表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者だったのかもしれない  作者: ぷっくん
地面に向かって突き刺され!!
184/187

病気の村 3

 こっちのテントでも咳き込む人とか結構いたので、解毒とか体力回復とかの魔法を乗せたハープを弾く。

 何人か起きた人が患者用の小屋に向かってったきり静かだから、心配ないとは思うけど、しっかりと音は向こうの小屋にも届くようにシルフ達に頼んでおいた。


 後は、ちょっとにおいがこもってたからテントの端っこをたくしあげて空気を通したり、起きた人のために川に水汲みにいったりした。

 ほら、俺結構頑張ってるでしょ!

 それでもピンキーはまだ出てきません。誰かほめて。


二『お腹すいたなぁ』

若〔そろそろ夕食時ですわ〕

二『軽く作っとくか』

若〔どいてくれますかね?〕

二『・・・ムリダネ!』


 ご飯作ろうにも、台所はオッサン達が占拠してて近づけない。

 ちなみにさっきの青年は看病に戻ってった。

 休憩していた他の人達も出ていって、今はほとんど誰もいない。

 しょうがないからハープを弾いて気をまぎらわす。

 どっかから「うるせーぞ、他所よそでやれ!!!」って怒鳴り声がしてきたけど。

 他所で弾いたら、患者達死ぬぞ?


 ってあれ? 外がなんかうるさい?

 たくしあげたテントの隙間から顔を出すと、対策本部のテントの辺りが騒がしくなってるのが見えた。

 徐々にオッサン達が集まってきてる。

 なんか・・・集まり方が町の広場とかによく居る鳥みたい。


 ギーギー喚きつつ集結するオッサン。

 美味しいエサでも撒いてあんのか?

 あ、ピンキー出てきた。

 同時に、一緒に出てきたレモンちゃん達が、彼らを取り囲むオッサン達を押し退けて走ってどこかに行った。

 置いてかれて怒るオッサン達。


 その横では、ピンキーがにっこりと怖い笑顔で筋肉隆々の抹茶色のマッチョにうなずいてる。

 俺に背中を向けた状態の抹茶色のマッチョのそばには、苦い顔をしたハゲと棍の男が居た。


 どうしよう、会話の内容をシルフ達に運んでもらおうにも、今シー君とフーちゃんには音を広場の患者さん達に届けてもらってるし。

 どっちにしろ聞いても分からない気もするし、まぁいっか!


 聞き耳たてる若葉、怒るマッチョ、笑うピンキー。

 俺だけ遠い。

 いいもん!こわいオッサン達いなくなったら、皆と合流して仲間に入れてもらうもん!


 フワフワと飛んできたフーちゃんが、若葉ハープにくっついてまた飛んでった。

 しばらくすると話がついたのか、マッチョはオッサン達を引き連れて帰ってった。

 一瞬こっちのテントチラッと見てたけど、すんげー怖い顔してたな。地顔か?


 お、オッサン達居なくなると同時にレモンちゃん達が帰ってきたぞ。

 後ろに見覚えのない人達を連れている。

 全員が籠を持ってて、落ち着いた様子でピンキーとしゃべっている。

 ざわざわとした声がこちらまで届いていた。

 

 そのあとレモンちゃん達を先頭にして、対策本部と台所用テントに別れて入っていった。

 村からの救援かなぁ?


若〔きっとそうでしょう。断片的でしたが、風の小精霊様が会話を伝えてくれていましたし〕

二『待って俺には届いてないんだけど!?』


 どういうことだいフーちゃん達!!?





 ―※ピンキー※―――――――――――――――――――――

 急に押し掛けてきた村の権力者を追い返した頃には、すっかり夜の時間帯になっていた。

 あいつらは怒って帰っていったが、一応こちらの要求を飲ませることには成功したから上々だね。


ピ「それにしてもさ。イチャモンすぎない?」

サ「切り捨ててきましょうか?」

ピ「それは急ぎすぎかな?」


 あんなのでも、村を今までまとめてきたようだしね。

 腕を回して凝りをほぐす。と、そこにポニーとケモラーが戻ってきた。

 

ピ「お帰り二人とも、どうだった?」


 労いの言葉をかけて、先を促す。

 二人には随分前に村に入って調査をしてもらっていた。

 勿論、あの権力者には内緒で。


ポ「村の北側を中心に症状が重いです。離れるにしたがって軽症。死者は北部のみに出ています」

ケ「でもなぜか、急に東側で重症患者が出てるんですよねぇ」


 やはり感染症か?

