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勇者だったのかもしれない  作者: ぷっくん
世界樹と黒いヤツ
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vs ???

 隊長達が男を囲み、武器を握りしめる。


 3人の中心で男は、大きな欠伸をした。


「舐めてやがるな。そんな態度も、今のうちだ」


 デカい片手剣を隙無く構えた隊長が、つぶやく。

 緊張が高まる。

 欠伸の口が一番デカくなった瞬間、3人が同時に飛びかかった!


「うぜぇアァ!」


 武器が男に届く瞬間。男が叫び、吹っ飛ばされる。


「ちっ。風魔法ですか!」


 ポニーさんが舌打ちしつつ、受け身を取る。と、着地地点から炎が噴きだす!

 慌てて横に転がるが足に傷を負い、すぐに自身にヒールを掛ける、が。


「逃すかぁ。まずは一番弱ェェお前カラダァ」


 つぶやく声が聞こえ。ポニーさんに暴風が向かう!


「舐めんなあぁぁあああ!」


 女の絶叫と共に、ポニーさんを巻き込もうとしていた暴風が、塵となって消え去った。


「あん?」


 男が見た先には、鞭を構えて恍惚の表情を浮かべる、ケモラーさん。


「ふふふははは。私の鞭はぁ、何もかも、切り裂くんですぅ。魔法も、あ な た も」


 そう言って鞭をヒュンっと振るケモラーさん。

 足元に出現した炎が、一瞬で消え去った。


「だからぁ、あなたのその不意打ちも、意味ありませぇん」


 男がイラッとした顔をした。


 *


 俺達は地上の様子を、湖の中から見続けている。

 これ、どういうシステムで見えてるんだろ。


「水を屈折させてるのよ」


 ウィンクしながら水のおねえさんが教えてくれた。


「そういえば」


 と、銀が尋ねる。


「さきほどどうやって男のいかずちを回避したんだ?」

「やばいって思った瞬間にジャンプして、足元周辺に炎を連射して水を蒸発させました」


 なるほど、魔法を詠唱無しで撃てる黒蹴ならではの回避の仕方だ。


「俺達はどうする? 連射は出来ないよ」

「それなら問題ないわよ」


 水のおねえさんが、ピンキーに答える。


「見てて!」


 水のおねえさんに促されて、地上の3人を見る。


 *


 地上では、ケモラーさんが高速で鞭を振って、男が放つ魔法攻撃をすべて無に帰していた。

 鞭に風を纏わせて、触れる物皆切り裂いていく。

 これがケモラーさんの上級魔法と共に手に入れた特技。


「ふふはははははは。きゃーっはっはっはっは!!!」

「くそぉぉゥ、ちっとは喰らえヨォ」


 男はいらついている。

 ケモラーさんの鞭の合間から片手剣を高速で切りつけつつ、隊長が煽る。

 男の全身に、深くは無い傷が増えていく。


「遊びに来たかのような態度で、武器を持っていなかったのがアダになったな!」

「武器なんて無くてもヨォ。これは避けれねえダロォオア?」


 言うと同時に隊長の剣を右手で受けとめ、掴みとる男。

 手から血が噴き出すがニヤリと笑い、もう一方の手を高く上げ、


「くらぇええええええ!」


 高速で詠唱を終え、男から電気がほとばしる。

 そして頭上から太さ5人分ほどはあるいかずちが4人の上に・・・


「いまです!」


 水のおねえさんが叫ぶと同時に、隊長達を水の丸い膜が包み込んだ。

 そこに雷が落ちる!



 ドゴッシャァァアアア!!!



「んなァ!!!」


 男が驚いて叫ぶ。雷は水の膜を通って、地面に分散した。

 その瞬間、男の上を影が通る。


「うそだろぉ」


 男は呆然と言う。足元に、バシャっという音と共に落ちる腕。

 男の、高く掲げていたはずの左腕。ひじから先が無くなっていた。

 傷口は燃え、その炎が男の全身を包み込もうと暴れている。


 男の隙を突いて、ヒールで回復したポニーさんが切り落としたのだ。

 オノに炎を纏わせて。


「武器なんて無くても、なんだってー?」


 隊長がニヤっと笑って、掴まれていた片手剣を手の平に押し付けた。


「!」


 サッと離した男の右腕を、素早く切り落とす!

