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勇者だったのかもしれない  作者: ぷっくん
世界樹と黒いヤツ
72/187

vs 火の大精霊(ピンキー側)

120Pいきましたー!

ホントにありがとうございます!!!


運営さんからのお手紙が来ていて、小説のなんかのタグが間違ってるから直しといたよとあったんですが、よく分かりませんでした(・w・)

 ――――――――――――――

「1人で突っ込むつもりか?」


 隊長が、銀にサッと目を走らせて問いかける。

 まだ仲間の猛攻は続いており、火の大精霊はこちらの様子をしっかりとは見えていない。

 銀の持つ青い両手剣には、既に水のコーティングがなされている。

 銀自身も剣と同じように揺らいでいる事から、全身を水で厚くコーティングしているようだ。


「来ないのか? ならば此方から行くぞ!」


 雷が響くような怒鳴り声と共に、火の大精霊からいくつもの火の塊が飛んできた。

 1つ1つがこぶし大で、赤黒く燃え盛っている。

 それが30個ほど。


「ちょっと! 危ないですわよ!」

「銀ヲ傷ツケヨウトカ、風ノじじぃヨリ酷イ奴ダ!」

「これ以上、私の鞭を燃やさないでくださいよぉ?」


 若葉、ハーピー、ケモラーさんが風の中級魔法を操って炎を全て弾き返した。

 中に仕込まれていた黒い岩は、ケモラーさんが弾き返す。

 しかし火の大精霊に届く前に全て燃え尽きてしまった。


それがしに魔力さえ残っていれば、鞭に水のシールドを張れるのだが」


 また少し焦げた鞭を見てため息をつくケモラーさんを見て、サイダーちゃんが悔しそうにつぶやいた。

 

 その間に、銀は姿を消す。まるで水が揺らぐように。

 気配を消したな。隊長はそう判断した。


 銀ならば、何か秘策があるのだろう。

 だが、今の銀は片手が使えない。

 敵の攻撃をいなしつつ懐に飛び込むことが出来たとしても、決定打に欠ける。


 さきほど銀が運んだ黒蹴の姿が無いのが気にかかったが、今はこの場を無事乗り切る事が大切。

 我を忘れて怒り狂う大精霊ほど、危険な物は無いからだ。

 それに、銀と黒蹴が何か話しているようにも見えた。

 それに、「オレ達」と銀は言っていた。それならば。

 隊長がサッと皆を確認し、ポニーさんに目を合わせて火の大精霊おっさんの元に走る。

 ポニーさんが頷き、すぐに皆に指示を飛ばした。


「隊長がしばらく時間を稼いでくれています。その間に作戦を立ててしまいましょう」

「1人で大丈夫なの隊長?! 銀と黒蹴も居ないんだけど!?」


 レモンちゃんの声が裏返るが、風のシールドの外では隊長と火の大精霊おっさんが既に戦いを始めていた。

 火の大精霊の出す火球をヒラリヒラリと避けていく隊長。

 たまに火の大精霊のかなり近くによっては、拳での直接攻撃を避けていた。

 隊長からは、さすがに直接攻撃を仕掛ける事は無いが、こちらを狙おうとした火の大精霊に剣で弾いた岩をぶつけて挑発している。しかもめっちゃ笑顔で。

 結構激しい隊長 (おっさん)と火の大精霊 (おっさん)との戦い。

 あれなら5分程度なら何とかなりそう。

 皆そう思ってポニーさんの話に戻る。

 たまにこちらに飛んできた流れ火弾は、風のシールドで十分防ぎきれる範囲だった。


「ケモラー、鞭で皆を守ってください。

 ハーピー、あなたは風で銀を守るのです」

「待テ、銀ノ気配ハ私デモ読メナイゾ」

「何かあった時だけでかまいません。

 銀の気配を探りつつ、風魔法と羽の遠距離攻撃で相手をかく乱させるのです。

 私のオノには遠距離攻撃がありません。いくら火の属性と言えども、大精霊に直接触れられないでしょう。

 なので、皆の補助を致します」


 そして自身の武器であるオノを仕舞い、懐から青い宝石の嵌った短剣を取り出す。

 ポニーさんが何かを念じると、剣先から透明な美しい水球が出現し、フヨフヨと宙を舞った。

 それはそのままピンキーと親衛隊たちを包み込み、はじける。


「これは、水の中級魔法。

 魔力が回復する効果の水か!」


 サイダーちゃんが気付いて叫んだ。

 

「はい。正直、オノを装備から外すと最大魔力がかなり落ちます。

 が、両手に短剣を持てるので、2種の中級魔法を使えますよ」

「あらあら、オノは大きすぎて片手じゃ扱えないものね」


 ポニーさんとライムさんの言葉に、レモンちゃんが一言。


「ほんと、皮膚に触れてれば使えるとかだったらいいのに」

「・・・一応使えるぞ? だが敵が武器を破壊しようと襲ってきたらどうする」


 サイダーちゃんが呆れた声を出す。

 そして少しの間作戦を立てた後・・・。


「さあ皆! 魔力が尽きない様に注意しながら畳み掛けるよ!」


 ピンキーの明るい声を合図に、ケモラーさんの鞭による風のシールドから、色とりどりの魔法が飛び出した。


 隊長の相手をしていた火の大精霊が、こちらの猛攻に気付いて炎を放つ。

 まったく攻撃が当たらない隊長によっぽどイライラしていたようで、最初の倍近い量の火球が襲いかかってきた、が。

 それを全て叩き落とすケモラーさんの鞭。

 ケモラーさんの鞭には、元々風が鎌鼬かまいたちのように纏われているが、今はそこに薄い水の膜も張られていた。

 

