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勇者だったのかもしれない  作者: ぷっくん
召喚者with俺
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世界樹の巫女

 困る3人。

 泣きそうな俺。

 なんかうれしそうに周りを舞うシルフ達。空気読めよ。


 というか。

 俺この世界の文字書いちゃったら、召喚者じゃないってばれて王様に捕まるんじゃないか・・・?

 俺は急いで文字を足で踏み潰す。くそっ、深く掘ったからなかなか消えない!


 そんな俺たちに 透き通るような女性の声がかけられた。


「お困りのようですね」


 その声にピンク獣人改めピンキージュエルの獣耳がピクッと動いた。


「世界樹の美女精霊さんキタ!」


 その声に俺たち全員がサッと声の方向を向く。

 くそ、この世界の者か。まだ文字を完全に消し切れていない!

 俺は文字の上にシャッと立つ。


 その動きに若干引きつつ歩いてきたのは、緑のロングヘアに秘書っぽいメガネをかけ、流れるようなゆったりとした白い服を着た17歳ほどの細身の女性だった。


「こんにちは皆さん。わたくしは世界樹の巫女、若葉とお呼びください」


 なめらかな動きでお辞儀をする若葉さん。背に流れた髪が肩からこぼれおちる。ほう・・・と息を漏らすピンキージュエル。

 銀髪は「なんだ、人間か」とつぶやいていた(と、シルフが伝えてきた)。

 若葉さんは俺の方にゆっくりと近づき・・・むんずとそのシルフを掴む。そして


「わたくしがあなたの言葉をお伝えしますわ!」


 ゆったりとした笑顔で拳を握りしめ、そう言った。

 大丈夫かシルフ!さっきまで(^▽^)みたいな顔で舞ってたのが今は(>Д<)になってるぞ!?


『あ、俺の言ってる事わかるんですか?えっと・・・若葉さん』

「はい! あ、わたくしの事は若葉とお呼びください!」

『わかりました若葉。ところでその手のシルフが苦し 

「あぁ! なぜ言葉が分かるかですね!」

『あ、いやそうじゃなくて手のシルフが 

「はい! 風の流れでなんとなくわかります!断片的にですけど!」

『断片的にかよ!?あ、いやすいませんそれでも助かります。それで手のシル

「さっそく自己紹介を始めますか!?」


 だめだこの女。おっとりしてるように見えてまったく人の話を聞かないタイプの人間だった。

 力を込められすぎたシルフは、かわいそうに(>Д<)から(゜□゜)になってしまった。じょ・・・成仏できますように?

 若葉はそのシルフをペイッと草むらに投げ捨てると、新たなシルフをガシっと掴み、


「早くしないと精霊の力が切れちゃうんですよぉ」


 と言った。え、それ俺のせい? それしないと俺の言葉分からないの?

 若葉は俺の心を読んだかのように「はいっ!」と笑顔で答えてくれた。


 *


 新たに捕まったシルフに心の中で謝りつつ、俺の自己紹介が始まった。といっても皆に伝えるのは・・・


「名前どころか記憶もない・・・ですか」


 困った顔でつぶやく黒髪。


「まあ、世界樹の枝持ってるし、偽物ってわけでもなさそうだな。とりあえずよろしく」


 銀髪の言葉をきっかけにして皆で握手をする。

 ごめんなさい多分俺、偽物です。そう思いつつ手を取った。

 そこに、さっきの仙人じいさんと国王が歩いてくる。

 フリー国王。兵士つけなくていいのか?


「自己紹介が終わったようじゃな。

 さて、おぬしら。この世界にいきなり召喚されて色々と分からない事もあるじゃろう。このワシがすべて答えてやるぞい!」


 いきなりしゃべりだした仙人じいさんに、召喚者達はポカーンとする。

 そりゃそうだろう。いきなり知らない仙人に話しかけられたんだもん。


「だ・・・だれですかこの中国の仙人みたいな方」


 どうやら黒髪の世界にも仙人はいるっぽい。意外とこの世界と似てる部分もあるのかもしれないな。魔法とか能力とか文化とか。

 あれ?俺 記憶ないのになんでそんなことを知ってるんだ?

 俺がそんなことを考えている間に、国王がじいさんを世界樹の精霊として紹介する。その瞬間、ピンキージュエルが太陽に向かって叫んだ。


「俺の夢を返せえぇぇぇぇ!!」


 良く叫ぶ奴っちゃ。

 それを全く気にしないで俺に手を振るじいさん。やっほーとかいってそう。俺はそのまま笑顔でじいさんに近づき


『このじじぃいいい! 俺の記憶かえせええええ!』


 殴りかかった。

 殴り返された。

 気づいたら地面に寝てた。


 やっぱこのじいさん無茶苦茶強ええ。

 こりゃ国王に兵士いらんわ。なんかあっても、きっとじいさんが何とかする。


 周りの皆はじいさんのデンジャラスな強さに、世界樹の精霊と信じたようだ(なんで?)

 叫んでたピンキー(略)も静かになっている。

 そしてじいさんは何事も無かったかのように話を続けた。


「さて・・・なぜ おぬしらが名前を思い出せないかからいくかの。それはな、願いの代償になったからじゃ」

「ねが・・・い?」

「そうじゃ。おぬしらは前の世界で一度死ぬような目に会い、そこで何かを願ったはずじゃ。

≪死にたくない≫、それ以外の事を」


 黒髪のつぶやきにじいさんは答え、


「僕は・・・僕はあの日、妹の忘れ物を届けに行きました・・・」


 黒髪は語る。


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