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勇者だったのかもしれない  作者: ぷっくん
世界樹と黒いヤツ
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雷の試練

 俺は目の前のプラズマ2匹を見つめる。


『・・・』

「・・・」


 プラズマ2匹が俺を見つめ返す。

 ぱち・・・ぱち・・・ぱち・・・。


 瞬きを3回すると、プラズマが5匹に増えた。

 

『・・・(カッ)』

「・・・(カッ)」


 俺が目を見開くと、呼応するようにプラズマーズ(プラズマ達)も目を見開く。

 そっちがその気なら、負けねえぞ!

 俺は大きく深呼吸して瞼に力を籠める。そして・・・。


 パパパパパパパパパパパパパパぱちぃぃいいん!!!


『どうだこの、超高速瞬きは! この速さについては来られないだろう!!!』

「あんた何やってんの?」


 後ろからレモンちゃんの冷ややかなツッコミ。

 目の前を見ると、プラズマーズは早々にどっかに行っていた。


「なんやねん。一人芝居なんやねん」


 遠くにいるはずのユーカの呟きが聞こえる。

 やめてシルフさん達。傷口を広げないで。


 地面に膝と肘をついて唸る俺の向こう側では、プラズマ(本体)が試験の説明を始めていた。

 黒蹴に抱っこされて、若干眠そうにキリッとしている。


「さて、ここに11の我が分身が居る。ちょうど試験を受ける者の数と同じだな。

 試験の内容は簡単。我らを捕まえる事! 手段は問わない。

 捕まえたものから石碑に行く道を通らせてやろう!」


 プラズマ(本体)の言葉に一斉に胸を張ったポーズを決める分身達。

 本体と違って黄色がかっているな。

(ピンキーが小さく「ピッピカ・・・」と呟いた)


「ちなみに、石碑は世界樹の中にあるからな! 我の許可なく樹に飛び込むと、感電して死ぬから注意だぞ。

 それでは、スタートだ!!!」


 プラズマ(本体)の声が高々と響くとともに、分身達が掻き消える。

 すごいスピードで動いているのか?

 肉眼では影しか捉えられ(ry


「捕まえましたぁ」


 のほほんとした声に振り向くと、ケモラーさんだった。

 手に持ったいつもの鞭の先っぽには、ぐるぐる巻きにされた黄色いプラズマ。


「ゴウカクゥー」


 それが、少しとげとげした声を発したと思ったとたんに掻き消え、同時にケモラーさんを薄い黄色い膜が覆った。


「なるほどぉ、これで樹の中に入ることが出来るんですねぇ」


 興味深そうにあちこちを眺めながら、ケモラーさんは樹の中に入っていった。

 どうやら樹の中に入ると、外からは見えないらしい。


『あっつ』

「ぼぅットシテイテ イイノカナ」


 ジュッと言う音と共に、耳の横を何かが掠っていった。

 周りを見ると、銀と隊長はすでに合格したようだった。

 銀の相手をしていた分身は、かわいそうに壁に貼り付けになっていた。

 銀自身は、分身の周りに刺さっている投げナイフを黙々と回収中だ。

 隊長はなんと素手で捕まえたっぽい。

「タダ立ッテタダケダッタノニ、手ガ ブレタト思ッタラ捕マッテタ」と、後に分身は語ったという。


 ほかの皆も、忙しそうに分身と追いかけっこをしている。

 確かに、ぼーっとしている暇はないな。


 俺はさっき耳を掠っていったらしい分身に狙いを定める。

 あいつ、こっちに尻向けて尻尾振って挑発してやがった。


『どおおりゃぁああああ!』


 掛け声と共に足に強化魔法を集中させて大きく距離を詰める!

 だが腕の間をするりと抜けて、分身は逃げた。

 数歩先のところで、また尻尾を振り振りして挑発。

 追いかける。逃げる。追いかける。逃げる。

 なかなか勝敗がつかないが、俺には考えがあった。


『相手は小動物。つまり俺の方が体力がある・・・』


 俺よりも、相手が疲れて動けなくなる方が先だ!

 

 何度も追いかけ、逃げられては挑発され、俺がヘロヘロになったころ、相手にも疲れが見え始めた。

 急に姿を隠したと思ったら、大岩の影で一息ついていたのだ。


『(っしゃぁ)』


 心で勝どきを上げ、そっと忍び寄り・・・一気に飛びかかる!

 


 なぜか一瞬、分身がニヤリと笑ったように見えた。



 ガツン!!!

 俺は頭に衝撃を受けてうずくまる。

 頭を打った場所を見ると、洞窟の壁だった。

 どうやら知らないうちに壁際まで誘導されていたらしい。


 涙目になって分身を探すと、さっき分身が休憩していた大岩の上で大あくびをしていた。

 あの岩が目隠しになって、壁際と気づかなかったんだ。


「岩ノ横ガ壁ダトハ気ヅカナカッタヨウダナ。下バカリ見テイルカラダ!」


 そういうと、分身はまた目にも止まらぬ速さで掻き消える。

 あの疲れた様子も演技かよ!!!





「このぉ! じっとしてなさいよぉ! あ、きゃあ!」


 すぐ後ろで声。

 急いで振り返ろうとすると、背中に誰かが勢い良くぶつかった。


『うわっとぉあ!』

「きゃあ! す、スミマセン!」


 そのままバランスを崩して壁際に置いてあった荷物に倒れこむ。

 硬い石とかなくてよかったよ。

 そのおかげで怪我は無かったが・・・。


「あ、ご、ゴメンナサイ。荷物ちらばっちゃいましたね」

『いたたた。なんだキラ子ちゃんか。

 これはさっきの昼食の荷物か」


 どうやらキラ子ちゃんが前かがみになって分身を追いかけていた所、俺の追いかけていた分身に背中を蹴っ飛ばされてバランスを崩したらしい。

 おかげで、せっかくまとめておいた荷物がめちゃくちゃだ。


『あーあ。食器が飛び出しちゃったよ』

「割れるものを持ってきてなくて良かったですよね。あ、精霊石の欠片も散らばっちゃいました」

『たしかプラズマのおやつ用だっけそれ。・・・ん?』

「「キュ~♪」」


 俺達が荷物を簡単に片づけていると、さっきまで不敵に翻弄してきた2匹の分身が寄ってきた。なんか様子が変だ。

 そのままパリパリと音を立てて、地面に落ちた精霊石の欠片を齧り出す。


「『・・・』」


 キラ子ちゃんに目を向けると、彼女も俺にうなずき返す。

 俺が大きめの欠片を手に乗せて2匹の前に差し出すと、手のひらから直接食べだした。

 これは・・・。


「えいっ」

『おお!?』


 餌に夢中の分身1を後ろから優しく抱きかかえるキラ子ちゃん。

 俺も真似してそっと抱き上げると、何の抵抗もなく2匹はあっけなく捕まったのだった。


「キュ~♪」

「キュゥゥ~ッフ、げふぅ」


 散らばった欠片すべてを食べきった分身2匹は、満足げに1鳴きして掻き消える。


「これってズルじゃあ・・・」

『気にしない気にしない』

 

 考え込むキラ子ちゃんをなだめすかして、俺たちは世界樹の中に向かう。

 しっかりと自分達が膜に覆われているのを確認して、雷で出来た樹の中に入った。

次回メモ:おいかけっこ


いつも読んでいただきありがとうございます!!!

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