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勇者だったのかもしれない  作者: ぷっくん
世界樹と黒いヤツ
55/187

嵐の発生源は大体姉巫女

ぬふぁ!?80Pこえた!?

え、ちょ。こえた!?

うぉああああありがとうございますううう!すげー!すげー!

「すごいっすね紅葉さん!」

「はんぱないですね紅葉さん!」

「ぜひ接近戦教えていただきたいです紅葉さん!」


 石碑に≪登録≫後の帰り道、ソルジャー君達は紅葉さんにベッタリだ。

 それを横目で見つつ


「完全に主役を食われちゃいましたねぇ」

「はぁ・・・」


 若干寂しそうな黒蹴。初めての後輩だったもんな。


「そういえば黒蹴さん」


 紅葉さんと話していたソルジャー君が、俺達に寄ってくる。

 ちょっとうれしそうな黒蹴。


「さっきの森スライム、ケモラーさんが鞭で核を砕いてたように見えたんっすけど、どうして死ななかったんでしょう。

 普通のスライムなら、あれで倒せてるっすよね」

「あ、あぁ。それはぁ~」


 おい黒蹴、目が泳いでるぞ。

 そういえば俺も知らないな。


 大抵の魔法は弾き、気配が読み取りづらく塩に弱い。

 それなら、力がある人は物理で楽々勝てそうなもんなのに。


「それはですねぇ」

「ケモラーさん知ってるんですか?」

「はい。森スライムのこの核。触ってみてください」

『なんか草原のスライムのより、プニプニしてる?』


 草原のは宝石っぽいけど、森のはグミみたい。


「そうですよぉニルフさん。

 森スライムの核は、体と同じくゼリー状なんですぅ。

 塩を掛けて脱水しないと取り出せません」

「あれ、でも最初倒した時は石みたいな核じゃなかったですか?」

『だよな、黒蹴』


 俺達の疑問に、ケモラーさんがフッフッフと人差し指を立てて振る。

 もうちょい考えろって事か。

 黒蹴が何かに気付いて声を上げた。ちくしょう先を越された!


「え、じゃあ最初に森スライムが死んだのって」

「そうですよぉ黒蹴さん。

 あれはおそらく塩を取り込んで核が脱水されて、そのショックで動けなくなっていただけらしいですぅ。

 その時取り出した核は脱水しきってたんですねぇ。

 それで、石みたいだったので、皆さん勘違いしてたんですよぉ」

『あの後、森スライム見つけたら必要以上に塩ぬりこんだもんな』

「そうですね・・・。

 道理で核砕いても死なないと思ったんですよ。

 しかもたまに分裂するし」

「えっ」

『えっ』

「え? 草原のスライムは核砕いたら復活に時間かかりますけど、森スライムって核真っ二つにしたらそのまますぐに2匹の個体になって襲いかかってきませんか?」


 いや、「知らなかったの?」って顔してるけど。


「きっとそれ、新発見ですよ!」

「さすが黒蹴先輩!」

「すごすぎです!」


 ソルジャー君達の尊敬が戻ってきたな。オメデトウ。


 そんな事を話しているうちに王都に着く。

 すっかり夕方になっていたので門番さんは別の人だ。

 軽く会釈してギルドに報告しにいった。

 

 森スライム、西の森に出現。すぐに討伐隊が組まれるそうだ。


「よく見つけたな、坊主共!」


 東ギルドマスターが俺達の頭をガシガシ撫でてから、大急ぎでどこかに出掛けて行った。

 どこかに報告に行くのか?


「じゃあ俺達はこれで失礼するっす!」

「またよろしくお願いします!」

「俺達、しばらくギルドの森スライムの討伐隊に加わろうかと思ってます。

 ご一緒出来た時は、ぜひPTお願いします」


 ソルジャー君達と別れる。

 明日は一緒に森スライム討伐隊に加わるのも面白いかもな。

 あ、若葉はどうだろう。森スライム見たこと無いけど、めっちゃ面白い反応してくれそう。


 考えつつ、ギルドを見回す。

 森スライムの報告を受けたからか、職員さん達がバタバタ動き回っていて活気がある。


 そういえば最近ギルドや城が騒がしい。

 ギルドも各ランク別に部屋を作ったりして、すっかり様変わりしたし。

 あの部屋のおかげで、冒険者1人1人の技量や繋がりがいい方向に行っているらしいけどね。

 でもなんで急に?


