SS タイプ診断
ここは東の国、いつもの部屋。
会議後、一緒に旅しているメンバーが気ままに過ごしている。
ピンキーがそれを見回しつつ呟いた。
「それにしても、いろんなタイプの女性が集まったよね」
「いろんなタイプですか?」
シュークリーム(もどきらしい)を頬張っている黒蹴が食いつく。
頬っぺたにベッタリと付いた黄色いクリームを、黒蹴の膝の上にいたプラズマがペロリと舐めた。
味が気に行ったらしく、きゅるるるっと可愛らしく鳴いている。
「女をタイプ別で分けるって、ピンキーってフィギアコレクター?」
エプロンをつけたユーカが、新しいシュークリーム(もどき)を大皿に盛って持ってきた。
電気で動くオーブンが無いから上手くシューが膨らまないとか文句を言っていたが、ユーカの作った薄い生地の上に黄色いクリームが乗ったお菓子は、かなりおいしい。
「なんでフィギアコレクターって思ったのか分からないけど、僕の読んだ小説の中にはハーレムモノもあってね。
そこに色々なタイプの女性たちが出てきたから、何となく思い出したんだ」
『ふぉえー。どんな種類の女性が出てきたのか、教えてよ。もぐもぐ』
「あ、わたくしも聞きたいですわ! しゅーくりーむ、もう1個取ってくださいニルフさん」
『ほいよ』
「私達もぉ、異世界の話には興味がありますねぇ」
横でシュークリームを爆食いしていた若葉も、興味があるようだな。
会議後も向こうで難しい会話をしていたケモラーさん達も寄ってきた。
「ホラ、銀モ!」
「オレは女のタイプとか興味ないぞ」
「よくやりましたハーピー! さ、銀。私達と一緒に聞きましょう」
ハーピーに連れてこられた銀も、ポニーさんとハーピーに両腕をがっちりホールドされて加わる。
いつの間にか、ピンキーを中心にした円が出来上がっていた。
「じゃあウチは紅茶でも入れてくるわ。行くで、にーちゃん!」
「えええ? 僕も?」
「当たり前やん! なに妹に全部やらせようとしてるんよ」
もごもご文句を言いつつ黒蹴とユーカが食堂に向かった所で、話が始まった。
「えーっとね、小説に出てきたタイプは確か。
まずは・・・、清楚系。優しくて、主人公に一途だね。
次に、元気系。運動が得意な、明るい子だね。
他にも男勝りな子や、ツンデレ、クール、母性に溢れるお姉さんや、積極的に主人公にアピールする子、小動物系に妹系、料理上手に天然ドジっ子、ミステリアス、天真爛漫に、王子みたいな子も居たなー。
口調にも特徴があってね。
きつい口調の子や、とても丁寧な敬語を使える人、話すのが苦手で片言な感じの子。逆におしゃべり大好きな子とかねー」
なんだかとっても懐かしそうに話すピンキー。
久々の異世界(俺達にとってはだけど)ニホン知識が話題になって嬉しいんだろうな。
「せっかくだから、ここにいるメンバーに当てはめてみたらどうだ?」
隊長の一言で、和やかだった雰囲気が一気に過熱した。
※以下、人数が多いので吹き出しの前に名前が入ります※
ポ「・・・ですから、ケモラーは天然ドジっ子系だと思うんですよ」
サ「いや、初めて出会ったご主人をビビらせたそのエピソードからは、天然っていうよりもキラ男と同じ匂いを感じるんだが?」
キ「サイダーさん! 若旦那様はそんな人ではありません!」
隊「では、ケモラーはストーカーだな! がははは!」
ケ「・・・隊長?」
途中、隊長がケモラーさん(鞭を持ってた)と一緒に部屋を出て行った(隊長は引きずられてた気がする)が、皆がドンドンタイプ分けされていった。
ニ『若葉は「ですわ」って言うから、優等生系なんじゃないか?』
銀「巫女だしな」
若「ふっふん。わたくしの素晴らしさがようやく分かりましたか」
ニ『うん分かった分かった』
若「思ってたのと反応が違いますわ!?」
銀「ポニーも優等生タイプだな」
ポ「銀・・・!」
ハ「私ハ何ダ! 銀!」
銀「ハーピーは・・・。なんだ?」
ピ「元気系じゃないかな?」
銀「だそうだ。良かったなハーピー」
ハ「ウン!」
レ「アタシ達のタイプは、ご主人様に判断してもらいたいわ!」
サ「某もだ!」
ラ「あらあら、もちろん、私もよ」
べ「キャン!」
ピ「分かった分かった。うーん、と・・・。
ライムは皆の優しいお姉さん系、サイダーはクール系、レモンは」
黒「ツンデレ系少女じゃないですか!?
好きな相手に素直になれずに、突っぱねちゃうタイプって聞いた事ありますよ!
よくニルフさんにひどい事言っては突っぱねてますよね!」
隊「つまり、レモンはニルフが好きなのか」
ニ『えっ///』
紅茶を持ってきた黒蹴と、いつの間にか戻ってきていた隊長(顔が切り傷だらけ)の言葉に、レモンちゃんの方に振り向く俺。
レ「あ”ぁん?
