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勇者だったのかもしれない  作者: ぷっくん
戦闘開始!
28/187

SS ニルフのハープ

「兄ーちゃん、こりゃもう無理だね。」

『え。何とか治せませんか?仲間のおきにいりなんです。』

「うーん、これはもう手の施しようが無い。俺の店の楽器をここまで大切に使ってくれて、逆に礼を言いたいほどだよ。」


 俺は途方に暮れていた。

 森で探索しつつハープを弾いていたら、ハープが真っ二つに折れてしまったのだ。


 ハープが無いと、俺のシルフ達が不機嫌になって探索の邪魔をする。

 そこで俺だけ城下町に飛び、ハープの修理に来たのだが・・・。


 こうなったら店のハープでなんとかするしかない。

 俺は一個一個ハープを試し弾きする。が、シルフ達の気に入るハープは無かった。

 気に入らないハープだと、また暴れてしまう。


 なんだ、何がダメなんだ?シルフ。教えてくれないと分からないよ!


「兄ーちゃん、この練習用のハープとこの店のハープを弾き比べて、何かに気付いたようだな。」


 店の主人の目がキラリと光る。

 俺は『気づいて無いよ、気付いてるのシルフだけだよ』と思ったが口には出さず、思わせぶりに頷いてみた。


「ほう・・・、この音の違いに気付くとは。

 兄ーちゃんは100年に一度、いや1000年に一度のハープ演奏者なのかもしれないな!

 まれに居るんだぜ。音を運ぶシルフに好かれ、癒しの力をその音色に宿す、伝説のハープを弾く者が、な。

 俺はずっと探していた・・・。

 この練習用のハープは、ソイツを見つけるための特別製だったんだぜ。

 こいつを迷いなく手に取った時点で何かを感じたが、今日それが確信に変わった!!!

 俺は兄ーちゃんに賭けてみる事にする!よし兄ーちゃん、これを持って行け!」


 お、なんだ!楽器屋のおっさんが一人で盛り上がって感動して泣きつつ、なんかくれた!


 立派な木製の宝箱だ。丁度ハープが入るくらいの。

 ここに・・・伝説のハープが!?


「これは、一度しか使えない箱。伝説のハープを作った職人が残したと言われるものだ!

 さあ・・・開けるがよい!」


 うぉぉおおきっとさぞかし素晴らしい楽器がここにあるんだな!


 開けると、何も入っていなかった。

 え? 既に使用済みだったとか?


 ・・・よく見ると端っこの方に、小さな小さなメモが入っていた。

 宝箱の意味は!?


 メモには≪1.世界樹の枝をこの箱いっぱいに入れて来なさい。≫と書いてあった。お使いメモ?


「それは以前、伝説のハープを作った職人が残した伝説のメモ。

 伝説のハープを作るには、そこにかいてある材料をそろえるしかないんだ!

 さあ、未来の伝説のハープ演奏者よ!見事材料を集め、俺の元に来るがよい!」


 どこの王様気取りだ楽器屋のおっさんめ!

 伝説伝説うるせえわ! バーゲンセールかよコノヤロー!


 俺は悪態をつきつつバカでかい箱を抱えて城に戻り、世界樹島に転移した。

 城下町でも世界樹島でも箱が目立ってジロジロ見られた。


 はずかしい!おっさんめ!


  *


 世界樹の枝を箱いっぱいにして楽器屋のおっさんの所に戻った。

 どうやって盗ったかは内緒だ!銀直伝の斥候技術とシー君のおかげだと言っておこう。


 枝を盗った時に世界樹のシルフ達がざわめいて若葉が異変に気付き、めちゃくちゃ追い込まれた。

 俺だとバレないように必死で逃げたからバレてないとは思うけど、あれが一番大変だったわ・・・。


 鬼の形相で大鎌振り回すんだもん。超怖いよ若葉。

 あの時は隠れてた雑草ごと首が飛んだかと思った。


 おっさんは満足げに頷いている。当たり前だと言わんばかりに。


 お前がやれよ!


「やはり世界樹に認められたか。

 伝説のハープ弾きは、ハープを弾くだけで木が自ら枝を落とし、鳥がそれを届けたというからな。

 さあ、メモを見るがよい。次の材料が掛かれているはずだ。」


 そんな簡単な方法があったの!?


