表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者だったのかもしれない  作者: ぷっくん
世界樹と黒いヤツ
65/187

駆け足でGO!

『若葉ってなんの属性特技だったの?』

「ふふふ、内緒ですわ~」


 水の世界樹に行く途中の馬車に揺られてる間、若葉に聞いたら はぐらかされた。

 俺はふくれっ面を作ってプイっと顔を背ける。

 まあ、そんな事したって鼻の下までマフラーで隠れてて見えないんだけどね。

 相乗りしている冒険者のおじさんが、微笑ましそうに笑っていた。


 そういえば最近、若葉と良くしゃべる。

 まあそれには理由があるんだけど。


「わたくし、巫女としての修業を終えたので、シルフを捕まえなくともニルフさんの言葉が全て聞こえるようになりましたわ」


 って事だ。

 若葉が昨日教えてくれた。

 もっと早く教えてくれたっていいじゃん! 世界樹の小精霊取り込んでるとかも!

 (小精霊を取り込んでいると、ニルフ達が書く異世界の文字が読めます)


 だから最近もっぱら、若葉と話している。

 10分超えてもおしゃべり出来るって楽しいね! (シルフ石の稼動限界が10分)

 と、調子に乗って昨日はずっとしゃべり続けていた。


 周りからしたら、無言の俺と頷く若葉。

 しかも夜中。


 見ていたレモンちゃんに、「ちょっと怖いわよそれ」って言われて初めて気づいた。

 道理で、起きた相乗りの人がビクッてしてた訳だ。

 なんか変なモン見たのかと思ったけど、俺らだったか。


 気を付けよう。


 今回の水の大精霊は、俺達召喚者組も見学に行く。

 あの変な包帯男とか、前回来なかったしさ。

 今回来なければ、火と雷の精霊の場所も若干安心度が増す。

 若干だけどね?


 結局、水の大精霊、もとい水のお姉さんの試練は、風の爺さんと大体同じ感じだった。

 部屋に入ったとたんに全員ぐわっと水に飲まれて、脱出しなさいってやつ。

 なんか外から見てると、あのキレた片腕男の溺れてる所を思い出すな。


 さすがに水を毒に変えたりはしてないけど。


 ・・・相乗りしてた冒険者のうち、何人か溺れて失神してたけど、俺達のグループは全員クリア!


 というか、若葉だけ水の牢獄が出現する瞬間に大きくジャンプして避け、水のお姉さんに切りかかって行った。

 空中を走って。


 そしてそのまま一太刀浴びせて、水のお姉さんを真っ二つ!

 切られたお姉さん、上半身が普通の水に戻り、バシャっと湖に落ちた。


『ちょ!? 若葉何やってんの!?』

「んもー、こんな積極的な攻撃受けたの、お姉さん久しぶりよ」


 さすがは水のお姉さん。

 下半身からうねうねと上半身が生えてきて、無事だった。

 てか、まるでダメージ受けた様子が無いよね?

 そいえば小精霊ですら戦ったり倒したこと無いけど(敵対してきたことが無いので)、どうやって倒すんだろう。


 水のお姉さんの色っぽい言葉に、さすがは巫女! って若葉を知らない周りの冒険者達は言ってた。

 けど。

 巫女じゃなくて若葉だから、こんな恐ろしい事しでかすんだ! と俺は言いたい。

 きっと紅葉さんとか、(会ったことは無いけど)他の巫女さんとかはこんな暴走はしないと思う。そう信じたい。


 ちなみに空を走ってたのは風の世界樹に≪登録≫した時の属性特技らしい。

 俺を驚かせたくて、チャンスを狙っていたとか。

 そこに吹いている風を視覚で確認して、風を踏んで歩けるそうだ。なにそれどういうこと?


「ニルフさんが空を飛びたいって必死になっていたので、自慢したかったんですわ~!」

『うるせぃ。ズルいズルい。若葉だけズルいー』

「子供みたいですね、ニルフさん」


 やめて黒蹴、そんな冷めた目で見ないで。


 今回あっさり水の牢獄を破ったメンバーが、全員俺達のPTと知った水のお姉さんが、


「そんなに≪登録≫して底力つけてくるなんて、お姉さん嫉妬で蒸発しちゃうわ」


 って言ってて超かわいかった!