 村全体に広まっていないということは空気感染ではない?

 しかしあの権力者は、早期に病人の多い地区への人の行き来を止めていた。風魔法で空気の流れを調整すれば、空気感染でもある程度は押さえられる、かもしれないし。

 皮肉なことだが、あの権力者の対応のおかげで被害が最小限に押さえられていた面もあるかもな。

 被害者にとっては地獄だが。


ピ「急に東に飛んでるのが不思議だな。保菌者がそっちに行ったのかな?」

ポ「当時は人の出入りはある程度はまだあったようです。しかし病人自体の移動は無かったと」

ピ「その場所は、北部に近いのかい?」

ケ「いえー、南部ですねぇ」


 では他の要因か。

 地球での感染症を考えると・・・中世のペストでは井戸に排泄物の菌が混ざったのが大流行の原因だったと聞いたことがあるような・・・。


ピ「他に、何か気づいた事は?」

ポ「双方共に井戸が古かった程度ですね。村人によると、老朽化した井戸の補修中らしく、あの地域は最後に行う予定だったと」

ピ「なるほど。ありがとう二人とも。

  よし、地下の水の流れを見てみよう!

  川は・・・東から北に流れているんだよね、で、俺達が居るのが村から見て西側、と。

  サイダー、キラ子、得意の水魔法で地下水の流れを読めるかい?」

「「やってみます!」」

ピ「サイダーが村に行くから、広場の護衛は黒蹴達に・・・あれ?二人共どこだい?」

キ「対談前に森に入っていくのは見えたんですが・・・」

レ「ご主人様に、料理に使う薪拾ってるように頼まれてたものね。その後は・・・ごめんなさい、受け取ったあと何してたのかは見てないわ」

キ「お昼ご飯のときは居ましたよね」


 と、そこに誰か近づいてくる気配。

 瞬時に気を張るキラ子達。

 だが、素早く振り向いたレモンが一瞬ホッとした表情を浮かべた。


レ「あ!二人ともどこ行ってたのよ。探してたんだから!」

黒「すみません皆さん。ちょっと森で迷ってて。あ、でもいいもの見つけましたよ!」

キ「いいもの、ですか?」


 近づいてきたのは黒蹴と由佳だった。

 ――――――――――――――――――――――――――――――



二『ねー若葉、皆何話してるのー?』

若〔なんか、ユーカさんが水飲んだら消えたとか言ってますわ〕

二『え、でもさっきユーカ来たって言ってなかった?』


 皆が集まってるのに俺たちはまだテントにいた。

 なんでかっていうと。


「妙な動きをするなよ? 外に異変を悟られないよう、今まで通り、曲だけを奏でていろ」


 耳横で響く、低い声。

 ほとんど人の居なくなったテントの中で誰にも気付かれずに、人質に取られていたから。

 オッサン、俺に逃げられないよう密着して魔法で脅してくるのはいいんだけどさ。

 声と共に首筋に生暖かい息がかかるんだよな。

 ちょっとくさい。


若〔まさかテントに残ってた方が全員、あの御マッチョ様の仲間だとは思いもしなかったですわ〕

二『だな』

若〔ハープだけでも弾かせてもらえてよかったですわね〕

二『ね!』


 テントには三人のオッサンがいる。

 一人は俺の監視で、他の二人はテントの中の荷物を漁ったり、外を見て(おそらく)ピンキーの様子を探ってる。

 この二人は結構若い。オッサン達の息子ってところ?

 外にはもう一人、テントの前に仲間が居るっぽくて、休憩に来た村人を言葉巧みに追い払ってる。掃除中って声がさっき聞こえてた。

 ちなみに女の声だった。


二『んで、なんで俺が人質なんだ?』


 俺は息が臭いオッサンに聞いてみる。

 オッサンは最初鬱陶うっとうしそうな顔して、聞きもしなかったが、しばらくすると暇になったのか答えてくれた。


臭「ふん。その道具の種族はもろいと聞いたからな」


 その情報は、昼間にお昼ご飯を持ってきてくれた、あの上品なおばさんの言ってたやつだ!

 まさか、あのおばさんもコイツらの仲間・・・!


