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勇者だったのかもしれない  作者: ぷっくん
世界樹と黒いヤツ
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石碑めぐり2~ギルドの新サービス&巫女~

 さて、こうして半月過ぎた。

 え? 思ったより長い?

 しょうがないじゃない。

 ドンドン転移してドンドン≪登録≫して行ったとはいえ、綺麗な風景の場所見つけてのんびりしちゃったり、ちょっと綺麗な街見つけたら姿隠して散策してみたくなったりするでしょ!


 理由になってないか。


 南の国は砂漠が続き、遊牧民や行商人を泉でたまに見かけるくらいだった。

 月明かりに照らされた砂漠がキラキラと輝き、その先に見える海に月の道が続いていて綺麗だったな。


 西の国は街道以外のほとんどが湿地帯だった。

 東の国では見かけない植物や動物が沢山居て、面白かったな。

 人も多かったので、茂みに隠れて人が居なくなった時に≪登録≫した。


 そういえば西の国は行商人が多いんだが、皆馬車で旅をしている。

 その馬車がまたハデで。

 黒蹴によると「中東のお金持ちの家っぽい柄」だそうだ。


 ケモラーさんによると、馬車に特徴を持たせることによって「あ、あの行商人さんだ!」って分かるようにしてるらしい。

 ピンキー達の馬車は比較的地味だったが、そういえば外側に女の子の絵が描かれていたな。

 ちょっと抽象化された、目の大きな女の子の絵だった。イタ馬車っていうらしい。


 え、そんな情報いらない?


 まあ、出発から半月過ぎた頃。

 俺は気づいた。


『これってさ、わざわざ馬車1台にギュウギュウ詰めにならなくても、2台に分かれて乗れば良くない?』

「え、でも1台分にしか≪見せない君≫の魔法を掛けられないんじゃないんですか?」

 

 黒蹴の言葉にサイダーさんが気付く。


「・・・! いや、複数に掛けられるはずだ!

 ニルフが沢山のリンゴに魔法を掛けていくのを見た!」


『つまりこれって・・・』

「あらあら。毎日城に帰ってくるように、王が仕向けていたんですね」


 ライムさんの言葉を聞いて、ポニーさんとケモラーさんが「あっちゃー」って顔をした。

 おい、王様!!

 もうほとんど回りきっちゃったじゃないか!


 *


 夕方、少し早めに切り上げて城に帰った俺達は、王に話を聞きに行った。

 まあ大人数で行くこともないし、暇そうな黒蹴を誘って2人で聞きに行く。と、


「違うぞ、馬車が手に入らなかっただけじゃ」


 王は自信満々にそう言った。言い切った。

 ただその横で大臣が「あっちゃー」って顔をしていて、隊長が大笑いしていたけども。


「転移できる石碑を廻り終われば、また石碑を探して旅に出かけるのであろう?

 その時までにピンキーの馬車を修理しておくのでな。楽しみに待っているがよい!」


 王は「はーっはっは」と笑いながら、どこかに去って行った。

 テンションが少しおかしい。きっと寝不足なんだろう。


『なんか問題でも起こりました?』


 大臣に聞いてみる。が、


「いいえ、特には。

 あぁ、そういえば。今回ギルドが新サービスを始めたそうですぞ。

 なんでも、現在分かっている石碑の場所を地図に記した物を公開するとか。

 シルバーランクから閲覧出来るらしいので、行ってみてはいかがですか?」

「まじですか!!!」


 嬉しそうな黒蹴に引っ張られて、そのまま東の城下町にあるギルドに向かう俺。

 なーんか、はぐらかされた気がする?


