HPとMPを測ろう!(今更感)
RPGっぽくHPとMPがあった方がいいかなとは思いました、が。
深く考えないでいいよ!
「では、今ザンアクロスと言う男について分かっている事を並べていく。
1.背は180cmほどの細マッチョ、年は18。髪は青紫色、目は金。
いつもフードをかぶっていた為、細かい所は不明
2.キラ子ちゃんが俺達を(初めて)見つける1週間前に雇われた
3.転移は1人ずつしかできないが、何度でも可能
4.どうやって転移の場所や相手を特定しているかは不明
5.何の属性の魔法かは不明
6.離れた場所の相手を、任意の場所に転移させられる
どうだ、他に意見のあるものは居るか?」
隊長が皆の顔を見回す。
俺達は返事代わりに、頷いた。
ここはいつもの城の大広間。最近では俺達専用の部屋と認識されているらしい。なんかごめんなさい?
「あ”」
黒蹴が変な声を漏らす。
なんだ!? また何か重要な事思い出したか!?
「い、いえ。大したことじゃないとは思うんですが」
「なんだ、言ってみろ」
銀に促されて、言いづらそうに答える黒蹴。
「じ、実はその後森を進んでる最中の話なんですが。
夜、火の番をしていた時。
森の中に、丸刈りのプードルの様な生き物が2足歩行しているのが見えて・・・」
『プードル!?』
「2足歩行ですぅ!?」
「それってアイツの仲間じゃ!?」
一斉に皆が食いついた。
怯える黒蹴。ごめん驚きすぎたわ。
「それで?」
冷静に銀が進める。落ち着いてるな。
「え、えっと。
びっくりして凝視してたらその丸刈りプードルが・・・言いづらいですね。
栗饅頭のような感じの目が細いプードルっていうか・・・猫? が俺に手を振りまして。
で、『こんばんわ、いい月夜だね』って言うんですよ・・・」
「人語を解するのか」
「いや、オレ達は世界樹の葉を取り込んでいる。
隊長の言っているのは、この世界の言葉だろう?」
なるほど、暗に銀は別世界の住人と言いたい、のか?
まあ確かに丸刈りのプードル猫とか言われたら、そう思いたくもなるか。
「あ、そういえばザンアクロスさんが連れてったプードル、モップみたいな感じでしたよ!」
それはもういいから! 一応メモるけど。
「後は何かあったか?」
「いいえ、気付けばそれは居なくなってて。
なんか一瞬夢でも見たのかって思ってたので、今まで忘れていました。
すいません」
しょげる黒蹴。だけどそんなの、普通は夢だと思うよね。
しょうがないと思う。
「つまり、その小動物が、この大陸に進出してきている、という事ですか? 隊長」
ポニーさんが意見を出すのを聞きながら、俺も考える。
つまり、あの黒包帯男やキレた男、そしてザンアクロスという転移能力を持った男が仲間だとすると、あの時急に現れたり消えたりした事の説明も付く、な。
そしてその男の仲間だと言うプードル。
そのプードルに似た、二足歩行の話す猫。
こいつらの情報を追いつつ、今後は世界樹を巡っていく事になりそうだ。
隊長達も、同じような意見に収まったらしい。
皆緊張しつつも真剣な面持ちで、話を聞いた。
隊長はまた、部屋を出て行った。おそらく王のところだろうな。
こんな重要になってきた話、そうそう俺達だけで解決しようとか思っちゃいけない。
そんなことできるのは、今もどこかを旅して回っている勇者君くらいな物だ。
会議後。
黒蹴が海龍を掲げて大きな声で名前を叫ぶ。
「虹にあやかって、≪プラズマ≫って名づけました!!!」
「ねえ、黒蹴」
ピンキーが言いづらそうに伝える。
「それって≪プリズム≫じゃない?
プラズマだと、雷だよ?」
「あ」
「くるるっきゅ~」
海龍改め≪プラズマ≫が、嬉しそうに鳴いた。
*
さて、残りの石碑でも回るか、と皆が身支度を始めた頃。
ここでギルドがものっそい発表をかましてきた。
なんでも、各国の頭脳とギルドの共同開発で、1つの魔法具を作り出したとか。
全世界の冒険者に激震を走らせた、その内容とは・・・
「冒険者の体力と魔力を測定する魔法具を発明しました!!!」
(その発表のあった日の夜、ピンキーが城の見張り塔の天辺で遠吠えをしている姿が目撃された。
うれしかったんだね)
早速皆でギルドに駆けつける。
が、
「すごい人ですね」
黒蹴がぴょんぴょん跳ねながら、ギルドの中を確認する。
「うぅ~、見えません」
キラ子ちゃんとレモンちゃんもぴょんこぴょんこしてる。仲良いな。
『もうさ、あの靴で飛んじゃえばいいんじゃない?』
「それは辞めとけ」
一瞬で銀に否定された。
かわいいジョークのつもりだったのに!