臭「病人に加担していた奴が昼間ベラベラしゃべってたんだよ。

  みなさん、あの方達は弱い立場なのですから見守ってあげましょうーってな。

  あのババァ、村の旧家かなんか知らねえが偉そうにしやがって」

「そうそう、弱い奴らなんてほっとけばいいのさ」


 スパイの若者二人もオッサンの言葉にギャハっと笑って賛同した。

 てかこの二人、暇すぎてカードゲームっぽいの始めたぞ。

 外の監視とかしなくていいのか?


「暇だな。少し寝るか」

「向こうが動かない限り俺達も報告する内容がないしな」

「明け方まで暇なんだ。寝とけ寝とけ」

「後ヨロシクーオッサン。起こしてくれよ」


 そういうと、ゴロリと寝転び始めた若い二人。

 オッサンはそれを見て、ぽつりと呟いた。


臭「どうせ原因も治療法も分かんねぇんだ。あいつらもすぐに出ていくさ」


 小さく聞こえたそれは、なぜか少し諦めてるように聞こえて。

 言葉と共に吐き出されたため息は、やっぱり臭かった。






 ※

 






若〔・・・という事に、なっていますわ。

  実害はありませんので、もうしばらくこのままでも大丈夫かと〕

ピ「分かった。その人、たぶん胃が悪いんだね。ストレスかな?」

若〔・・・ピンキーさん?〕

ピ「ごめんね、冗談だよ。

  こちらは病の原因が見つかったところだけど、まだ直接的なところまでは行ってない。

  引き続き、ニルフには解毒の魔法をお願いしておくね」

若〔伝えておきますわ〕

ピ「ありがとう。

  それから、シルフ達・・・シーくんとフーちゃん。

  二人にも、会話を伝えてくれるお礼を言っておかなくちゃね。

  俺には見えないから、頼んでもいいかな?」

若〔大丈夫ですわ。それで、風の小精霊様には伝わっていますから」

ピ「ならよかった。それじゃ、もうしばらく魔法の維持、頼んだよ」


 若葉がしばらく静かになったあと、小さくシルフに礼を言った。

 そこを見計らって、声をかける。


二『なんて?ピンキーなんて?』

若〔えっとですね、そのまま弾いててくださいと。あ、解毒でお願いしますわ〕


 その返事に、俺は身動ぎした。

 そうじゃないって!

 知りたいのはそうじゃなくって、外の様子!


二『若葉ぁ!』

若〔わかってますわよ。そんなに騒ぐと不審に思われますわ。

  では、外の様子ですが・・・病の原因が判明したそうです〕

二『マジで!?』

若〔ええ、ですから座り直して、ハープを弾いてください。監視役達が起きてしまいますわ。

  ・・・まず、先ほどのユーカさんの事ですが。

  ユーカさんの飲もうとした水が、口の中から消えたそうですわ〕


 ユーカは火の大精霊に好かれていて、有害な物を摂取しようとしたらなんか、燃えて消えるらしい。原理は知らん。

 

二『それってあの、普段使ってる水瓶の? ってことは、まさかマッチョの仲間のハゲ達が、毒を!』

若〔あ、いえ、飲んだのは水瓶ではなく、村の井戸の水だそうです。黒蹴さん達、どうやら燃料の枝を探してるうちに、裏山から村に入っちゃったようでして〕


 絶対それわざとだろ。

 絶対遊びに入っただろ。


若〔それでピンキーさん達が二人の持ち帰った水の成分を調べたところ、毒物らしきものが検出されたそうでして。

  サイダーさん達の調べていた、地下水の流れと照らし合わせて、それが原因だと突き止めたようですわ〕

二『ふぉー、なんかスゲエな。だから解毒魔法を中心に使えってことなんだな。

  ピンキー達、どうやって毒物のケンシュツとかしたんだろ』

若〔聞きます?〕

二『んー』


 たぶん聞いても、分かんないだろうな俺。


若〔分からないだろうと思ったので、次に進みますね〕


 ばれてた。


若〔それでですね。テントに彼らの仲間が居ることを伝えまして。

  彼らから聞き出した情報を伝えておきました。

  ピンキーさん、「明け方までに毒物の出所を調べあげて決着をつける!」と張り切ってましたわ〕

二『言ったんだな、あの情報を』

若〔ええ、しっかりと〕


 あの後。テントのスパイの若者二人が寝た後。

 オッサンに『明け方何があるの?』って聞いたら、「皆が起きる直前に奇襲かけて物資を全て奪い去る計画がある」って答えてくれた。

 若葉はそれをピンキーに伝えたんだな。シルフの二人に、こっそり声を運んでもらって。 

 ちなみに若葉と俺の会話も、ヤバイやつはシルフ経由だ。

 

二『でもなんで教えてくれたんだろ』

若〔わたくし達が何を聞いたとしても、さほど驚異にはならないと判断されたのでは?〕


 なんかそれ、むなしいな。

 あー、腹減った。この三人は腹減らないのかな?