 *


「おう! 石碑の場所を知りたいんだな! こっちの部屋に来るがいい!」


 東ギルドマスター(ブートキャンプギルドマスター)に通されたのは、ギルド奥にある質素な扉だった。

 案内されつつ、黒蹴が聞く。


「前、こんな所ありましたっけ」

「いや、最近作ったんだ。元々倉庫だったんだが、ギルドもこういうのが必要だと思ってな」


 ギルドマスターに通されたのは、木をイメージしたようなウッディな作りの部屋。

 中央には質素な机や椅子が置いてあり、駆け出しって感じの冒険者達が情報交換やPTメンバーを集めている。


 木目状の壁には様々な資料。

 軽く資料を見てみると、ほとんどが魔物の生態や旅で注意する事や円滑にPTを維持する方法などの初歩的な内容だった。


「ここは最近冒険者になった者が集まる部屋。つまりブロンズランクの部屋だな。

 ここにある資料はブロンズ以上の者が読める。

 お前らはシルバーだから、こっちだな」


 部屋の奥にある少し豪華な扉を開けると、真っ白な壁に出迎えられる。

 こちらの壁にも、様々な資料が展示されてあった。

 部屋の中央にはソファーやカフェのような机や椅子が置いてあり、冒険慣れした感じの冒険者達がくつろいでいる。


「ここはシルバーランク以上だな。

 あとここは・・・。ゴールドになってからのお楽しみってやつだ」


 指差された先を見ると、城にあるような豪華な装飾の施された美しい大扉があった。

 両端にイカツいおっさん共が2人、腕を組んで守っている。


 あ、俺達の目線に気付いた。すかさずマッスルポーズするおっさん共。

 サッと目を逸らす、と。

 逸らせた目の先にいた東ギルドマスターも、同じポーズを決めておっさんたちを見ていた。


 挨拶かな?


 一通り笑顔でポーズを決め終わった東ギルドマスターは、俺達に向き直った。真顔に戻っている。


「石碑の資料はこの部屋にある。

 メモしてもいいが、うかつにブロンズの奴らに情報を漏らすなよ」

「初心者が力だけ求めて無理して進むと危ないから、ですね」

「分かってるなら大丈夫だ」

『なあ、この情報を見てブロンズと一緒に石碑を廻るってのは大丈夫なのか?』


 ギルドで禁止されているのなら、もっと隠れてやらなくちゃいけなくなるからな(辞めるとは言わない)


「その辺は一緒に行くシルバーランク次第だな。

 この部屋を作ってからは、PTに居るシルバーランクの人が情報を見て、ブロンズの初心者と共に石碑をめぐるってのが結構流行ってるみたいでな」


 東ギルドマスターの話を聞いて、黒蹴が俺に耳打ちする。


「前に会った勇者君みたいなもんですかね。

 あれは世界樹に挑戦してたので、ルール違反な気がしますが」


 東ギルドマスターは仕事があるからと、部屋を出る。

 と、こっちを振り返り


「お前らも、この部屋を出た時にブロンズランクの冒険者達に慕われるだろう。

 ちゃんと導いてやれよ、先輩共!」


 笑顔で親指をグッと立てた。

 

 俺達は壁に展示された情報を見ていく。と、


「あ、ありました」

『東の大陸の石碑しか載っていないな』

「他の大陸の石碑なら、その大陸のギルドに行けばあるぞ」


 さっきソファでくつろいでいた冒険者さんが教えてくれる。

 全身を銀に光る鎧に包み、かなり腕の立ちそうなおじさんだった。


 お礼を言い、持ってきた地図(普段使ってるやつ)に書き込んでいく。


『風の世界樹の谷周りに行ってないところがあるな』

「結構回ったと思ってましたが、まだ行ったことのない石碑あるもんですね」


 一通り書き込み、城に帰ろうと部屋を出る。と、


「あ、あぁぁああの! あのあの! シルバーランクさんですか!?」


 真っ赤な髪を短く切り、そばかすの浮かぶ顔を真っ赤にした13歳くらいの女の子に声を掛けられた。

 見た感じ短剣で戦う盗賊?


「お、おい! お前ちゃんと話せよ! あ、僕達、この前冒険者になった者なんですが!」


 兵士風装備の男の子が女の子を小突いて話し出す。この子も13歳くらいか。

 勇者君がもうチョイ成長した感じ。

 その横から、落ち着いた色合いのローブを着た15歳くらいの男の子が男の子の肩をポンっと叩く。

 

「君も落ち着きなよ。

 あの、俺達まだ駆け出しでして。今日初めて薬草取りのクエストを受けたんですが、スライムに囲まれて達成できませんでした。

 なにかアドバイスを頂きたいのですが」


 落ち着いた感じの話し方だな。魔法使い系っぽい。


「早くシルバーランクに上がって、石碑≪登録≫して強くなりたいんです!」


 兵士風の男の子が力いっぱい黒蹴に食いついて、アドバイスを求めている。

 それを横目で見つつ、ぼんやりと考えた。


 あ、そうだ。若葉たちもシルバーランクにあげないと。


『あ!?』

「えーっと、だからスライムは核が弱点だから、核に一点集中で魔法を・・・

 どうしました? ニルフさん」


 困りながらもアドバイスをひねり出してた黒蹴が、俺の声に振り返る。


『なあ、若葉なんだけど。

 あいつだけギルドに登録して無くね?』

「・・・あ」


 *


「おはようございますですわ」

「おはようございます」

『おはよー』


 次の日の朝、若葉を連れてギルドに行く。

 今日は他のメンバーの皆も、それぞれが回った国のギルドに行っている。

 石碑の場所をメモするためだ。

 

 銀とポニーさんは南の国、ピンキー親衛隊とケモラーさんは西の国に行っている。


 ギルドは国境関係ない法人らしいのでどこで登録しても一緒らしいが、


『別に他の国で登録しても良いそうだけど』

「せっかくなのでニルフさん達と同じ、この国のギルドに登録したいのですわ」

『ふーん。まあ城から一番近いもんな』

「え、えぇ」


 なんだ? なんでちょっと不機嫌になったんだ?

