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勇者だったのかもしれない  作者: ぷっくん
戦闘開始!
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石碑の登録

 次の日、訓練が終わってから俺達はピンキーの部屋に集まる。

 世界樹以外に初めて≪登録≫した武器の性能を確かめるためだ。

 あれから皆なんとなく不安定だったため、延期になっていた。


「皆さん、心配かけました」


 ピンキーが軽く頭を下げる。顔色が良い。昨夜、2人ともぐっすり眠れたようだった。


「僕も、銀さんとピンキーさんが居なければ死んでいました。本当にごめんなさい」

「もういいって言ったでしょ。それにそういうときは『ありがとう』って言ってほしいな」


 ピンキーが笑いながら言う。丁度メイドさんがお茶とお菓子を運んできてくれる。

 さて、本題に取り掛かろう!


 *


 俺達はそれぞれの武器を床に並べる。武器の柄部分には、以前には無かった透明な宝石がはめ込まれていた。ピンキーが分析する。


「なんだろうねこれ。あの時は気づかなかったけど、なんだか力が入ってない石って感じがするよ」

「オレが隊長に見せた時も、同じような事を言っていたな」

「つまりこの石に精霊の力が注がれていって、パワーアップするって事ですか?」

『てことは、大精霊の時は一気に上がるが、小精霊はこれが一杯にならないとレベルアップしないとか?』

「「「『・・・』」」」


 考えてもよく分からない。隊長も、世界樹の武器については伝承が少なすぎてよく分からないと言っていた。

 頼みの綱の世界樹じいさんも最近居ないらしい。


「とりあえず転移が出来るようになってるだろうし、試してみようよ」


 ピンキーが武器を床に立て・・・。止まった。

 そのままこっちを見る。まるでどうすればいいのか分からないかのように。


「どうすればいいんだろうね?」


 心が読めた!じゃない。だよねこれ、どうすればいいか聞いてないよね。

 とりあえず念じてみる?


「うぉぉぉお」


 黒蹴が念じてる。考えは皆同じだった。というか俺と黒蹴が似てるだけか?俺も武器を持って念じる。


 ペカァー。


 なんと武器の石が光り始め、そのまま光が強くなり。俺達はなんと・・・!

 元の部屋にいた。光った以外特に俺達に変化はない。念じた3人で大笑い。


「ん?床見てみろ」


 念じてなかった銀が言う。

 これ俺達に何かあったらすぐ行動起こすつもりだったな、銀。一人だけ武装してるもんなお前。


 最近銀の行動が読めるようになってきた。ほんの一部だけどね。

 失敗して学べ。ただしこっそり安全は守っててやる。なんかそんな感じだ。


 床には宝石から出た光で、世界地図が描かれていた。城で見たのと同じ地図。


 世界樹島を中心に3つのでかい大陸が花びらのように広がっている。

 しかし世界樹島と真反対の海域を中心に、その花びらの下部分がズタズタに引き裂かれたかのような、そんな3つの大陸だ。


 そこに赤い点が2つ光っている。

 1つは世界樹島、もう1つはこの前の森の中の石碑。ちょうど王都から北西、世界樹島と王都の間にある半島にある森だ。

 ピンキーがいう。


「とりあえず転移してみる?安全的に世界樹島にさ」

「でも、これどうやって城に帰ります?」


 黒蹴が重要な事に気付いた。そうだ、俺達この街の近くに転移できない。

 じいさんは確か町やその近くに石碑があるといっていた。これだけ大きい街だ。無いって事は無いはず!


 *


 さっそく次の日、隊長に話を聞く。そのまま王の間に通された。

 いいのか王様、そんなホイホイ時間取れる立場じゃないんじゃないか?

 しばらく待つと、少し息を切らした王様が現れた。


「聞きたいことがあるそうだな!」


 だいぶ嬉しそうな王様。俺達の事を死んだ息子達と重ねているらしいし、頼られたいのかな。

 俺達は昨日気付いたことを王に伝える。


「ふむ。城に石碑は置いてないのじゃ。防犯のためにな。もし何らかの方法で転移できる者が大勢現れた場合、城に直接潜入できる格好のルートになってしまうからな。

 その代り、街に石碑がある。ただその石碑に≪登録≫する方法が少しやっかいでな。

 ギルドランクシルバー以上の信用のおけるものしか登録できないのじゃ。

 おぬし達の事は国民に内緒ゆえ、国の名前を使ってごり押しも出来なくてな」


 そういって、王は大臣の方をチラっとみた。

 ああ、国の力で登録させてくれようとしたけど、大臣に止められたって事か。


「当たり前です!あまり過保護にすると、この子達の為になりませんよ!

