vs三人組 ザンアクロス
かつて村がにぎわっていた時には出入り口として使われていたであろう、その場所の近くで。
彼らは対峙していた。
1人は長身の男性、1人は巨大な狼。
彼らの後ろ、村の中央近くでは巨大な竜巻が上がり、その向こうの視界を完全にさえぎっている。
?「竜巻に巻き込まれたのに、無傷とか!」
ピ「どうも」
わざとらしく驚く目の前の長身の青年に、ピンキーは笑みを含まず返事を返す。
青年はハハっと笑って、そのゾンビのような皮膚を掻いた。
彼の名前はザンアクロス。
ピンキーの保護した少女、キラ子が探す西の国の貴族、キラ男にかつて仕えていた男だ。
そして、キラ男をさらった疑いがかけられた男。
ザ「まさかここで君たちに会うなんて。この姿に驚いてる?」
ピ「そっちは驚いたように見えないけど、元々俺達を襲うつもりだったんだね?」
ザ「質問に答えないんだね」
ピ「俺達に有益な情報なら聞くよ?」
ザ「言えないな^^」
ピ「なら、聞き出すまでだね」
話しつつ。
ピンキーが疾走。
ザンアクロスは距離を取りつつ何かをする。
手元がぶれていた。投げたのか?
背中に殺気を感じて振り返ると、ブーメランが迫っていた。
とっさに飛んで避けるも。
ピ「見失ったね」
クンクンと鼻をきかせ、耳をピクピクと動かして位置を探る。
最初に降った巨大な岩、その影に、彼の姿を見つける。
ザ「見つかっちゃった!?」
ピ「舐めないでもらおうかな」
ザ「でも甘いね」
また岩影に消えるザンアクロス。
瞬間、飛びかかるも、そこに姿は無かった。
ピ「どこにいった・・・?」
『うわ!?』
ピンキーの耳が声を拾う。
あの声は・・・ニルフ!?
ピンキーは村の中央に向かって風のように駆ける。
目指すのは・・・竜巻の、さらにその向こう。
*
プックのケダマ打ち返してたら、目の前にブーメラン飛んできた!?
俺は咄嗟に体よじってブーメラン避けた。
ら、「ひゃっはー」とか言いつつ飛び上がったプックの後頭部に刺さった。
ブーメランが。
うん、風にあおられてちょっと浮いたのが災いしたね。かわいそうに。
ニ『でもチャーンス!』
ザ「させないよ!?」
顔面狙って撃ち落とした俺の木刀の渾身の一撃は、またどこかから飛んできたブーメランにブチ当たって そらされた。
木刀の一撃は地面に落ちて、プックはその衝撃で横に転がっていった。
ブーメランはそのままどこかに飛んでいく。
ニ『誰だ!』
プ「ザンさんだ!」
ザ「そうですザンさんです!」
ビシッて音がしそうなほどにしっかりポーズを決めるプック。いやお前が決めるのかよ。
ザ「プックさんにとられた!」
プ「ポーズィングはいただいた!」
若〔ふざけているんですの?〕
二人の掛け合いにイラついたような若葉が不満げにツッコんだ。
なんか向こうから「しまった ジジちゃん はいりそこねた!」って声もしてるけど、気にしないでおこう。
目の前には起き上がった犬とゾンピっぽい皮膚の青年。
対する俺は木刀を装備。
ポニーさんとハーピーはジジに付きっきり。
ピンキーの姿は、見失ったまま。
さて。
ニ『どうしようか若葉。手元に木刀あるけど』
若〔振り切って逃げて、見えないところで皆さんを回復したい所ですね〕
ニ『デスヨネー』
俺の行動基準はまず逃げること、そして回復すること。
幸運なことに、ここは廃村。隠れる場所には、事欠かない。周りには大岩もあるし。
戦いはほかの人に任せるぜ!ぐすん。
ザ「って考えてそうだから、先に潰そう!」
プ「あーい!」
ばれてるぞ若葉!
ポニー&ハーピー vs ジジ
俺&若葉 vs ザンアクロス&プック
戦局は、俺んとこだけヤバイ。
ザ「いくよー」
プ「あーい」
言った瞬間。距離があったプックが目と鼻の先に表れる。
瞬間移動!? とか言う暇もなくプックが俺に毛玉をまぶす!
すかさず後ろに跳ねて逃げる俺!そのまま竜巻の暴風にのってさらに距離をとる!
毛玉はシーくん達が風で散らしてくれた!
さらに飛んでくる毛玉と、死角からまとわりつこうとしてくる毛玉や鋭利な岩を避けながら、冷や汗をぬぐい、廃屋が残ってる地区に逃げ込んだ。
ここまで来ると竜巻の風も、飛ばされるほどじゃない。
足跡を残さないようにソロソロと歩いて、壁に大きく穴が空いた家を見つけた。
俺が入れるくらいの、ギリギリの穴。
少し覗くと中には誰もいなくて、埃のかぶった家具が残されていた。
若〔ここに隠れますの?〕
ニ『そうするか』
若〔このままピンキーさんと合流できればいいんですが〕
ニ『うまく逃げきれたら、若葉はピンキー探してくれ』
若〔わかりましたわ〕
するりと穴に潜り込み、穴の前にタンスっぽいものを置いて塞ぐ。
家壊されたときは、穴から出られるくらいの距離は取って置いたけどね、タンス。
移動させるときに音でばれるかと思ったかど、思ったより竜巻の騒音がひどくて大丈夫だった。
ジジさまさまだな。
冷や汗と、なんか違う汗もかきつつ、合間合間にハープを奏でる。
プ「にげられたー」
ザ「次頑張ればいいよ!」
俺が隠れる家の1つ向こうの路地辺りから、二人の話し声が聞こえてくる。
こっちはこれだけ緊張してんのに、なんともゆったりとした声なのが腹立つ。
だんだん近寄ってくる声。
息を潜める俺達。
しかし。
二人の声は、俺の隠れる廃屋から遠ざかっていった。
ほっと息をつく。
今のうちに、ハープで魔力と体力をさらに回復させる。
この音は、俺の仲間にしか届かないから安心だ。
シーくん、フーちゃん、ありがとう!
二人に、俺たちの会話もあいつらに聞こえないようにしてくれ、って頼んでから、しかしヒソヒソと声を潜めて若葉と話す。
ニ『プック達、緊張の欠片もないのがムカつくな。
話してくれてる分、シルフ達が音の場所知らせてくれるから好都合なんだけどね」
若〔向こうにこちらを関知する統べもなさそうですし、十分に回復させてからいきましょう〕
ニ『だな。ピンキーさえいれば、一対一に持ち込めるんだけど。
シーくん達に頼んでみるか』
若〔それは・・・相手が精霊の姿を関知できるやもしれませんですし、やめておきましょう〕
ニ『なるほど!(思い付きもしなかった)』
若〔パーティー唯一の全体回復者ですのに、一人で行動させるのがこんなに怖いとは・・・〕
さーせん。
さて、声もしなくなったし、そろそろ出るか。
ピンキーなら鼻で俺達を追えると思うけど、こっちで奇襲討ちできればそれはそれでいい感じだし!
ソッと穴から這い出して、辺りを見回す。
だれもいない。
どちらが吐いたのか、ホッとしたため息が漏れた、そのとき。
足元の砂に滑って、コケた。
その時、頭上で、スコンと間抜けな音がなった。
見上げると、今俺の頭があった場所に
鋭利なブーメランが刺さっていた。
ザ「残念、避けられちゃった」
次回メモ:ブーメラン
いつも読んでいただき、ありがとうございます!!!