表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者だったのかもしれない  作者: ぷっくん
地面に向かって突き刺され!!
180/187

vs三人組 ザンアクロス 2

 声に驚いて見上げた先には、ザンアクロスがいた。

 ゆっくりとこちらに歩み寄るその姿を、転んで呆けた気持ちのままでぼんやりと見つめる。

 

 そのとき、頭上からポトリと木屑が降ってきた。

 コツンとした衝撃で、正気に戻る。


若〔!!!  ニルフさん!〕


 急いで身を起こし、家を背に横っ飛びで距離をとる!

 そのまま走って逃げよう!


 しかし家の角からモファッとした影が覗いて飛び退いた!

 そこから現れたのは、プックだった。

 挟み撃ちか!



プ「おいつめた!ザンさんすごい!」

ザ「えっへん!」


 楽しそうなプックと胸を張るザンアクロス。

 その様子に、若葉が悔しげに言葉を漏らす。



若〔そういえばプックは犬でしたわね!匂いで追われましたわ!〕



 しかし。それを聞いた二人はキョトンと見つめあった。



プ「え?」

ザ「すごい! プックさん、そんなことできるの?!」



 驚いたようにプックを見たザンアクロス。

 に、プックは申し訳なさそうに、体を縮ませた。

 


プ「プック・・・花粉症・・・」

ザ「花粉症・・・」

プ「プック、常に鼻つまってる・・・」

ザ「鼻詰まり・・・じゃあ臭いは」

プ「わかんない・・・」

ザ「そっか・・・」

ニ『なんかごめん』

若〔なぜ謝ってるんですの・・・〕



 いや、なんか気まずくてさ。

 微妙な空気に、適度な距離を開けて、プック、俺、ザンアクロスは立ちすくんだままだ。

 さっきまでの張りつめた雰囲気どこいった。



若〔そ、そういえば、何故あなた方はわたくし達の隠れ場所が分かったんですの?〕


 若葉も気まずかったのか、強引に話題を変えようとしてる。

 けどその話題、向こうの作戦とか能力とか色々バレそうだから答えてくれない気がするんだけど。



ザ「この家のドアノブの埃がとれていたから!」

プ「うん!」


 あ、答えてくれるんだ。

 案外良い人達なのかもしれない。それか底抜けの素直な馬鹿か。


若〔それを見抜いたのはそちらのザンさんというかたで?〕

プ「うん!ザンさんすごい!」

ザ「えっへん!」


 うん、気まずい雰囲気はどっか行ってよかった。

 いやよくないか。プックだけでも落ち込んでる間に逃げればよかった。


 

ザ「プックさんも元気になったことだし、いこうか!」

プ「うん!」


 元気になったと同時に膨らむプック。やっちまったぜ!


 俺は家とは反対側・・・通路側に身をひるがえす!

 銀とかだったら家の壁砕いて逃げるんだろうけど、あいにく俺には一発で確実に壁割るような力は無い!!!

 プックが俺に飛びかかる!かわしたところをザンが追い討ちをかけようとして・・・何かに、バクリと胴を噛まれたまま、遠ざかっていった。



二『・・・あれ?』

プ「ん?どしたん・・・ザンさんいない?!」



 キョトンとしたプックを置いて走り出す。

 プックと俺との追いかけっこが始まった。





 ※



 


 =※ピンキー※================

ザ「いやー、完全に撒いたと思ったのに^^」


ザンアクロスの胴を噛んでいるのはピンク色の巨大な狼。


ピ「俺の鼻をなめないでよ?」


 少し前までザンアクロスと対峙していた、ピンキーだった。

 そのピンク色の巨大な狼のような姿をながめ、鼻をなめるのはいぬの特性だろうに、と呟いたザンアクロスは、腕を動かそうとするも、胴ごと両腕もその歯にはさまれているために身動きがとれない。


ザ「あれ、あなたでしょ」


 何かを問いかけるザンアクロス。しかしピンキーは無言を返す。


ザ「仲間を囮にするなんて! あの人かわいそう!」

ピ「どうする?降参する?それとも噛み砕かれる?

