花舞い散る中で(なにもしない)
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天界を目指し、剣を掲げる。
淡く白い光に包まれて目を開けると、見慣れた白い景色が広がっていた。
後ろの白い大樹に目を向けてから、もう何度目かになる天界を進み始めた。
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またいくつかの村を過ぎ、数日もすれば3個目の泉に到着した。
他の村では妙な事件や病などのトラブルに巻き込まれなかった。
到着した《泉》も、水の泉のように精霊が現れて何かを頼んでくる…等ということもなく、普通に《登録》を済ませた。
誰も居ない、悲しげな《泉》。
水辺に立つ俺の髪をかきあげて、優しく、悲しげに風が舞う。
見上げた先からは他の魔界の場所よりも多くの光が降り注ぎ、他の《泉》と同じように、水辺には多くの花が咲き乱れていた。
そして、散った花びらを魔界中に届けるかのごとく、《泉》の中央、ちょうど広場の真ん中辺りを狙うように、天井から突風が吹き下ろす。
風に撒かれて天に舞い上がる、色とりどりの花弁。
そう、ここは風の《泉》。
普通ならば近づく事も困難を極めるであろう突風が吹く広場。
しかし不思議なことに、《泉》周りに広がる広場には風の影響はほとんど無く、気持ちのよいそよ風が£§ξ。
ユ「ちょお、メッチャ腹へったんやーけーどぉー」
ピ「待っ、突っつかないで由佳」
二『あーあ、字がグニャッてなった』
ピンキーがノートに日記書いてるのを横で見てたら、ユーカの邪魔が入った。
まぁ、《登録》が終わるなり日記にここの景色をスケッチしたり文字で書いたりしはじめてからかなり時間が経ってるもんな。
太陽から時間を測ることができないけど、腹具合の感じだと晩飯辺りの時間を過ぎてるっぽかった。
そりゃユーカも腹減ったって訴えるわ。
ユ「ねー、まーだー?」
ピ「痛い痛い痛い」
ユーカ、ピンキーが動くまで腕を執拗にブシブシ刺していた。
あんなに刺してるけど、ユーカは人差し指、痛くならないのか?
今日はいつも通り野宿だ。
花を避けるように広げた寝床と馬車、そして広場の周りには魔物避けの水をまいている。
その中央には たき火。
食事の準備を始めるピンキーの手には、分厚めの四角い大きい石版が。
ピンキーはそれを持ったまま、俺のほうに歩いて来た。
ピ「さあニルフ、今日も頼むよ」
二『おう!』
俺は元気に返事をして、石板の横に付いてる棒を握る。
ピンキーは石板に手をかざして頷くと、その上に鍋を置いた。
この石板はピンキーの発明品だ。
前に作った《魔力を流すとその人の属性の魔法が出る小皿》を、もっと使いやすくしようと土をコネコネしてたら出来たらしい。
棒を握って魔力を流すと、石板が熱くなるっていう道具だ。
出来たときピンキーは大喜びで魔力を流して全員分のステーキを焼こうとして、料理の途中にぶっ倒れた。
魔力切れだった。
うちのPT、人数多いもんな。
どうやらずっと熱くしとくには、魔力を流し続けてないといけないらしい。
その後で『料理をしてる間、俺がハープを弾いて魔力を回復させようか?』って聞いたら、「それよりも常時魔力が回復するニルフが魔力流してほしい」って言われて、そこから俺がずっとこれの担当だ。
ピ「強火でね」
ピンキーが、鍋に四角く切った肉を入れた。おいしそうな湯気が立ちのぼる。もぐぅ。
食べちゃダメだって、怒られた。ごくん。
向こうのたき火では、木の棒に刺さった魚をユーカがひっくり返してる。
肉に火が通った所で、ピンキーが野菜を入れた。
ちなみに、さっき何故ユーカがピンキーを無理矢理料理に呼んだのかというと、この世界の食材を使ってちゃんとしたニホン食を作れるのがピンキーだけだからだ。
なんでも今日、ユーカには無性に食べたいニホン食があるらしい。
と、たき火に乗せていたやかんから湯気が立ち上る。
ピンキーはお湯を持ってきて、鍋に入れた。
ピ「じゃあ、後は中火で」
ピンキーはそういうと、鍋にふたをかぶせて馬車の方に歩いていった。
材料を取りに行ったんだろう。
このピンキーの作った道具は魔力を流す量で熱さが変わった。
弱火は『んー』で、中火は『んん”-』、強火は『ぶん!』って感じ。
魔力を流せば熱くなるんだったら、武器に出来ないかなって思ったんだけど、材料が土だったから無理だった。思ってた以上に脆かった。
熱くしてシバけば大ダメージ間違いなしだと思うんだけどなぁ。ダメージなくても敵が怯ひるみそうだし。
若〔あら!?いけませんって、きゃあ!〕
横から若葉の悲鳴が聞こえた。
チラッと見ると、五つ子達が若葉を指で突っついている。
珍しいな、今まで若葉に興味を持った事なんて無かったのに。
二『さっきのユーカの真似かなぁ?』
若〔見てないで助けてくださいですわ!〕
二『っていっても手ぇ離せないし。痛いのか?』
若〔いえ、痛みはありませんわ。というより、視覚以外が無いような?〕
二『なんでそこあやふやなんだ?』
とかやってるうちに鍋がいい感じに煮えてきた。
鍋を見に来たピンキーが何種類もの調味料を入れた。ピリッとした香りが広場に広がる。
ピ「味見してみる?」
ピンキーがスプーンにすくった鍋の中身を渡してくれた。ぱくっあっつぅ。
二『でもうまい!』
ピ「でも?」
俺の言葉に笑いながら、ピンキーは鍋の中身を皿によそう。
よそう時には弱火にするんだったな。
最後に石板に付いた棒の先から伸びる紐を手首に巻けば、ご飯の準備は完了だ。
この紐に向かって ん? ってくらいに魔力を通しておけば、食べ終わるまで鍋は暖かいままだ。
ピ「さあ皆、カレーが出来たよ!」
黒「お腹すきましたー!!!」
「「「「「「「「「「「『いただきまーす!!!』」」」」」」」」」」」
ユ「やっぱこれやわぁ!」
カレーを食べたあと、いつもは馬車で寝ていたけれど、今日は花にかこまれた広場に寝ころぶ。
すぐ近くで燃える たき火の側では、ピンキーが見張りをしながら日記の続きを書いている。
花の香りに包まれ眠りに落ちる瞬間。
そういえば、今日はシルフ達を見かけてないな、と、思った。
※
子供達のはしゃぐ声が遠く聞こえる。
売り子が朝食を売り、女性達がかしましく噂話をする。
朝の雑踏に耳を揺さぶられ、ゆっくりと目を開けた。
ボロ部屋の中だった。
あれ? 昨日宿屋に泊まったっけ?
「起きたか、運命に導かれし仲間達よ」
聞きなれない声。
飛び起きて部屋を見回す。
壁の隙間から漏れ入る光に照らされて、そこだけ白く浮き上がったベッドの上には。
「我は、そなたらの集いし この日を待ちわびていたのだ」
干し果物売りの、少年が居た。
次回メモ:果物
いつも読んでいただき、ありがとうございます!
最近ゲームで師匠と呼んでる人がこのサイトで小説書きはじめたので、続きが楽しみでヒャッホイ!
(ちなみに女子力の師匠)