 ・・・祭りは終わったのに、なんかあるのか?


『ねえケモラーさん』

「どうしましたぁニルフさん。

 あ! 2人ともこっち来て見てください!」


 ケモラーさんにシルバー部屋に連れて行かれる。


「ここに書いてあったんですね」

『森スライム、警戒しすぎだろう』

「ほら、やっぱり黒蹴さんの気付いた事、書かれてませんよぉ」

「やりましたね! 新発見です!」


 紅葉さんが一緒に喜んでくれる。

 ナチュラルに居るけど、ここシルバーランクじゃないと入っちゃダメなんだからね!?


 *


「紅葉さまー!」

「どこですか!? 紅葉さまー!」


 城に帰ると、紅葉さんと一緒に居た神官たちが凄い形相で紅葉さんを探し回っていた。


『・・・無断外出?』

「てへ☆」


 うわぁマジか。どうしよこれ。

 とりあえず近くの草むらに隠れる。

 と、後ろに気配。しまった見つかったか!?


 サッと振り返るとそこには。


「・・・姉さま・・・」

『お、おう、若葉・・・か?』


 若葉(?)が居た。


「なんか、髪が赤いような」

『それに纏う気配が真っ黒なような』

「・・・」


 話しかけても何故か無言。というか無反応?

 うつむき加減のうえ、猫背で立つ若葉(?)。

 しかしその長い髪は赤く、顔には髪が掛かって表情が読みづらく。

 そして


「せ、背中から真っ黒なオーラ的な物が見える・・・だと!」


 目をカッと見開いて呟くケモラーさん。キャラ変わってません?


「で、ではわたくしはこれで」


 サッと逃げようとする紅葉さん。

 そうはさせるか!


『待ってくださいって!

 絶対これの原因紅葉さんでしょう!

 絶対若葉になんかしたでしょう!』 

「な、何のことかしらぁ~?」

「目が泳いでますって!」


 黒蹴と2人で紅葉さんを捕まえる。

 そのまま押し問答したり腕掴まれたり背負い投げ喰らったりしてると


「・・・ですの」

『え?』


 若葉が反応した?


「何うちとけてるんですのー!」

『ぎゃぼーああぁ!』

「すごい若葉さん。見事な踵落とし・・・」


 黒蹴が呟いた。


『だから・・・、なんで、俺・・・』


 ばたっ。

 

 薄れゆく意識の中で気づく。そういえば、ケモラーさん、既に居ねぇ。


 *


 残りの5日間はギルドの森スライム討伐隊に参加した。

 もちろんソルジャー君達とも一緒だ!

 そして


「よろしくおねがいしますわ!」


 姉巫女 の 紅葉 と 別れた! 若葉 が 仲間に なった!

 

 西の森への道中、ソルジャー君が若葉に聞く。


「若葉さんは、ああいうことできないんっすか?」

「できませんわよ!? あの人、化け物なんですから!」


 集団で飛び上がって襲い来る平原スライムを大鎌一太刀で薙ぎ払いつつ、若葉が言う。

 おまえも大概だと思うけどな、若葉。


 

 ~森スライムの討伐中の会話~


『そういえば、昨日何があったんだ? 理由を聞いていない』

「あぁ~。あれはですね、姉さまがわたくしを呼び出しまして・・・」


ーーーーーーーーーー

「ふんふんふふ~♪」

「あら、ごきげんね、若葉」

「そうなんですの!

 明日からは黒蹴さんのギルドの仕事に混ぜていただこうと思ってまして!