何こっち向いてんだ変態。また覗き魔って呼ぶぞテメェ」
ニ『黒蹴、絶対違うよこれ。だって顔が般にゃ』
ドコォッ
ニ『ぐふっ』
若「ニルフさん・・・」
ピ「・・・レモンは天真爛漫な女の子・・・だったはずなんだけどな・・・俺の前では・・・」
レ「ご主人様の前でやっちゃった・・・」
ゆ「紅茶持ってきたでー。・・・にーちゃん。多分アレにーちゃんのせいちゃう?」
黒「やっぱりそう? ごめんなさいニルフさん。骨は拾います!」
ニ『待ってまだ死んでない』
べ「きゃうーんきゃんきゃん」
レ「ベリーは小動物系ね」
黒「じゃあプラズマもですね」
プ「きゅるるるくるるるっきゅ~」
ニ『プラズマってメスだっけ?』
ピ「・・・小動物系って、見た目が小動物って事じゃないよ?」
ケ「ユーカさんはぁ、まさに妹系ですねぇ」
ゆ「黒蹴にーちゃんの妹やしな」
キ「わ・・・私のタイプも・・・皆さんと一緒に・・・。
いえ、なんでもないです・・・」
レ「なに遠慮してんの。キラ子は一途なタイプよ。
キラ男の事、助けたいんでしょ」
キ「レモンちゃん・・・!」
バーン!
扉が開いて、真っ赤な髪の人が入ってきた。
紅「わたくしもお願いね!」
若「紅葉姉さま、どうしてここに!?」
紅「ふふー! 面白そうな事やってるって聞きつけたのよ!」
若「どうやってですの!?」
ポ「・・・紅葉さまは、無邪気なお姉さんって感じですね」
紅「ふふふ、ありがとう」
隊「さっきピンキーの言ってた口調も見てみないか?
きつい口調に丁寧な敬語、片言系におしゃべり大好きな子だったな」
ゆ「もう全員に当てはまってる気するんやけど」
黒「片言系ってなんですか?」
ピ「返事が『ん』だったり『わかった』みたいに単語しかしゃべらない子だね。
俺が読んだ小説に出てたのはおとなしい雰囲気の、ミステリアスな子だったな。
その子がすっごくかわいくってね。
『ん。わかった』って言いながら小首をかしげつつ、表情は変わらないのに動きが小動物みたいで・・・」
黒「それってもしかして」
銀「ニルフだな」
若・ピ「「え?」」
ピ「絶対違うって! ねえニルフ!」
ニ「ん。呼んだ?」 (『うん? なんか呼んだか?』)
ケ「ほんとですねぇ。気づきませんでしたぁ」
ピ「誰か嘘だと言って!」
ニ「なに? 俺、悪い?」 (『なんだ? 俺、何か悪い事でもしたか?』)
若「・・・確かに、顔の下半分を大きくマフラーで隠してるせいで表情が読みづらいですわね」
紅「それに動きも小動物みたいかな。
言葉が通じないって思ってるから、その分を動きで伝えようとしてるのかしら」
ニ「・・・ごめん、ピンキー」 (『なんか知らんけど、ごめん、ピンキー』)
ピ「・・・うん、大丈夫。ニルフは男だからノーカンでいいと思うんだ」
ニ「?」 (『どういうこったい』)
紅「面白いわね、ニルフ君って」
若「言葉が分かる側からすれば、結構口の悪い感情豊かな人なんですわよ」
紅「分かってるわよ。わたくしだって、巫女なのよ?」
若「むぅ・・・」
黒「後は、男勝りに王子様系の女の人でコンプリートですね!」
ピ「・・・うん、そうだね」
ニ『どしたピンキー、落ち込んでるな』
ピ(皆、俺が思っていたのとは かなり違うタイプ分けになっていたけれど、これはこれで面白かったな)
ニ『なあ皆』
黒「なんですかニルフさん」
ニ『シッ、黒蹴、声に出すな。後で男だけで集まらないか?』
*
ニ『なあそれって、男バージョンは無いのか?』
黒「それ聞くために男だけ集めたんですか?
皆の居る場所でも良かったと思いますけど」
ニ『皆と一緒だったら絶対おちょくられる!
絶対変なタイプに分けられる!!!』
黒「な・・・なる、ほ、ど」
ニ『黒蹴笑いすぎ!』
ピ「あると言えばあるけど・・・。
逆ハーレムの知識だけどいい?」
黒「なんですか? それ」
隊「面白そうだな」
ピ「まずはニルフだけど」
黒「ニルフさんはさっき言われてませんでしたっけ。確か小動物系」
ニ『なんかいやだ! 10代後半の男としてなんか嫌だ!』
ピ「ってことで、何か考えよう。
王子系、好青年、クールにオレ様、堅物にお金持ち、お兄さんに弟系、ヘタレに色魔。
さあ! どれがいい!」
ニ『選ぶの!? どのタイプか見分けてくれるんじゃなくて俺が選ぶの!?』
隊「ヘタレ系じゃないか?」
ニ『勝手に選ばれた! 一番男として嫌な物を選ばれた気がする!』
黒「今日のニルフさん、元気ですね」
ピ「黒蹴は、スポーツマンだから好青年かな?」
黒「ピンキーさんはお兄さんって感じですよね」
ニ『隊長はお兄さんっていうか熱血って感じがする』
黒「僕は体育会系の部活の先生だと思います」
隊「がっはははは! 熱血で引っ張って行くんだな!」
ピ「銀はクール系だね」
ニ『・・・あれ? 銀は?』
隊「真剣な顔でスライムを見つめていたぞ」
ニ『集合の呼びかけも聞こえないほど真剣に!?』
*さっきの大広間
銀「コイツは何のタイプになるんだ?」
ス(デロデロ)
ハ「小動物系ジャナイカ?」
ポ「・・・≪一口で丸のみ出来るものが小動物系≫、ではありませんよ?」
ハ「エッ」
ス(ビクゥッ)
スライムは にげだした!
次回メモ:雷のゆくえ
いつも読んでいただき、ありがとうございます!