 だから黒蹴その目はやめて!


 試練後、俺達4人は水のお姉さんに呼び出されて、湖の上に連れてかれた。

 他の人に聞かせるのは、まずい話らしい。


 つまり、俺達召喚者についての話。

 湖の真上に浮いた、即席の水の島。そこで、お姉さんが教えてくれたのは・・・


「前に黒蹴ちゃんが風のお爺さんに聞いてたお話あるでしょ。

 それについての事なんだけど」

「あ! 日本に帰る方法についてですね!」


 黒蹴の言葉に、俺は首をかしげる。


『そんな話、してたっけ』

「していたぞ。確かニルフはその時・・・倒れていたな」


 ああ、そうだったな。ありがとう銀。


「私達大精霊はね、世界樹島を通してある程度、意思疎通できるのよ。まあ、自分からしようと思わなければ出来ないんだけどね?

 そこで黒蹴ちゃんの質問を聞いて、いろいろ調べてみたんだけど。

 もしかしたら、火か雷の大精霊が知ってるかもしれないのよね」

「火か雷?」

「知っている『かもしれない』?」


 黒蹴と、銀が続けざまに聞く。

 水のお姉さんは、少しフフフと笑った。


「そうなのよ、あの2人、急に連絡をよこさなくなってね。

 こちらから何度も呼びかけたんだけど。

 ・・・2人とも、すごく環境の厳しい場所に居る分精霊としての力も強いから、そう、変な事態になる事も無いでしょうし。

 急に連絡が途絶えたのは、きっと何か知っているか、なにかこの世界の隠された情報を知ったんじゃないかって思ってね」

「皆の知らない情報を知って連絡を絶つ、か」

「弱い者が知ると身の危険がある情報なのか、情報を独占したいだけの偏屈か」


 ピンキーと銀がなにか考察を始めた。

 さっそく置いてけぼりの俺と黒蹴。


「くるるるっきゅ~」


 あ、海龍のプラズマも居た。

 今日も黒蹴のお腹に巻き付いて、ゴキゲンだ。


「あらその子、海龍ね。めずらしいわ」

「この前保護しまして。この子、珍しすぎて飼い方がよく分からないんですよ。

 一応気をつけて育ててるんですが、このままで大丈夫ですか?」


 水のおねえさんはプラズマを水で包んでクルクルと回す。

 息は出来るらしく、水球の中で楽しそうにバタバタしている。


「うん、このままで大丈夫よ。あと気を付けるのは・・・」


 黒蹴のプラズマは水の属性では無く、いろいろな属性を持っているらしい。

 世界樹の近くにある水晶(精霊石っていうらしい)を食べさせると体調が整い、ウロコの艶が良くなるそうだ。

 精霊石食べるなんて、珍しい生物だな。

 ウロコも固いし、実は石で出来てたりして?


 プラズマについて教えてもらった後、水のお姉さんとピンキー、そしてここまで泳いできた隊長を交えて難しい話をした後、水の世界樹を後にした。

 プラズマ用に、水の精霊石を一杯貰った。

 ピンキー達がアクセサリーの材料用に仕入れた精霊石のうち、使えない物はプラズマのご飯だな。


「くるるるるるるっきゅっきぃ~」


 プラズマは餌袋に顔を突っ込んで、嬉しそうにモグモグしていた。


 そのあと西のギルドにある石碑に≪登録≫しにいったんだけど。

 なんとそこのギルドマスター、東のギルドマスターにそっくりだった!

 なのに、だ!


「イラッシャイマセ、≪登録≫デスネ」


 声がめっちゃちっさい&すごく紳士で、俺と黒蹴は笑いが止まらなくなった。

 双子って訳では無いらしい。

 もしかして、南のギルドは!?と銀とポニーさんを見ると、ものすごく薄い笑みで返された。

 な、なにがあるの・・・?