 が、


「チクショアォオォ!」


 男が、絶叫と共に吹っ飛ぶ。


「ちっ、自身に火魔法をぶつけて逃げたか」


 腕を切り損ねた隊長が憎々しげに言う。

 丸焦げになりつつ吹っ飛んだ男は、残った右腕でヒールを掛ける。

 塞がっていく傷口、炎も消えた。だが。


「腕は返しません」


 ポニーさんが落ちた左腕を踏みつけ、オノで細切れにして燃やした。


 *


『ねえ、あれ俺達ついていけるのか?』


 おれの疑問に、水のおねえさんが答える。


「きっと無理ね」

「やっぱり無理ですか・・」

「だがあのまま隊長達に任せっぱなしと言うのもな」

「銀、なんか怒ってるね。手も足も出なかったから?」


 銀がハーピーを横に置いて、イラついた表情を浮かべている。

 ピンキーが銀をみて、軽く笑う。だがすぐに表情を引き締めて言った。


「俺もだよ」

『俺のハープで3人を回復させるってのはどうだろう』


 提案してみるが、水のおねえさんに首を振られる。


「音を伝えるには、水面から出ないと難しいでしょう?

 あの男は今、あなた達が動けることを知らないわ。

 もし気付かれれば人質にされるだけよ。

 私が居る事も、おそらく気付かれていないでしょうし、このまま不意打ちを狙うわよ!」

「その案は?」


 銀の言葉に、おねえさんは続ける・・・


 *


「俺の腕ェエエ!!!? ・・・クッっはッハ。

 お前は今! 完全に! ぶっ殺す事に決まったアァァ!」


 男が血だらけの右腕で、笑いながらポニーさんを指差す。

 それを、挑発するかのように鼻で笑うポニーさん。


「フッ。相手の力量を見間違えるから、そんな目に会うのよ」


 そのまま睨み合う3人と、男。双方の距離は7m。

 俺達のいる湖とは、20m。


 *


「あいつの雷は、この水に貯えてあるわ」


 水のおねえさんの手の上には、バチバチとスパークする水球。

 水の中なのに電気が漏れない不思議。なんでー?


「水のおねえさんだもの」


 にっこりウィンク。納得した!


「ニルフさんって・・・」


 黒蹴が呆れたようにこっちを見ていた。


 *


「じゃあ、手筈通りに行きますよ」


 黒蹴の言葉を合図に、俺達は湖の外に飛び出した!

 そのまま俺は湖の真ん前で、ハープをスタンバイ。 効果は回復!

 でもまだ弾かない。

 

 水のおねえさんの言葉が蘇える。


「作戦を伝えるわ。

 黒蹴は連射であの場をかき回すの!

 ニルフ、あなたはその隙にハープで全員を常時回復させて!

 そしてピンキー。彼方あなたはこの雷を封じた球を剣にまとわせて、男の動きを鈍らせて!

 最後に銀。彼方あなたはね・・・」


 男が俺達に気付いて振り返る!

 間髪入れず、黒蹴が男に魔弾を連射!!!

 避ける男に隊長とポニーさんが切りかかる!

 その隙に俺はハープを掻き鳴らす!

 そのまま打ち合う3人(片方は素手だが)に、ケモラーさんが鞭をふるう。

 3人ともハープ効果で動きが良い!(回復したからともいう)


 男は身動きが取れない、が。

 わずかな隙を見つけて湖の方・・・こちら側に飛んだ!


「お前が回復してやがるナァ!」


 そのまま俺の方にジャンピング飛び蹴りを放とうとして・・・

 湖から飛び出したピンキーの剣を右手で受け止めた。


「不意打ちのつもりだった様だが、残念だっ・・・タ・・・!?」

「いいや? これで大成功なんだよ」


 ピンキーが笑い、男が雷に打たれたように反り返った。

 それを合図に後ろの湖が不自然に盛り上がり、透明な美しい女性が現れ、水の塊を作り出す。


 それはそのまま大きな竜の形となり・・・動けない男に飛びかかった!


 男は、それをただただ見つめて・・・。飲み込まれる寸前。

 早口で何かを呟く。

 と、


『凍っ・・・た?』


 まるで美しい氷の彫刻。

 今まさに襲いかかろうとした竜は動きを止めていた。


「ざんねんだった・・・ナァ。こいつの命はもらっていくぜ」


 そういうと男は反り返ったまま、俺に痺れたままの手を伸ばし・・・呪文を・・・


「水の大精霊を舐めないで!」


 水のおねえさんの声が響く!

 と、同時に水の竜が粉々に砕け、尖った氷が男の全身に突き刺さる!


 そのまま、湖から新たな水の球を作り出し、男を閉じ込めてしまった。


「ぢぐじょっぉおおぉぉ」


 水の中で、血を吐きつつもがく男。だが水の牢獄はゼリーのようにまとわりついて、壊れる気配はない。


「無駄です。この水の牢獄を破る事は出来ません。息も出来ぬまま倒れるがいいでしょう」

「な”らば火でぇ!」

「させる訳無いだろう」


 男が詠唱を始めると同時に銀が現れ、世界樹の両手剣をかざす。

 なんだ?