  俺としては、残りの二人のどちらかから聞ければいいんだけど」


 さらに続けるザンアクロスの言葉を完全に無視してピンキーが言ったのは、普段の彼からは聞かないような内容だった。

 そんな言葉に、ザンアクロスは んー、と考え込む。

 その様子は、今まさに噛み殺されそうになっているとは思えないくらいに穏やかで、ピンキーの神経を逆撫でする。


ザ「噛みついているはずなのに、器用に喋るね」

ピ「・・・ふざけているの?」


 みしり と音をたてるザンアクロスの体。

 に、彼は苦笑した。


ザ「しょうがない。これだけは見せたくなかったんだけど」

ピ「なっ!?」


 いうなり。

 その口から、ザンアクロスの姿が消えた。


ピ「どこに・・・そっちか」

ザ「お?」


 しかし狼の嗅覚をもつピンキー。

 すぐに姿を見つけ出す。

 が。


ザ「でも消えるけどね^^」


 その一言を残して、またしても姿をくらますザンアクロス。

 追おうとするが、サッと岩に隠れては予想もしないところから現れて中々にとらえられない。

 しかも思いもよらないところからブーメランが飛んできて、意識を削がれる。

 ブーメランにザンアクロスの臭いが付いているのも、またやり辛さを増していた。


 その熟練のハンターのような攻撃に、じわじわと体力と気力を削られていくピンキー。

 そのとき。

 後ろから、声をかけられた。


ポ「ピンキーさん!」

ピ「ポニー? そっちは大丈夫?」


 追いかけるうち。

 いつの間にか、竜巻の、ジジとポニーのそばにまで来ていたようだ。

 相手に集中しすぎていて、全く気がつかなかった。



 俺もまだまだ未熟だな、と、ため息がもれる。



ポ「はい。しかしブーメランが中々に邪魔ですね」

ピ「分かった。ブーメランは出来る限り弾くけど、多少はごめんね。

  飛ばしてる奴を仕留めてくるから」


 簡単に言葉をかわして、飛んできたブーメランの1つを弾き返す。

 ポニーと合流して分かったが、あのザンアクロスという男、こちらだけではなくポニーの妨害もしていたようだ。

 相手の手数に比べてこちら側が少なすぎる。

 ニルフの回復も妨げられているようで、たまにしか音色が聞こえてこない。

 このままだと、ジリ貧だ。

 ジジを抑えるポニーの邪魔をせぬよう、さらに周りへの注意も怠らないよう、気合いを入れ直す。

 が、あまりに多いブーメランの量に、そのうちの1つを尻尾で弾いて、呟いた。


ピ「こんな時、銀が居れば・・・!」

ニ『でもただのブーメランだから、そう怖くは・・・』

ピ「ニルフ」


 そばに聞こえた声に、無事だったかと安心する。

 臭いで近くに来ていた事には気づいていたが、実際に元気な姿を見ないと不安にかられるのは、自分が人間だからか。

 と、そこで違和感を感じる。

 なぜ、3人とも同じ場所に?

 一人ずつ倒したいなら、回復のニルフを足止めしていたいなら、バラけさせていた方が楽だろうに。


ピ「罠か! 皆離れ・・・」

ポ「な・・・何かおかしいです!」


 ザワリとした予感に、注意を飛ばそうとするも。

 その直前で、ジジと戦っていたポニーさんが焦った声を出した。

 顔が歪み、汗をかいている。


ポ「なぜか、体が重く・・・」


 普段から大斧を扱うポニーが、片膝をついた。

 その体には・・・。


ピ「岩!? いや、これは・・・セメントか・・・?」


 地球のものとは違い透明だったのだろう、気がつかなかったが、水分が抜けて白く固まり始めたそれが、ピンキーの記憶にある物体と近いものを思い出させた。


ピ「皆! ブーメランに触れるな! ブーメランに液体になった岩の元がついてる!」

ザ「バレちゃったか^^」


 ピンキーの言葉にザンアクロスがにっこり微笑み、一瞬何かを呟いた。    

 

 その時。



ハ「ウワァアァ?!」


 空からハーピーが降ってきた。

 何故か頭から半透明の白い粘土のようなものをかぶっている。


若〔ブーメランについていた、って量ではありませんわ!?〕


 若葉の声に返事を返す事もなく、急いでハーピーの元に走る。

 が。


ピ「くっ、俺にもセメントが・・・!」


 全身を覆う質の悪い鎧のようなその硬さと重さで、思った以上にスピードが出ず。









 ハーピーは、そのまま地上に落ちていった。










 そして。


 勢いよく地面に落下し・・・プックに直撃した。


プ「ちょ」

ハ「タスカッタ!」

次回メモ:ジジ


いつも読んでいただき、ありがとうございます!!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