~第一章~ 気が付けば異世界?
9月14日改定しました。
第一章の説明はまとめに載せたので、第一章の説明飛ばして読むのに最適(かもしれない?)です
まぶしい。
大きな木の葉の間からこぼれる日光が目にチラチラ当たって、すごくまぶしい。
一体ここはどこだろう。
確かめようとするも、久しぶりに目を開けたような感覚と脱力感、なにより疲労感がものすごくて、しばらく起き上がれなかった。
俺はしばらく目を瞑っていた。遠くから、何かぼそぼそと聞こえる・・・。
なんだ?誰かいるのか?
俺は、苦労しながら首を曲げて音のする方を見た。
むぅ、背の高い草むらが邪魔して良く見えない。
顔を動かして分かったが、ここはめちゃくちゃ大きい木の根元だった。
周りには背の高い雑草。
なんで俺こんなところで寝てるんだ?
とりあえず、声の方向を見るか。
動かない体を上にズリズリ動かして、なんとか木の根っこに頭だけ乗せられた。
後頭部ハゲそう。
頭がずり落ちそうになり、首がグキっと曲がった。顎が胸について息がし辛い。
さらに顔を横に向けて、ようやく草の隙間から向こうが見えた。
ここから30mほど離れた開けた場所で、3人の男がでかい木の根っこに座っている。
その人物達に向かって、王族っぽい人と兵士団が紙に書かれた内容を読み上げている・・・?
カミという言葉に一瞬頭がチクリとした。そういえば何か夢をみたような。
誰かと誰かが戦っていて・・・、誰かが叫んでて・・・。砂嵐みたいなのがひどくて良く見えなかったな。
あの夢が、今の俺の状況のヒントになる・・・とか?
考え込んでいると、一番背の高い男が叫んだ。
「うおぉぉぉっしゃああああ! 異世界召喚きたぁぁあああ!」
おぼろげだった夢が、その叫びで散った。
あんにゃろう。
*
慌てた兵士が、叫んだ男を取り押さえようとした。両腕を掴まれ、地面に押し倒されそうになっている。
王が「待て!」と言って制止した。テノールの渋い声が響く。
そのまま王は3人に何かを読み上げ始める。
俺は王のめっちゃ良い声をぼんやりと聞きつつ、召喚者と言われていた男達を観察した。
一人目は黒目黒髪の一番若そうな男。背も一番低い。短髪で日に焼けており、そこそこ運動が出来そうな感じだ。
二人目は銀色の髪を軽くうなじで束ねている。背は2番目。皆から一歩離れた雰囲気を醸し出していた。
三人目はピンクの長髪に狼の様な耳と尻尾が付いている。耳と尻尾とは、妙な装飾品だ。
見た目的に、魔物との交配種だろうか?実際に見たことはないが。
声は男だが、見た目は女の人っぽい。さっき叫んだのはこの男の様だ。
これ以上は遠くて、寝転びながらではよく見えない。あとそろそろ呼吸がやばい。
(とりあえず、王族が駆けつけるほどの人物達に知り合いが居る訳が無いし。
気づかれないようにじっと寝転んでおくかな。体も動かないし)
下手にこっちに気付かれて、盗み聞きしてたとかで不敬罪になっても困る。
俺は力の入らない体を無理やり動かして、頭を木の根から落とした。
ちょっと右の側頭部を打って地面で頭が跳ねたが、呼吸は楽になったな。
涙ちょっと出たけど!
涙も拭かずにそのまま上を見ると、俺の頭の上にあるデカい木の周りを小さな妖精達がフワフワと舞っているのが見えた。
ずいぶん沢山居るな、緑色の小さな妖精。これって確かシルフだっけ。
風をつかさどる精霊だ。違ってたらごめん。
俺の顔よりずいぶんと上を飛んでて姿は良く見えなかったが、ザッと数えただけで3000匹以上いた。
シルフが沢山いる木の下で、なんで寝てたんだっけ。
だめだ、頭がぼんやりしてて纏まらない。
俺が起きてから1時間たった。
あいかわらず向こうでは、王と男達の声が聞こえる。
結構離れてたから内容は聞こえないが。
王族が兵士付きで迎えにいくような重要人物って、どんな奴なんだろう。
(こちらが風下なら、暇つぶしに向こうの会話でも聞けるんだけどなー)
声に出さずに小さくつぶやくと、急に頭上のシルフ達(推定3000匹以上)が一斉に王達の広場に飛んでった。
え!なに?≪シルフの王家襲撃殺人事件≫!?
一瞬頭に浮かんだ言葉を必死でかき消す。
シルフ達は俺に、声を運ぼうとしてくれているんだろう。
・・・もし本当に王を襲撃してたらドウシヨウ。
俺は必死でシルフの生態を思い出す。
確かシルフはいたずら好きの妖精だ。
聞かれちゃまずい話と分かっていたら、ぜったい面白半分に運んでくるはず。
大丈夫、襲撃事件は起こらない!
(ありがとな、シルフ)
いや、シルフかどうかも知らないんだけどね?
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ここは、彼が居る草むらから30m離れた広場。
木の根の上に座っているのは、年齢は近いものの服装や態度が丸っきりバラバラの3人。
1人は少し怯え、1人は興奮した顔で王を見つめ、1人はその場にいる全員を敵だと思っているかのような雰囲気を出している。
そんな3人の前では王が上質そうな紙を掲げ、内容を直々に読み上げていた。
後ろには王直属の近衛兵士団が、一糸乱れず整列している。
王の横には王宮魔道士。城の上級職員ほぼ全員がこの場に集合していた。
それだけ召喚者は大切にされているのだ。
しかし草むらの向こうの彼は、それを見る事が出来ない。
自分たちが出来るのは、音を伝える事だけだから。
この世界で≪風の精霊≫と呼ばれる者達は、半分は彼の為に、半分は面白半分に、彼に音を運び出す。
だって彼はこの世界樹の木に集う数多の妖精の中で、私たちだけの姿を見てくれたのだから。
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次回メモ:枝
読んでいただきありがとうございます!