「あら? なんですの?」
若葉が何かに気付く。そして、しゃがみこんでぼそぼそと呟き・・・
「行きますわよ! どっりゃあああああ!」
「ギャヒ―――ン!」
大きく振りかぶって、ピンク色の塊をブン投げた。
そのピンクは人ごみの頭上を弾丸のように突き進んでいき、そして。
「あ、落ちました」
「ギルドのドアの上の壁にぶつかったな」
そのまま人ごみに飲みこまれていった。
今の一体何だったんだ。いや、確信はあるけど。
「ほ、本当に投げても良かったんですの?」
青い顔で若葉が呟いていたけど、まあ本人のアイデアなんだろうし、いいんじゃない?
5分ほど待っていると、ボロボロになったピンキーが人ごみの足元から這い出てきた。
『あ、お帰りピンキー。どうだった?』
「あ、うん。ただいまニルフ。
中まですごい人だったよ」
「あ! ピンキーさん大丈夫ですの?!
思ったより壁にバシってなってましたが!」
「大丈夫だいじょうぶ。ゲフッ
あ、今カウンターで確認してる人の会話聞いてきたんだけどさ。
1ヶ月先まで予約でいっぱいだって」
こういう時こそ、王様のごり押し権力が欲しいって、ちょっと思っちゃったよ。
*
まさか城にも同じ魔法具が支給されてるとは思わなかったよー。
とか言う事も無く。
城では、俺達の為に一番に手に入れようとしたけど手に入れられずに、しょげる王様を宥めた。
各国とギルドの共同開発で作ったアイテムの為、東の国だけで勝手に所有するわけにもいかなかったそうで。
なんでも作るのに時間と手間がかかる物らしく、何処が一番に所有するかで公平にクジで決めた結果、この国は2週間後に支給となったらしい。
ちなみに、一番はギルド。最初に出来ていた試作品を含めた3個をすでに各ギルドに配置済みだそうだ。
そしてどのギルドも、あの騒ぎ。
俺達が測定できるのは、いつになる事やら。
「うっぅっ、すまぬのう。ワシがふがいないばっかりに・・・」
「まぁまぁ・・・」
「発明しただけでも、すごい事ですよ」
俺達が去った後も、王の周りでは臣下たちが慰めていた。
今度いいお土産でも持っていこうかな・・・?
次の週から、俺達は一斉に未踏の石碑を巡って旅を開始した。
まあ≪見せない君≫が3つあるので、ばらけ放題だ。
馬車に乗って道なき道をガッタガッタと走り回る!
といっても、馬車の下と後ろに王宮魔道士さんが≪カイチューデントー≫を取り付けたので、5mほど空中に浮いてる。
悪路なんてなんのその!
浮く時の魔法は、その時魔力を注いでる人によって異なるけどね!
「何この馬車。シンデレラの馬車? それともサンタさんにでもなりたいの?」
黒蹴が青い顔でつぶやいてたのが印象的だったな。
あ、そういえば黒蹴達ギルドPT、空飛ぶ練習して無ぇや。
そりゃ青い顔にもなるか。
そんな馬車で東の国と西の国の未踏の石碑を目指して、ガンガン突き進んでいった。
気分はピンキーの教えてくれた異国の善人、サンタさんの気分だ!
ちなみに、馬は連れていない。
そんな馬車、馬が怖がって走らんわ。
てか空中走る馬なんておらんわ。
とか言っていたら、乗り心地を確かめたいと言って付いてきた王宮魔道士さんの目が光った。
「空中を走る、馬、ですか」
キラーンとさせて何やら考え出してるけど、動物にそんな事しちゃいけないんだからね?!
王宮魔道士さんの底無しとも思える魔力によって、西の国の石碑は全て回り終えた。
城に帰って数日すると、銀達の向かった東の国の石碑も、全て回り終えたとの連絡があった。
湿地の多い西の国と違って、ほぼすべての場所が森で囲まれているため、いくら空を飛べるとはいえ、なかなか移動が難しかったらしいね。
その後は皆で転移して、≪登録≫タイム!
ここまでで大体半月使ったな!
それじゃ、さっそく城に届いた魔法具使わせてもらおうかな。
召喚されてから、今までに登録した石碑の数は合計53個!
そのうち2個は風と水の世界樹の石碑だな。
あと、合計数からは世界樹島の石碑と、東国城にある≪世界樹枝の間≫に登録した分は引いてあるけどね。
・ニルフ
通常石碑51
属性世界樹石碑2(うち自属性1)
HP 300
MP 2000
範囲回復ハープを街中で弾いてたおかげで、MPが伸びた感じね。
あなたの世界の人は、体内にため込む魔力が多いのかしら。
・銀
通常石碑51
属性世界樹石碑2(うち自属性1)
HP 490
MP 2310
環境の厳しい南の国で修業しただけあって、HPが凄いわね。
あなたも、魔力を多くため込む体質の世界出身とか・・・?