 そして水のお姉さんと会った後は・・・。

 火の世界樹だ!

 さすが砂漠の国。道中はさすがに馬車は通っていなかった。


「整備中ですので、しばらく火の世界樹への道は閉鎖させていただいております」


 南の王都、城下町出入り口の門の馬車置き場で、行者の人に断られてしまった。

 声を掛けられて周りを見ると、同じように足止めを喰らっている冒険者の人が たむろしている。


「無駄無駄、この国の行者、皆同じことしか言わねえ。

 そんなの頼らずに自分の足で歩くか、街道整備されるまでギルドの仕事してるほうがいいぜ」


 冒険者の1人にそう言われてしまった。

 ポニーさんが不思議そうにつぶやく。


「前はこんなこと、無かったんですが」

『火の世界樹に行く街道を作ってるから、閉鎖されてるのか』

「これはしばらく、足止めですかねぇ」

「ナンデ皆、行カナインダ?」


 その時、ポニーさんの横に居たハーピーが声を上げる。相変わらずこの2人は銀にベッタリだな。


「街道ガ無クッテモ飛ンデ行ケバ、イイジャナイ」

「・・・あ」


 すっかり忘れてたな、その手段。

 ギルドの仕事に出掛けるふりして馬車を取ってきて、≪見せない君≫で隠れてそのままゴーっと飛んだ!

 ちなみに、試練を受ける俺達の魔力の温存の為、王宮魔道士さんが馬車を(2台)飛ばしてくれている!

 連結式、空飛ぶ馬車。馬は付いていません。


「リニアモーターカーだぁああああ!」

「うわぁぁあああすごいいいいい!」


 連結させた途端、ピンキーと黒蹴が凄く喜んだ。


 *


 たどり着いたのは、砂漠の中にそびえたつ大きな洞窟。

 東の国にあった山中の洞窟よりも岩が黒くゴツゴツしていて、転ぶと怪我をしそうだ。

 覗き込むと、洞窟の中は下り坂になっているみたいだな。


「このまま、マグマの所まで下りていくって事かな」

「火の大精霊ですしね」


 ニホン人2人の考察を、ポニーさんが肯定した。

 馬車を横に止め、

 そして洞窟に入ったのはいいんだけど・・・。


『ん?』


 何方向にも別れた道。

 その一番大きく太い下り坂を下って行っていた時の事。


 細い横道に、何かが見えた。

 上が金色で、下が白い、人影?


『ちょっと待って』


 俺はついフラッと横道に足を踏み入れた。

 その瞬間。


「危ない!」


 俺は、全身をマグマに覆われていた。

 目の前の、白い誰かと一緒に。

 そのまま熱さに耐え切れず、俺は気を失った。


 ***


「危ない!」


 後ろから聞こえた誰かの声に、振り返る銀。

 その視線の先では、足元から噴き出したマグマに、ニルフが全身を覆われている所だった。

 ニルフの前に居た、白い人物と共に。


 

-――――――――――

 おまけ~ハーピーの秘密~


ニ『そういえばハーピー、石碑回ってるのに一切≪登録≫してないけど、いいの?』

ハ「ウン、≪登録≫シタクナイ」

隊「ニルフ、魔物は登録しないんだぞ。

  魔物は精霊とは相性が悪いからな。

  ≪登録≫すると、消滅する」

ニ『マジで!? 隊長!』

ハ「まじデ!? 隊長!」

ニ『なんかハーピーも驚いてるけど?!』

隊「ガッハッハ、嘘だ!

  実際は、体に精霊の力を受け取るだけのスペースが無いんだ。

  武器を≪登録≫してその力を受け取れるのは、人族だけの特権だな!」

ニ『そうだったんだ!』

ハ「ソウダッタンダナ!」

ニ『ハーピーも知らなかったの?』

ハ「ウン」

隊「まあ、俺の考えた勝手な憶測だけどな!」

ニハ「『結局憶測カヨ!』」

隊「ガッハッハッッハッハ!!」


次回メモ:そうなんです


いつも読んでいただき、ありがとうござます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