の高いピンク色の長髪の男が居た。
っていうかピンキー!
「え? あ、ほんとだ! って・・・。
うわあぁあああああああああ!?」
自身の姿を見たピンキーが一瞬で青くなり、叫んでどっかにすっとんで行った。
っていうかピンキー、素っ裸。
*
久しぶりに人に戻ったピンキーが服を着て戻ってきた。
忘れてたとはいえ、女性の前で素っ裸だったからか顔を両手で隠して反省中だ。
さっきキラ子ちゃんもやってたな、それ。両手で顔を隠すの流行ってるのかな。
「そういえば狼にされたとき、服が落ちたんだった。すっかり忘れてたよ・・・」
「じゃあピンキーさんはずっと素っ裸で皆と一緒に居たんですね!」
黒蹴の言葉に、キラ子ちゃんが真っ赤になって倒れかける。
あ、黒蹴がレモンちゃんに怒られた。
「そうだ、プラズマはこの後どうします?」
フッと真面目な顔になった黒蹴が、プラズマに尋ねる。
そんな事、聞かなくてもいつも通りに黒蹴の元に帰るに決まって・・・。
『あ、そうか。雷の大精霊だったな』
「そうですねぇ。寂しいですが、おそらく大精霊なので常に一緒についてくるというのは難しいでしょうねぇ。
今まで一緒に居れたこの状況が、異常だったんですよぉ」
俺の小さな呟きに、ケモラーさんが小さく答えてくれた。
目が合った隊長も、小さく首を横に振る。
やっぱり無理か。
黒蹴はこちらの会話には気づか無いまま、プラズマに話しかけ続ける。
プラズマはそれを嬉しそうな、少し悲しそうな顔で聞き続けていた。
「だから一緒に!」
しかし・・・。
「・・・本当は、分かっているんですよ。
プラズマは雷の大精霊で。
大精霊と一緒には居られないってのは。
勇者君の仲間のメイジさんが言っていました。
大精霊本体を呼び出すことは出来ない事、分身を呼び出す技を身に着けても、一時的にしか一緒に居られないっていう事」
ずっとプラズマの顔を見ながら話していた黒蹴が、顔を伏せる。
「だから、これは僕のただの我がままです。
叶わないって分かってるので、聞き流してください!」
そこまで言うと黒蹴は、パッと顔を上げ。
悲しそうな顔で見つめているプラズマの顔を両手でグニュグニュと撫でまわした。
「最後にもう一度だけ、言わせてください。
僕たちと一緒に、行きましょう!」
最後まで言い切った黒蹴はクシャっと顔を歪めた。
そのまま立ち去ろうとしたその背中に向かって。
プラズマは叫んだ。
次回メモ:キュ~♪
いつも読んでいただき、ありがとうございます!!!