・黒蹴
通常石碑51
属性世界樹石碑2(うち自属性0)
HP 350
MP 900
冒険者として過ごしたためか、HPMP両方が伸びてるわ。
やっぱり魔法系なのでMPが多めね。
・ピンキー
通常石碑51
属性世界樹石碑1(うち自属性0)
HP 380
MP 700
ほぼ行商していたから、前衛としては他の3人より劣ってるけど、属性世界樹の数が合えばおそらく追いつくでしょうね。
魔法戦士、といったところかしら。
・ケモラー
通常石碑51
属性世界樹石碑2(うち自属性1)
HP 380
MP 820
さすが3番兵士団上位なだけあるわ!
冒険者と兵士の経験が、属性世界樹をいくつも登録できる召喚者達との差を埋めていると言っても過言ではないわね!
ヒーラーだから、MPが優れているのね。
・ポニー
通常石碑51
属性世界樹石碑3(うち自属性1)
HP 450
MP 790
こちらもさすが3番兵士団上位。
力自慢のオノ使いなだけあって、HPがすごいわね!
銀と南の国で修業した成果もあるわ。
・レモン
通常石碑50
属性世界樹石碑0
HP 265
MP 540
あまり戦闘経験は無いようだけど、≪登録≫のおかげで底上げされてるって感じね。
・サイダー
通常石碑50
属性世界樹石碑0
HP 285
MP 520
こちらもあまり戦闘経験が無いようね。
戦闘経験を積むとHPMPが上がると言う報告がギルドから入っているわ。
これからも精進を積むことね。
・ライム
通常石碑50
属性世界樹石碑0
HP 315
MP 590
皆のお姉さんとして、奴隷にされていた皆を守った経験で伸びているって事かしらね。
・若葉
通常石碑51
属性世界樹石碑0
HP 380
MP 1400
さすが世界樹の巫女様!
その魔力、すばらしいです!
・ハーピー
通常石碑0
HP 250
MP 100
ハーピー、あなた武器持ってないし≪登録≫していないでしょう。
銀ト一緒ニ、受ケタカッタンダ!
・キラ子
通常石碑10
属性世界樹石碑0
HP 75
MP 110
あら、あなたは確か護衛って事だったわね。
まあその辺の盗賊よりは腕が立つんじゃないかしら?
一言メモみたいなのは、俺達の結果を見た王宮魔道士さんの解説だ。
そいえば、ギルドのデータを分析して分かったことがあるっぽい。
王宮魔道士さんが見せてくれた。まだ一般には極秘らしいけど。
「それがこれよ!」
普通の石碑 1個に付き HP5 MP10
属性世界樹の石碑 1個に付き HP10 MP100
自属性の世界樹の石碑 1個に付き HP20 MP200
≪登録≫以外でHPやMPを伸ばすには、戦闘経験を積んだり、普段から魔法を使う練習や体を鍛えていくと良いらしい。
というか、普通はそうだよね。
≪登録≫は、一種のドーピングみたいなもんって事か。
ちなみに測定の仕方だけど・・・。
『ちょっと! これホントに大丈夫なんですか!?』
「大丈夫大丈夫! ガッハッハッハ!」
手には俺の良く知る≪カイチューデントー≫の皿の色違い。
そこからは、膨大な風魔法が解き放たれている。
俺はその光景に不安を覚え、隣で仁王立ちしている隊長へ声を張り上げた。
魔法の爆音で部屋がうるさいんだよ。
てか壊れないよね? この部屋!
『これ! 強制的に魔力が吸い出されていくんですけど!?』
「そうだ! 全員同じ魔法の量が1秒毎に吸い出されて魔法となって解き放たれる!
そして魔力が尽きるまでの時間が、お前らの持つ≪魔力の量≫って事だ!」
あ、測定終わった後は貧血みたいになって倒れた。
これが魔力切れ、か。
初めての経験に、ちょっとうれしくなったのは内緒だ。
倒れた後は、隣の部屋に設置された医務室に運ばれたらしい。
目が覚めたら、周りには同じ症状で倒れた兵士さんが一杯居た。
道理で、この部屋から出てくる人が居ないと思ったよ。
その後は体力 (HP)を測定したんだけど・・・。
「これ、普通の体力測定じゃないですか? 普通に学校でやったやつの簡易版」
黒蹴の言ったこの一言が、一番わかりやすいんじゃないか?
あ、そういえば隊長のHPとMP教えてもらってないや。
・・・聞いたら「内緒だ!」って言われたわ。
次回メモ:世界樹
いつも読んでいただき、ありがとうございます!
ちなみに召喚者組の初期HPMPは、
ニルフ:HP15、MP1000
銀:HP80 MP1500
黒蹴:HP15 MP50
ピンキー:HP20 MP70
です。
普通はそんなに世界を廻る事も無いため、初期スペックの黒蹴やピンキーくらいが一般人。
少々腕が立つ程度なのが、キラ子ちゃんあたりと考えてます。
キラ子ちゃんは≪ブロンズ・わかぎ≫かな?