 ―※ピンキー※――――――――――――――――――


 地下に流れる井戸。

 そこから毒物が検出された。

 井戸に使われている水の流れを辿たどっていくと、一本の地下水脈が枝分かれして、村全体に行き渡っている事が分かった。

 村では、その水脈の上に井戸を堀り、生活用水や飲料水にしている。

 そして、枝分かれしたそのうちの一本の地下水脈。

 その近くには・・・


ピ「川があるね。川の水が原因かな?」

「そればないと思います。この川の水は、井戸が掘られる前まで飲食水としても使われていました。

 利便性のために井戸を開発しただけなので、川に毒は含まれていないはずですが」


 俺の言葉にそう疑問を返したのは、紫色の体色をした女性だった。

 看病を一手に引き受けている彼らの代表者と、患者達に紹介されたので、村の情報を聞くために来てもらっている。

 どこか上品そうな雰囲気を持つこの女性は、村の旧家の出身だそうだ。

 そして、驚くべき事に、あの村の代表者を名乗るマッチョ男の妻らしかった。

 つまり、村長夫人。

 病人を見捨てるような命令を出した夫に怒りを抱いて、家を飛び出したらしい。


 俺は、そんな彼女の疑問に答えるために、水脈の書き込まれた村の地図の、ある部分を指し示した。


ピ「ほら、ここを見てください。東の一部。ここだけ水脈が独立しているのに、北側と同じ症状が出ています。

  この二つの地域に共通するのは、川が近くにあるということです」


 不安そうに頷く夫人。さすがに俺も数ヵ月もの間、川に毒を流し続けてる奴がいるなんて、ちょっと信じられないが、一度調べてみる価値はある。

 だって、村を全滅させたいなら、初めから地下水脈の始流近くの井戸に毒を入れればいいんだし。

 北と東のこの地域だけを壊滅させたいって理由も、聞き取りしても特に浮かんでは来なかった。


ピ「そして、井戸を最後に修復する予定だった地域とも聞きました。

  つまり、老朽化した井戸に・・・」

ケ「出ましたよぉ!川でしたぁ!村の近く、中流あたりから出ましたぁ!毒は川が原因でしたぁ!」

ピ「毒を含んだ川の水が混ざり混んだって事ですね」


 疲れた顔をしていた夫人が、驚いたような、ホッとしたような表情を浮かべる。

 そして、花のように微笑んだ。


ケ「でも不思議なんですよねぇ。上流ほど毒物は強く出ているんですが、下流側は毒性が低いんですよぉ」

ピ「現場を見れば、分かるかもね」




キ「御主人、分かったわよ。この、黄色い虫が毒物を溜め込んでいるようなの」

老「こいつぁ、昔っからこの辺にる、吸血する虫じゃて、毒はネェはずなんだがなぁ」


 夫人と共に川辺に向かうと、レモンと村の老人が待っていた。

 