「良いですねぇこの水の膜。鞭が焦げませんよぅ」

それがしの、水の属性特技だ」


 皆を守るのは、ケモラーさんとサイダーちゃんの2人。

 纏わせた風で炎をかき消し、水を纏わせた鞭で中の石を弾き返す。


「今ですぅ!」

「オウ!」

 

 炎の猛攻が終わった瞬間、シールドの上空にハーピーが飛び出し、風の中級魔法に乗せた羽や石を雨の様にぶつけた。

 だが火の大精霊がうっとうしそうに手を振るだけでそれらは全て燃え尽きてしまう。

 しかし。

 燃やした時に生まれた煙を突き破って、鋭い水の魔法が腹を貫く。


「目くらませには最適ね!」


 煙の向こうには、小さな愛らしいスティックを構えたレモンちゃん。

 しかし攻撃を喰らいつつも、火の大精霊は余裕を持って笑う。


「ふん、そんなシールドに守られて何をいきがっている。

 隣の娘など、腰が抜けて地面に手を付いているじゃあないか」


 確かに、レモンちゃんの横に居る黄色い髪の娘 ―――キラ子は地面に手を突き、目線を伏せていた。

 ちょうど土下座をするかのように。

 その時、地面に円が描かれているのを見つける。

 なぜあの少女(キラ子)はその真ん中に座っているんだ? 火の大精霊は疑問を抱く、が。


 火の大精霊が考えを巡らせる瞬間、また小石の雨が降り注いだ。

 思考を邪魔された事に苛立ったのか、必要以上の火力でそれらを燃やし、両手を前に構えるのが一瞬見える。

 と、前に交差したらしき青い腕から赤い炎が伸び、胴の全面を覆ったように煙の向こうが赤く光った。


「また同じ事の繰り返しか! どこから魔法が来るか分かっていれば、対処など。

 うぐっ!?」

 

 煙を突き破った水は、大精霊の左肩と右わき腹を貫いた。


「何故・・・横から?」


 ブンっと腕を振るう大精霊。

 煙が風圧で晴れる瞬間、岩陰に隠れるピンク色の小さな獣の姿。

 火の大精霊はそこに狙いを定め、ひときわ大きな火球を指先で弾いた。


「うふふ、あまいわよ!」


 そこに躍り出たのはライムさん!

 だが炎に包まれた岩の塊は、風を纏わせたケモラーさんの鞭ですら焦がす高温。

 

「生身で受け切れると思うな!」


 大声で嘲笑する大精霊だったが。


 ぼごっ!


 鈍器で岩を殴ったらこんな音。

 そんな鈍い音をさせてフルスイングされた岩が、炎を纏ったまま大精霊に戻って行った。

 それを青い腕で弾く大精霊。だがその陰にはピンキーの放った水球が隠されており。


「ぐあっ」


 ギリギリ避けるも、のけぞった瞬間に前からレモンちゃんの水球。

 炎の盾を纏った腕で弾くも小石がまた降り注いで目くらましをされ。

 また右側から、体を貫かれた。


 前からはレモンちゃん、左からはライムさんとピンキー、右からは隊長がそれぞれに目くらましの小石や岩を投げたり、隙あらば水球を放つ戦法だ。

 ハーピーは広場を縦横無尽に飛び回り、皆が攻撃中に砕けた小石を風で飛ばしたり、空から回復をしている。


「ええええい! ちょこまかと散らばりやがって!」


 そう唸ると火の大精霊は両手を組み、少し目を瞑る。

 ここぞとばかりに魔法が飛んでくるが、無視をして魔力を練っている。

 そして・・・

 左手をグンッと下から上に突きあげる動作をした瞬間。


 大精霊の周りの地面が赤く光った。

 それは大精霊を中心に、外側に向かって広がって行き。

 火柱が上がった。

 火柱が上がる直前の地面が赤く染まっていたのだ。

 その上にいた隊長は急いで横に飛ぶ。

 ピンキーは軽く地面を蹴り、≪空翔ける靴≫を使ったライムさんに飛び乗った。

 ライムさんはそのまま、高い岩の上に掛けあがって行く。

 飛べることを悟られないよう、跳躍力が高い振りをしつつ。


「火柱の出ない地面の方が多いんだけど!?」

「グハハハハハ! 直前までどこから来るか分からぬ火柱! これは避けれまい!

 風のシールドで俺からの攻撃を避けているつもりのようだったが、真下からの攻撃は想定していまい!