 その時、突風が吹き、若葉の長い髪がバサっと舞い上がる。


「本当に東の大陸は、風が強いですわね!」


 ムスっとしたままの若葉が、ギルドに入っていった。

 なんだ、風に怒ってただけか。


『こんなとこで風が強いとか言ってたら、風の大精霊の谷とか髪が吹っ飛ぶんじゃないか?』

「ちょっと、怒られますよ」


 黒蹴も笑ってんじゃねーかよ!


 俺達もギルドに入ると、若葉が記入した用紙を持ってギルドマスターの所に行くところだった。


「世界樹の巫女様!? 巫女様は登録できない決まりとなっております」


 経歴を見たマスターに敬語で対応される若葉。

 理由は不明だが、創立当初からの決まりらしい。


「ですが、世界樹に挑戦したいということでしたら、許可は出せますよ。

 元々、世界樹に挑む者のランクを決めてほしいという話を持ってきたのは世界樹島の巫女様なんだそうです。

 まあ、ギルドが出来た時の話だそうなので、理由は分かりませんが。

 巫女様への通行書の発行は可能です。それではこちらをお持ちください」


 東のギルドマスターは、俺達のと同じ発行書を若葉に渡した。

 でも、どうして見ただけで若葉が巫女って分かったんだ?

 教えて! 東のギルドマスター!


「あそこにいる黒髪の受付嬢が、鑑定の魔法を持っているんだ」


 話が聞こえたのか、黒髪さんがこちらに会釈する。


「はい! 氷の魔法です」

「まあ、氷の魔法とは珍しいですわね」

「み、巫女様!? は、はぃ! 真偽を見極められる魔法でして、皆から重宝されています!」


 あたふたしつつ答える黒髪受付嬢さん。

 って事は若葉、自分が巫女だって正直にいったな?


「な、なにか特典でもあるかと思ったんですの!」

『おう』

「そんな目で見ないでくださいぃぃ」


 氷の魔法は使える人自体が少ないらしく、効果もよく分かっていない。

 氷を飛ばしただとか、真偽を見極められるだとか。

 この受付嬢さんはこの魔法のため、たまに城にも呼ばれて仕事を頼まれる事も有るらしい。


「私は、氷は飛ばせませんけどね」


 そういってた。

 不思議、氷の魔法。

 神からの授かりものって言われているらしい。


 いつもは女性が相手だと手を握ってくる東ギルドマスターも、若葉の手は握らなかった。

 それどころか、出入り口のドアをわざわざギルドマスターが手ずから開けて見送ってくれた。

 敬語だったし、声も普通の大きさだったし、巫女ってそんなに偉いん?


「やっと気づきましたの? わたくし、とっても偉いんですのよ。

 さあ、ニルフさんもわたくしへの態度を改めて・・・」

『申し訳ございません若葉様!

 どうか、どうかこれまでの無礼な態度をお許しください!』

「え、ちょ」

『打ち首!? それだけはご勘弁を!

 お願いします・・・若葉様・・・わ~か~ば~さまぁあぁ~!!!』

「もう許してくださいですのー!!!」

「何、2人でギルドの前で土下座しあってるんですか? 周りの目が痛いですよ」


 ギルドから出てきた黒蹴に言われた。

 あ、若葉が真っ赤になったまま走って行った。

 待って! 置いてかないでー!


「かわいそうに、浮気して逃げられたそうだよ」


 すれ違いざまにおばちゃんの会話が聞こえた。

 違うよ!?


 *


 夕食後、皆でそれぞれの大陸の地図を広げる。

 銀が地図をみて呟く。


「結構回っていない場所があるな」

「では今後の方針を決めましょう」


 ポニーさんの声で、話し合いが始まる。

 結果。


 報告されている石碑は、全部まわりきっていなかった。

 そのため転移できるところを全て回ってから、行商しつつ行った事のない石碑登録をしていく事になった。


 世界樹に行くのはギルドに報告されている石碑を全て回ってから、だ。


 つまり最初の方針と一緒!


 あ、そうそう。ピンキーもちゃんと≪登録≫できたよ!

 言うの、すっかり忘れてたわ。

次回メモ:急遽まとめ


いつもよんでいただきありがとうございます!

ほんのりほんのりブックマーク増えました!ありがとうございまっする!

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