勇者伝説(中)
90Pから一気に110Pになってる!?
何があったん!?何があったん!??
とりあえずいう事は1つ!
皆さんありがっとおおおおおおおおおお!!!
~その者 颯爽と現れ 村に巣くいし悪を裁き そのまま立ち去り往く
その者 颯爽と現れ 森に逃げ込みし魔物を切り裂き そのまま立ち去り往く
誰が彼の者の名を知るか 誰が彼の者の姿を知るか
その者 颯爽と現れ 港を荒らす海の獣を成敗し そのまま立ち去り往く
その者 颯爽と現れ 村を襲いし災厄を打ち払い そのまま立ち去り往く
誰が彼の者の名を知るか 誰が彼の者の姿を知るか
誰にも知られず 魔の中心で戦い往くその姿
守られた者は言う まるで美しい舞の様であったと~
~少女は お家を出かけます
とことことことこ出かけます
行先は いつもの あの森
森の中には お池があって その畔には 薬があって 取ってくるのは私の仕事
いつも通りに出掛けます 少女は池に出掛けます
お母さんは言いました
あなたが薬を取ってきてくれたから 私は生きていけたのよと
少女は道を歩きます
とことことことこ向かいます
行先は いつもの あの森
森の中のお池の 不思議な石は いつでも少女を迎えてくれて 薬草摘むのを見守ってる
いつも通りに出掛けます 少女は池に出掛けます
お母さんは言いました
あなたが池に向かってくれるから 村は生きていけるのよと
少女は森に入ります
とことことことこ入ります
行先は いつもの あの池
お池の石の近くでは 最近不思議がいっぱいで 最近だれも近寄らない
今日の少女の服装は いつもと違って煌びやか
いつも通りに出掛けます 少女は池に出掛けます
お母さんは言いました
あなたが生まれてくれたから 私は幸せだったのよと
少女は池に着きました
フワフワスカート風で舞う
いつもの 池の その中に 綺麗に立ってる石碑があって
穏やかだったこの場所は 今ではすっかり血まみれで
目の前には 巨大な獣
いつも通りに出掛けた少女 彼女はすでに分かっています
村の人は言いました
おまえが行ってくれるから 皆は生きていけるのだと
ああ 誰が少女を救うのか
ああ なぜ優しいこの子が選ばれたのか
村の皆は嘆きます
それでも 生贄に選ばれてしまった 少女を 助ける事など・・・
目の前の巨大な獣が 少女を見て 目を光らせました
獣はそのまま巨大なかぎ爪で 少女を切り裂こうと 手を伸ばします
その瞬間
小さいけれども 大きな背中 茶色い髪が風でなびき
目の前にたつ 不思議な少年
少年は少女を背に守り 巨大なかぎづめを 不思議な武器で うけとめる
だいじょうぶ? もうあんしんだよ
少年の声は 鈴の様に澄み 少女に安心を 届けます
少女の目の前で 少年と 巨大な獣が 戦いました
舞い散る獣の血 飛び散る肉片
それでも少女は怖くない
月光の下で舞うその姿 まるで天使が舞い降りたようで
魔法の光に照らされて舞うその姿 まるで物語の中の勇者のようで
のちに 村に帰った少女は言ったそうです
勇者様に 助けていただいたの と
私は紡ごう この物語を
私は伝えよう この物語を
私は呼ぼう 彼の者こそ 真の≪勇者≫ だと~
「・・・サンドイーターイーターマザーを倒し、居合わせた商人を助け、礼も受け取らず颯爽と去って行った謎の少年~♪
彼こそが真の~南の国を救いし~勇者であるとするならばぁ~♪」
「もうやめてー!」
クロムの歌に、勇者君が絶叫する。
俺はクロムの歌に合わせて伴奏を弾いている。
曲は、そう。
各地で話題になっている≪勇者様≫の曲だ。
ちなみに東の国で人気の曲では、森スライムを退治した賢者率いる猛者たちは勇者君を導く存在であり、師であると歌われている。
それが本当だったら、今頃俺は勇者君の師匠だな。ハーハッハッ! はぁ・・・。
「それにしても、こうして聞くと いろいろやって来たのね、私達」
メイジさんがしみじみと、頬杖をつきながらため息をつく。
『そりゃそうですよ。なにせ今≪勇者様≫の歌は、吟遊詩人の歌の中で一番の人気ですから』
俺が笑ってそう言うと、勇者君は頭を抱えて転がった。
クロムが笑いすぎて咳き込む。
「良かったじゃないか、勇者様。
そういう勇者を目指してきたんだろう?」
渋い声で言うファイターさん。
笑いながら、メイジさんが勇者君を撫でた。
最初はノリノリで聞いてた勇者君。6曲目くらいでさすがに恥ずかしくなったみたいだな。
「大体、ボクだけじゃなくて3人も一緒に戦ったのに、どうしてボクだけが歌にされてるんだよう」
ふて腐れて転がりつつ、ブツブツいう勇者君。
大笑いして呼吸困難になりかけるクロム。
それを勇者君はポカポカと叩いた。
仲がいいようだが、顔見知りではないらしい。
じゃあ何故こんな無人島に勇者君が立ち寄ったのか?