 そんな生ぬるい覚悟では勝てぬぞ!」


 岩の上から広場を見渡したピンキーの驚く声を聴き、嬉しそうに笑う大精霊。

 そのまま火柱は風のシールドの内側にまで到達し、レモンちゃん達の足元が、真っ赤に光る。

 それに合わせて大精霊は、火球をシールドに向かって飛ばした。

 

「シールドに籠っている限り、火柱は避けられない。

 シールドを維持している鞭の女が火柱を避ければ、残りの者は火球を喰らうだろう。

 さあ、どちらで死にたいか、己で決めると良い!」


 その時、シールドの内側に引かれた円のど真ん中で座っていたキラ子ちゃんが、パッと顔を上げて叫んだ。


「5時!」


 それを聞くと同時に、シールド内に居た全員が同時に、最小限の動きで円の中の同じ場所に移動する。

 詠唱中のレモンちゃんは、サイダーちゃんが抱えて移動した。

 瞬間、彼女らが居た場所以外の地面から火柱が上がった。

 同時に火球も到達するが移動距離が少なかった為、シールドは維持されていた。

 風と鞭に弾かれる火球。


 彼女らが移動したのは、ちょうど時計で言う5時の位置だった。

 火柱が上がる場所では、地面の温度が急上昇する。

 それを利用した。

 キラ子ちゃんが地面に薄く水の膜を張り、地面に張った水が蒸発しない場所を探せば。

 そこは、火柱の出ない最短の場所という事だ。


「私が以前戦った時も、同じ手を喰らいましたからね」

「く、既に対策済みだとはな」


 シールドを張りつづけるケモラーさんの魔力を回復しつつ、ポニーさんがほっとしたように言う。

 予想外の展開に歯噛みする大精霊。

 何度も攻撃を弾いているうちに、腕の火の盾も消えていた。

 その時、また右側から体を貫かれる。が、何か違和感を覚えたように目を眇めた。


「なんだ? この感触は、水ではない?」


 また小石が降り注ぎ、燃えて煙が上がる。

 燃やす気が無くとも、小さい小石などは体に触れるだけで勝手に燃えるので少し厄介だ。

 煙を晴らしてサッと目を走らせる大精霊。

 右側には隊長が走り回っている。

 岩を剣で弾いて大精霊に飛ばしつつ、たまに水魔法を織り交ぜては少しずつ大精霊の体の炎を消している。


 大精霊はそれを見つつ考える。

 すぐに体の炎は復活する。それにあの男が囮だとすると、他にもう1人、こちら側にいるはずだ、と。


 その時、大精霊の視界の上ギリギリを緑色の何かが走り去った。

 初めは、石を飛ばしてくるハーピーだと思っていた、が。


「そこか!」


 勘で撃たれた炎が、緑色の何かをとらえる。

 炎は空中の何かに当たって弾け、岩ごと地面に落ちてきた。

 だが、そこには何も居なかった。


「なんだ?」


 疑問に顔がゆがむ、その時。


「いただきましたわ!」


 目の前に、大鎌を大きくふりまわした若葉が立っており。

 大精霊は全身を透明な石柱のようなものに貫かれていた。

 ―――――――――――――――





『ねえピンキーちょっといい? なんで若葉、火のオッサンの目の前に立ってるの?

 聞いてる感じだと≪空翔ける靴≫を使ってなさそうだし、相手7mっていってなかったっけ?』

「それは若葉の属性特技だよ」

『・・・俺、皆の属性魔法しっかり知らないんだけど』

「え?! そうだっけ!?」


 そんなに驚くなよピンキー。

 軽く教えてもらった。


 あのとき≪登録≫が終わっていたのは風と水。

 水属性のサイダーさんの属性特技は≪他の人の武器に水のコーティングを付ける≫こと。

 何人でも可能らしいが、人本体には付けられないらしい。

 ライムさんが火球を弾いたのはこれのおかげのようだ。


「ただ、いくらコーティングしているからって、火の大精霊に直接切りかかれば燃えちゃうだろうけどね」

『なるほど』


 風属性の若葉の属性特技は、なんと≪風を固めること≫だった。

 上に立ったり手につかんで見えない武器にしたり、武器で弾いて飛び道具にしたり。

 それで色々使いやすそうな特技だけども・・・。


『風はどうやって確認してるんだ?』

「その辺に居るシルフが見せてくれてるって言ってたよ」

 

 俺にも見えないかな、風。




次回メモ:こぶし


ケモラー:鞭と属性特技で風のシールド

ポニー:レモンとケモラーの魔力回復

レモン:水魔法で攻撃

キラ子:水を地面に薄く張って、火柱の出現位置確認

サイダー:皆の武器に属性特技で水の保護をつけて維持中

隊長:石を飛ばしたり攻撃よけたり挑発したり陽動したり

ピンキー:岩に隠れて移動しつつ水魔法

ライム:ピンキーの補助&火球を打ち返す

ハーピー:空から石で目くらまし&皆の回復

若葉:空から属性特技で攻撃&皆の回復

こんなもんかな・・・?(抜けてる人いたらどうしよう)


いつも読んでいただき、ありがとうございます!

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