 若干ショックを受けつつ、メモを読む。

 メモには≪2.スライムを箱に入れる≫と書いてあった。案外簡単ジャン。


 全然簡単じゃなかった。

 何せスライム、箱の隙間から出てくる。

 流動体だからどぅるるるんって出てくる。


 凍らせないと無理じゃね?とか思いつつ、核を抜いてゼリー部だけを箱に入れることで何とか条件を達成した。


 簡単に書いてるけど、大変だったんだからね!?

 楽器屋のおっさんに、スライムにまみれた箱一杯に入った世界樹の枝を見せる。


『これでいいか!おっさん』

「さすがだ!

 伝説のハープ弾きも、ハープをかき鳴らすことにより自主的にスライムが箱に入ったと伝説にある!

 さあ、これで最後だ!」


 おっさんそれ完全に話に装飾入ってると思うよ。

 フィクションっていうやつだよきっと。


 てか俺ハープ持ってねえじゃん!

 他のハープ弾いたらシルフがまた暴走するからその方法使えないし!


 最後のメモには≪3.世界樹島の石碑の石と水を入れる≫とあった。

 今度は堂々と行こう・・・。


  *


 鬼の形相の若葉に不審者と間違われて大鎌で切られかけたが、首の皮一枚だけの被害で済んだ。


 ありがとう銀。君が体術を教えてくれていなければ、今頃死んでいたよ。

 心の中で銀に感謝しつつ、泉の水を入れる。石碑の石も無事ゲットした。


 今、石碑には若葉の大鎌が深々と刺さっている。

 若葉は俺に謝りつつ鎌を抜こうと必死だったので、そのまま帰ってきた。


 俺が転移した気配に気づいて首元に鎌を飛ばしてそのままサックリ逝こうとした若葉なんて知らないもん!


「先ほどの不届き物の気配と同じ気がしたのですわ。」とか言ってたから急いで逃げた。


 楽器屋のおっさんの元に帰ると、メモを渡された。

≪4.そのまま5分振って1日置いておくと完成≫


 ドレッシングの作り方かよ!


 次の日箱を開けると、中にハープが入っていました。どういう構造?


 ハープを取り出してみる。全体的に透明で、すごく華奢。


 三角の木枠は前の物に比べてものすごく細い。絃を張ると折れそうなほどだ。

 だがよく見ると、木の周りには透明なプニプニした物がコーティングされ、ハープを形どっている。

 これが木を守っているようだ。滑り止めにもなって持ちやすい。

 絃は、今まで楽器屋で買っていたような動物の筋ではなく、透明な細い何かだった。

 プニプニしていて弾力があり、しかししっかりと音は出る。


 この透明度と弾力、まるでスライムを乾燥させたような・・・


 考えないことにして、おっさんの元に持っていく。

 これ絃が切れたらどうするんだろう。


 楽器屋のおっさんはめっちゃ感動していた。

 弾いてみろと言われたので弾いてみたが、音も弾き心地も練習用のとあまり変わりが無かった。


 あ、でも絃で指が痛くならないな。これならずっと弾いていられる。


「あの練習用のハープ、音が良かっただろう?

 あれにはな、木の枠の軸部分に世界樹の木材を仕込んであったんだ。

 もちろん今までも欲しいと言う者は居た。

 だが実際に弾かせてみて、あのハープを納得させられる奴が居なかったから売らなかった。

 あの練習用のハープを満足させられたお前ならもしかしてと思っていたが、まさかやりきるとはな!」


 楽器屋のおっさんに握手を求められる。

 おっさんの手はごつごつしていた。武骨な感じだとは思っていたが、商人じゃなく職人だったんだな。


 世界樹の木材を使っていたから、シルフ達が集まって演奏に協力したのかもしれない。


 ちなみにうちのシー君とフーちゃんは、このハープは気に入ってくれたようだ。機嫌よく飛んでいる。


「伝説のハープには名前が付いていたらしくてな。兄ーちゃんもあやかって、付けてみるか?」


 ハープの名前は≪シルフィ≫にしてみた。

 名前を店主に伝えつつ、軽く音を鳴らす。


 集まってきたシルフ達がよろこんで、音と共に回った。

次回メモ:SS2


この後1時間後に地図(東大陸のみ)投稿します。

重いかもしれないので注意してみてください!

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