 第一、ギルドや町で変な騒動が起こったらどうするんですか!」


 すげぇな大臣、さすがは見た目50歳ほどの恰幅のいいおじさんだな。貫禄がある!王はシュンとしている。


 ん?シルバーって事は、銀は≪登録≫出来るんじゃないか?

 銀を見ると何を言いたいか察したらしく、「皆がシルバーになれば登録する」とつぶやいていた。


 その後王様の案で、城にある世界樹の枝(地下の転移用魔方陣の間にある)とリンクさせてみた。

 リンク?どういう状態になるんだ?と思ったが、実際にやってみるといいぞい精神でやって見る。


 武器を枝に触れさせた途端ピカっと光る。調べてみると地図にある東の城の位置に、赤い点が出現した。

 これで城と森を行き来できる。


 *


 次の日から、城と森を行き来して実践経験を積むことになった。

 朝早くにしっかり装備を着込み、隊長とケモナーさんとポニーさんの3人と一緒に転移する。仲間と認識している人とは転移出来るようだ。


 ちなみに転移方法。地図を出現させ、赤い点の中で行きたい場所を念じる。地図を出す時、初めのような目の眩むような光は出なかった。最初だけの演出ってやつ?世界樹のジジィの陰謀を感じる。


 森では俺、ピンキー、黒蹴の3人が中心となって敵を倒していった。≪魔物寄せの粉≫を使い、寄ってくる魔物を屠っていく。

 カマキリのような魔物の鎌を叩き落とし、キノコのような魔物を炙り、兎のような魔物に雷を落とした。


 ちなみに、あの豹の魔物や強敵の類は確認されていない。国とギルドが総力を挙げてすばやく調査したそうだ。

 城で倒れる兵士を何人も見かけた。兵士さんごめんなさい。


 粉の効果が切れる頃にはすっかりお昼時だ。倒した魔物を捌いてお昼の材料にする。


 初日、黒蹴が青い顔をして倒れる。ピンキーは若干顔色が悪いが、捌いた材料を手際よく調理していった。

 そして昼を食べ、夕方までまた戦う。


 何日目かの頃、黒蹴が昼飯をほおばりながら話す。それを注意するポニーさん。実は戦士系のワイルドな見た目と違い、意外と育ちが良い。意外とか言ったら怒られそうだけど。


「ほれにしても銀さんもニルフさんも、どうしてそうザクザク魔物を捌けるんでふか?」

「話すのは、口の中の物を飲み込んでからにしてくださいね」

「オレは飯の確保にその辺の生物を捌いていたからな。特に抵抗はない」

『俺も特に。きっと銀と同じ理由じゃないか?』


 俺はなんとなく思う。きっと召喚前は旅をしていたんだろうと。

 ケモラーさんからお茶を受け取りつつ、ピンキーが言葉を漏らす。


「それにしても、この武器切れないね」


 さすがお城から直結。お茶を飲みつつ実践演習。優雅だ!

 ごめん、間違えた。


 そうなのだ。登録により、若干魔力が上がって(呪文の威力が上がった)武器の強度も若干増した。

 鉄以上に丈夫でけっこう軽い。だが、刃がついてても木刀並みの切れ味しかないのだ。


 しかも銀は重さで切る大型の両手剣の為、軽いのが弱点になっている。

 前回の戦いのとき、いろいろな武器を仕込んでいたのはその為だった。刃付きの手甲と得意技の投げナイフ。


『俺達も、なにか他の武器の使用も考えた方がいいか』

「オレは使い慣れてる武器を使っているだけだ。初心者がいくつも慣れない武器に手を出さない方がいい」


 あっという間に否定された。

 そうだよね、少し考えればわかる。


 銀は投げナイフを使いこなしているからそれを持っている訳だし、刃付きの手甲も、召喚前によく使っていたのだろう。


 結局登録を増やして、武器の強化を図ることになった。が、今すぐ次の石碑まで旅をするには、まだ実力が心もとない。

 しばらくは森に登録した石碑と、町の近くで実戦経験を積むことになった。


 *


「これがギルドで依頼を受けてからの戦いだったら、今頃ランク上がってそうですよね」

「まぁ俺もそう思うけどね。安全に素早く森と行き来出来る上に、重い荷物を長い距離担がなくて済んでるんだ。文句言わない言わない」

「早く銀に追いつかないとな!」

「「『それは無理です!!!』」」


(黒蹴、ピンキー、隊長、ニルフの食後の会話)

ギルドがシルバーランク以上にしか≪登録≫を許していないのは、信用のおける人物かを見極める為です。

城下町の≪登録≫を持っていると、ギルドマスターが認めた人物という証明になります。

素行が悪い人はシルバーランクでもギルドマスターが≪登録≫を許しません。


次回メモ:村

いつも読んでいただきありがとうございます!

ここら辺から冒険の範囲が広がればいいなぁ(願望)

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