じいさん
9月14日ほんのり改定
驚いて顔を横に向けると、白髪の痩せたじいさんが背丈くらいある杖を持って立っていた。
仙人みたいな髭してる・・・仙人みたいな服着てる・・・肩に仙人みたいな杖(取っ手が無い丸い奴)をかついでる・・・! 杖の意味なくない?
そんな失礼な事考えてる間に、じいさんが草むらを分け入ってきた。
「世界樹の木に選ばれたようじゃが、おぬしも召喚者かの?
なぜこんな離れた草むらで一人寝転んでいるんじゃ。
まるで気づかれてないような扱いじゃ。」
いやたぶん俺、召喚者じゃないし。
後、気づかれてないんじゃなくて、気付かれないようにしてるんです。
「それにしてはシルフ使って盗み聞きしてたようじゃが」
ばれてる!?しかもなんも言ってないのに心読まれた!?
「いあいあいあいあ。心なんぞ読めぬぞ。ほっほっほ」
仙人じいさんは仙人ぽい笑い方をして、手をこっちに近づけた。
じいさんの腹辺りまである髭のすそ(?)が顔にかかってちょっと痒い。
フッってしてやろうか。
じいさんは、さらに手を近づけてくる。早くつかめってか。
でもさ、これ。手をつかんでも引き上げる前にじいさんの方が倒れるんじゃない?
じいさんは、さらに手を近づけた。もういい加減さっさとしろって目をしている。
若干の不安を持ちつつ手をつかむと、じいさんがじいさんとは思えないほどの怪力で俺の手を引っ張り上げた。
「ふんぬっ」
おぉ、すごい。俺まったく力入れてないのに体が持ち上がって、草むらの中に座らされた!
しかし俺は疲労感のせいで力が入らず、今度は座ったまま前のめりにクタッとなる。
顔に草が刺さる。
「おやおやおや、若いのにぎっくり腰とはな。精進が足らぬぞ」
ちがいます。つかれているんです。やすませてくださ
「うぬ?おぬし・・・」
じいさんは急にこっちの顔をのぞきこむと・・・俺の額にデコピンした。
その勢いで再び仰向けに倒れる俺。頭が! 頭が木の根に当たって跳ねっ!
てかめっちゃイテェェエエ額割れてない? 血出てない!?
そしてじいさんは俺の頭が跳ねる勢いなんか関係なしに、俺の喉に杖を突きたてる!
ぐぇっ。
「おや、これは・・・ふむ・・・わしでも無理か。よし、もう良いぞ」
ぐえええええ! 喉仏絶対砕けたこれ! なにずんだジジィィィ!
呻く俺、喉に杖刺したまま思案するジジィ。
ジジィが喉から杖を離した瞬間、俺はバネのように起き上がって胸ぐらをつかむ!
そのままジジィを睨みあげ
『なにがもう良いだよ!』
と叫んだが・・・
口から出たのは声の代わりに≪シュー≫という空気の洩れる音だけだった。
あえ? 声・・・。
次回メモ:じいさん
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