 あの両手剣、≪登録≫前よりも青みがかっていて・・・まるで金属のような感じに変化している?


 そのまま両手剣を水に刺す。と、


「ぎぃぃいぅぅうああぁぁぁぇぁあああああ!!!」


 男の絶叫。

 悶えて喉をかきむしる。


「あぁ、オレの属性は水でな。≪登録≫と同時に新たな力を手に入れたんだ。

 水の大精霊によると俺の力は『水質の変化』。

 オレの武器に触れた水は、飲み水にも猛毒にもなる」


 そして軽くフッと笑い、男に言う。


「今のは、猛毒への変化だ」


 男は首をかきむしったまま、血走った目で銀を睨む。

 が、


「ギャぁアあアアッハっハッハッはっハッはッハッハ!!!」


 急に笑い出す。

 息の出来ない水の球に入ったまま口からボコボコと血泡を吐きつつ、笑い続ける。そして。


「楽しイィイイじゃねェエかぁああ!! だが一矢くらい報いないとナァアア?! 

 よぉ~し~ぃ。オ マ エ ニ キ メ タ!!!」


 男が残った右腕で指示したのはピンキー。

 その瞬間、ピンキーが煙に包まれる。


「うぁっ!?」

「ピンキーさん!?」

「なぜ水の牢獄で魔法が使えるのです!?」


 全員、動く暇もない出来事だった。

 おどろく皆の声が響く中、男はさらに笑い続け、そして。


「はじきトベえぇェエ!!!」


 なんと風魔法で水の牢獄もろとも、俺達を弾き飛ばした!


『ぐあぁああ!?』


 全員壁まで勢いよく飛ばされ、体を打ちつける。


(息が詰まって身動き・・・が)


 男はゆっくりとピンキーに近づいていく。

 ピンキーは男の魔法を受けてから、煙に包まれたままだ。


「あぁあああっはははっはっはは! コイツの正体、楽しみだなァアアア?」


 え、正体?

 つまり、元々のピンキーが見れるのか!?

 一体どういうことだ?


 バカみたいにもくもくとした煙が晴れた時、そこには。


 ピンキーの、服だけが落ちていた。


「あん?」


 男が心底不思議そうな声を発する。


 どういうことだ。男も想定外の結果なのか?

 服の中で、何かが動く。


「なんだ、居るじゃねェか」


 男が服を勢いよく蹴っ飛ばす。と、

 そこから勢いよく飛び出したのは・・・


「ギャゥワァアアアアアアン!!!」

「ウガアアあぁぁあアァアア!?」


 1mほどのピンク色の・・・狼!?

 そいつはそのまま男の喉笛にかじりつく!


 男は悲鳴をあげて狼をむしり取り、投げる!


「ちくしょぉぉおォォ、なんだッテんだヨォ! っと?」


 男の周りには、体制を整えた俺達が武器を構えてスタンバイ。


「さっきの茶番の間に、準備させてもらったぜ?」


 隊長が剣に力を込め、言う。

 そして全員で総攻撃!


 中距離から黒蹴の連射、銀と俺の魔弾、それらを避けつつ隊長、ケモラーさん、ポニーさんが武器でボッコボコ!

 数の暴力!


「私を忘れないでよー!」


 と言う言葉と共に放たれた、水のおねえさんの大津波!!!

 待って俺達も流される!


「心配しないで!」


 水のおねえさんがウィンクすると、その水はうねって形を変えた。

 そしてドリルのような形態になって男に襲いかかる!

 隊長達がサッと距離を取る、と。

 男に直撃した水が爆発し、視界が晴れた。


 そこには無様に地面に倒れる、黒ローブ金髪片手男。


 そして、


「どうやら外れのようだな。バカなことしていないで帰るぞ」


 風の大精霊の谷で出会った黒包帯男がいた。


「『お前は!』」


 黒蹴と俺がハモる。

 黒包帯はこちらをちらりと見て、


「生きていたのか」


 と軽く呟くが、すぐに興味を無くす。

 そして片手で黒ローブ金髪片手男を担ぎ上げ、片手を軽く振った。

 と、男達の姿が薄くなっていき・・・


『待て! 逃げるのか!?』


 つい、そう叫んでいた。

 包帯男は興味なさげにこちらを見て、


「用事があるのでな。見逃してやる」


 そういって、完全に消えた。

 残された俺達は、地面に落ちるピンキーの衣服と、その横にいる1mほどのピンク色の狼を呆然と見つめた。

次回メモ:わんわんおー


いつも読んでいただき、ありがとうございます!

次回メモがよく分からない事になってる気がする。


「あらすじ」が上手く書けないんですが、どなたか書い(ry

「勇者だったのかもしれない」の良いポイントはどこかのヒント!誰かヒントをくださ・・・い

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