ピ「毒は無いのに、川と同じ毒を持っているのか」


 俺は丈夫な手袋をはめて、虫を摘まんで観察する。

 きゅっと体を押すと、針のような口から色が分からないほど薄い液体が染みでた。

 もしかすると。


ピ「この川の上流は、山だっけ」

レ「うん。朝、銀が入ってった所」

ピ「・・・追うか、何か掴んでるかも」


 水面を見ると、所々から波紋のような模様が現れていた。


老「それはな、地下水が湧き出しているんじゃよ。深く深く地面を流れてきた水がな、この辺りには豊富でな」

ピ「なるほど、だから下流ほど毒が薄まっていたんだな」


 老人に礼をいい、広場に戻る。

 皆に指示を伝えたあと、山に入る準備をしていると、銀が帰ってきたと連絡が入った。

 すぐにテントから飛び出すと。

 広場の半分ほどを占める巨大なナメクジのような半透明の魔物の死骸と。


銀「殺気を飛ばす妙な奴を仕留めてきた」


 どうやら今日一日コレと戦っていたらしい、それでも微塵も疲れを見せない、銀が立っていた。

 所々服や皮膚が溶けているけど、元気そうで良かった。





黒蹴「それより、どうやってそれもって帰ってきたんですか」






 ※





 一晩中の調査の結果、どうやら銀の仕留めたあの魔物が川の汚染の元凶だと判明した。

 この辺りには生息していなかった魔物らしく、流れてきた魔物がたまたま裏の山を気に入って住み着いたところ、あの山を始流とする村近くを流れる川に、ナメクジの持つ毒が流れ込んでしまった、というのが、真相らしい。


 吸血虫が毒を持っていたのは、あの大きなナメクジの体液を吸ったからのようだ。


 村の物知りの老人によると、あれはスライムの一種らしい。



 そして翌朝。

 銀の案内を頼りに山に入ると、小型のナメクジが沢山蠢うごめいていた。

 どうやらあの魔物、卵を身ごもってここに来たらしい。

 あまりに数が多すぎるので、銀・黒蹴・ユーカが山に潜むナメクジ状の、毒をもった魔物を倒していた。

 今後は定期的に、村人が狩るらしい。


 川の水はもちろんの事、修復が終わるまでは、古井戸は使用禁止になった。




 ニルフの解毒により、患者の容態もすっかり安定し、翌日には皆が起き上がれるようになっていた。

 食欲の出てきた患者達のために、俺や親衛隊が特製の食事を作る。


 元気になった子供達の相手は、五つ子達がしてくれている。

 

 

レ「さあ! 御主人様特製の治療食ができたわよ!」

キ「な、並んでくださいね!」

ラ「あらあら、こぼしてるわよ?ウフフ」


 元気になり始めた体は、食べ物がよりおいしく感じるのだろう。

 我先にとおかわりに押し寄せた患者達は、おかわりをよそう三人に優しく言われて、顔を赤らめて並んでいた。

 実はこの治療食。以前ニルフが手から出していた、回復の魔法を閉じ込めた万能薬を入れている。

 味も甘いためか食事に入れても違和感がなかった為、俺が重宝する調味料の一つになっていた。


 今もまだ、回復の効果を込めた優しいハープの音が響いている。

 

 そのおかげもあってか、昼間に差し掛かる頃には、ほぼ全快していた。

 これならば、俺達が居なくても大丈夫だろう。

 皆に引き留められ、礼を言われつつ俺達は村を後にした。


 結局村を歩くことはなかったけれど、優しい人々とも出会えたし、救えて良かったと思う。






 ・・・村の権力者の襲来?

 広場のど真ん中に置かれた巨大ナメクジにビビって、帰っていったんじゃないかな?

 


 俺達は目指す先に進んでいく。

 今日も、見えない馬車を走らせて。





ユ「あれ、若葉ちゃんは?」

ピ「・・・忘れてた!!!」

 ―――――――――――――――――――――――――――――






 


「にーちゃ、次、さっきのアレ弾いて!」

「ダーメー!あのかっこいい曲ひいてもらうのー!」

「違うぜこの人、体はにーちゃんだけど主導権はねーちゃんなんだぜ!ってことで ねーちゃん、ロックを頼むぜ」

「「「「えー!!!?」」」」

若〔ハイハイ、順番順番ですわ〕



 若葉がその場を押さえて、俺は回復と状態異常回復の魔法をいい感じに交互に混ぜながらハープを弾く。

 朝起きると俺たちを監視してた三人はなぜか居なくなってて、代わりに病気で昨日まで寝てた子供達がテントに押し寄せていた。

 子供達にしがみつかれて、身動きが取れない。

 

二『てかおかしいぞ!昨日こんなに子供居なかったはずだ!』

若〔村の子供達が集まってきた、とかですかね?〕

「ここ、おれたちのひみつきちにするんだー!」

「おまえ音楽じょうずだから、こぶんにしてやる!」

「やだー、あれ弾いてもらうのー!」

「ちがうって!つぎおれだって!」

「ぎゃーん!」

二『うるせー!!!』


 これ、いつまでやってたらいいんだろうな。

 早くみんなを治して、旅立とうぜピンキー!

次回メモ:どれにしようかな


いつも読んでいただき、ありがとうございます!!!

年末年始忙しくてすいません!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