「それは後で言うよ!」
勇者君にそう言われたので、後で聞くことにする。
ちなみにクロムは、「飛ばされただけで僕は何も知らないよ」と言っていた。
それよりも気になる事があるんだけど・・・。
俺達は今、5人で船に乗っている。
そう、5人。
島に勇者君の船が到着した時から、なぜかシーフさんが見当たらなかった。
最初に聞いた4つの足音のうち1つは、クロムの物だった。
先に起きてて船を見つけたクロムが駆け寄って、一緒に俺の所に歩いてきたんだな。
そして、誰もシーフさんの事を話題に出そうとはしない。
なんでだろう。聞いていいことなのか分からないが、意を決して聞いてみよう。
『・・・シーフさんに、何かあったんですか?』
その瞬間、俺から目を逸らす勇者君とメイジさん。
やばい、失敗したか。もっとタイミングを考えてから聞けばよかった。
ファイターさんは軽く呻いてオールから手を離し、腕組みしたまま下を向いた。
それにしても、5人乗ってる大きな船を1人で漕ぐファイターさんの腕力がハンパない。
「シーフは・・・消えたんだ」
寂しそうに話を切り出したのは、勇者君だった。
『消えた? 別れの言葉も無しに?』
「うん」
あの人のよさそうな料理上手の、勇者君を何よりも大切に思っている人が、勇者君に一言も告げずに?
それって、何か事件に巻き込まれたんじゃ・・・。
俺の頭に、最悪の考えがよぎる。
「そういえば、劣化吟遊詩人君はシーフと仲が良かったわね・・・」
悲しげにつぶやくメイジさんの言葉が沁みる。
俺にとっておきの料理を教えてくれた、シーフさん。
彼の笑顔を思い浮かべる。
一見ガラの悪そうな風貌だが、誰よりも人懐っこく笑う人だった。
「最近のシーフは、どこか様子がおかしかったんだ。
何かにイライラしてるみたいに、落ち着きがないっていうか。
そうかと思えば、悲しそうな表情でボクらを見ている事も有ったし。
何か思いつめてる事があったんなら、相談してほしかった」
そして丁度西の国で、海を荒らしていた海龍を倒した夜。
シーフさんは宿から、忽然と姿を消していたそうだ。
「奴は腕も立った。誰かにやられるようなことは無い」
俺の考えを読んだのか、ファイターさんが断言した。そのまま力いっぱいオールをこぎ始める。
まるでどこにもぶつけられない苛立ちを、少しでも発散させるかのように。
*
数時間後。俺達はどこかの島に降り立っていた。
さっきの様な無人島では無く、ちいさいながらに漁村がある。
村の人々は貧しいながらもつつましく生活しているようだ。
木で出来た家はボロボロで、来ている服もかなり傷んでいる。が、
皆、勇者君達を見つけると、嬉しそうに手を振っていた。
その人懐っこそうな笑みは、どこかシーフさんに似ていて。
少し、心の奥がチクっとした。
向こうの方から、少し身分が高そうな人が走り寄ってくるのが見える。
「皆、ちょっと村を回って待ってて!
ボクら、村長と話してくる!」
勇者君がその人の元に向かって走って行った。
ファイターがゆっくり歩いて、後を追う。
「ここは?」
2人を見送った後、クロムが軽く聞いた。
「以前、雷の世界樹の島に船を出してくれていた漁村よ。
村の有力者が船を出すことに反対していたんだけど、実はそれが魔物が変身した偽物だったの」
「それを、その勇者様方が退治したんだ」
メイジさんの言葉に、誰かの声が割り込んだ。
振り返ると、1人の青年が立っていた。黒蹴と同じくらいか。
村の人と同じような質素な服。頭には灰色のバンダナを巻いている。
「あら、あなたは」
「おれは親父をあなた方に助けられた、漁師の息子です!
あの時は本当に、ありがとうございました。
何か、お礼が出来ればいいんですが」
「いいのよ。私達も、ここの船を利用するためにした事だったんだし」
真剣な面持ちでメイジさんに深く頭を下げる漁師Jrくん。
メイジさんは、まるで勇者君に向けるような柔らかなまなざしを向けて微笑んだ。
まるで母親か、年下の兄弟を見る姉のようなまなざしに、少し見惚れてしまった。
「そうだわ! ねえ貴方。
この子達の村の案内を頼んでもいいかしら」
「え、おれでいいんですか?」
突然のメイジさんの提案に、漁師Jrくんがパッと顔を輝かせた。
が、すぐに顔を曇らせる。
「もっと村の偉い人の方が、お気に召すんじゃ・・・」
「そんなの気を使うよ。年も近いんだし、君のおすすめの場所を見に行こうよ」
『それ賛成!』
「じゃあ2人の案内、よろしくね!」
そう言い残すと、メイジさんは颯爽と勇者君達が去って行った方に走って行った。
「もう1秒も勇者様と離れてなんかいられないの~!」
と叫びながら。
お互い顔を見合わせると、皆 苦笑いしていた。
そういえば、歌にあった≪勇者君の不思議な武器≫ってなんだろう。
後でそれも聞いてみよう。
次回メモ:剣
いつもよんでいただいき、ありがとうございます!