 これからそのメンバーを決める会議なんですわ!」

「あら、いいわね。確かこの国のギルド、だったかしら?」

「はい! 楽しみですわ~」

「・・・ねえ、若葉。ちょっとここに立ってもらってもいいかしら?」

「?

 なんですの?」

「トゥッ★」

「ぎゃふ!?

 な、なにを・・・。体・・・が!?

 これは・・・姉さまの属性特技!?」

「ふふふー。受けてしまったわね。しばらく動けないわよ」

「なにを・・・たくらんで」

「ふふふー。なんでしょうね~♪」


 ガサゴソ


「(自分のカバンをひっくり返して、一体何をしてるんでしょう?)」

「できましたわ~♪」

「(その格好って!)」

「どう? 若葉そっくりに出来たでしょう。

 今日町で見かけた髪染め、興味本位だったけど買って良かったわ~」

ーーーーーーーーーー


「そのまま姉さまは髪を緑に染めまして、皆さんの会議に参加したようでしたの」

『え、じゃああの時『巫女の仕事がある』って言っていた若葉って・・・』

「姉さまですわー!!!」


 分かった、泣くな。掴むな。俺を投げるなー!


「気づきやがれよコンチクショウ!」


 俺が悪かったから顔踏まないで!!!


「若葉さんが荒れている・・・」


 黒蹴達はいつの間にか、俺達から距離を取っていた。


『ゴホッ。で、痺れたお前はどうしたんだ?』

「聞いてくれますか!?

 あの後姉さまったら!」


ーーーーーーーーーーー

「さて、わたくしが若葉になったということは、後はもう分かるわよね?」

「ヒッ」

「ふふー。若葉といえども、もう声も出ないようね。

 さ・て・と。始めましょうか♪」

「(やめてくださいですわー!!!)」

ーーーーーーーーーーーー


「気が付けば、髪は真っ赤に染められているわ、胸にパットがこれでもかと詰められているわで!!!」

『お、おう。

 俺は若葉のスレンダーな感じも好きだけどな』

「え///」

「森スライムが出たぞー」


 誰かの声が響く。


『おっ』


 向こうで、森スライムを見つけた女冒険者が戦っていた。

 いいねビキニアーマー。眼福眼福。


「でりゃぁああああ!」

『ぎゃああぁぁぁ!?』


 また投げられた。

 

 俺と若葉の上に森スライム(小)が降り注ぐ。

 サっと手に持った大鎌をブンっと振り回し、斬撃と魔弾を円形に吹っ飛ばして森スライムを蹴散らして行った。

 俺の所に落ちてきた奴も含めて、だ。


「この狭い森の中で、よくぶつけずに振り回すな」


 細切れになって飛び散った森スライムに塩を塗り込みながら、討伐隊の冒険者が笑った。

 今のは助けてくれたのか。ありがとう若葉。


 あ、でも。俺のみぞうちを踏みつつ鎌振らないでほしいな!


 結局若葉は紅葉さんの手により、痺れた状態でベットに詰められ、翌日神官たちに発見された。

 そのまま反論する暇も無くあっという間に仕事場に運ばれ、一日紅葉さんの仕事をしていたらしい。


 よく紅葉さんが脱走するから、神官の間では有無を言わさず、仕事場に連れて行くのが日課になっていたようだった。

 それを逆手に取った今回の作戦。

 若葉だって気づいてもらえたのは夕方だったそうだ。


「姉さま、わたくしの言葉だけ痺れさせて行ったんですのよ!?」

『それが解けたのが夕方だったって事か」

「すごいですね紅葉さんの属性特技。

 その効果もすばらしいですが、細かい魔力操作、ぜひ見習いたいです」


 コナユキくんが近くに寄ってきた。

 危険物扱いされていた若葉、ようやく落ち着いたと判断されたんだな。


「昼飯にするぞー!」


 ギルド職員(男)の声が響く。

 冒険者達の歓声が上がった。

 

 あ、そういえば。

 森スライムを初めて見た若葉の反応、観察し損ねたな。

次回メモ:修業

いつも読んでいただき、あちがとうございます!

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