竜巻と毛玉
廃村の入り口近くに生まれた竜巻の前には斧を奮うポニーテールの女性。
上空からは鳥の姿を混ぜたような女性が石を落として応戦している。
そしてその竜巻の中には・・・。
ジ「ふおぉぉおおお。
ジ ジ ち ゃ ん
か て そ う」
見えない速度でヌンチャクを振り回す、小学生メイド少女の姿があった。
ポニーさんが地面に足を埋めて何度も切りかかるが、竜巻が生み出す強力な風に阻まれてなかなかジジ自身にダメージを与えられていない。
ハーピーが竜巻の上空に上がり、竜巻の目から岩を落としたり反対周りの風を起こして竜巻を打ち消そうといろいろやっているが、ジジがサッとぬんちゃくの向きを変えるだけであっさりとハーピーは吹き飛ばされる。
しかも地上に落ちた鋭利な小石を巻き上げて、その場にいる全員に雨のように降らすおまけつき!!!
最初の岩の雨はこれも狙いだったのか。
皆の体に小さくはない傷が増えていく。
若〔一見すると、竜巻にとらわれた少女の救出劇ですわね〕
ニ『これやばい回復に専念する!』
若〔ではわたくしは周りの警戒を続けますわ!〕
ニ『頼んだ!ピンキーどこいった』
若〔竜巻で飛んでいったところまでは見えたのですが〕
ニ『他の2人と交戦中か?』
若〔竜巻で土が舞い上がって、視界が利きません!〕
竜巻から身を隠すように2m近い岩にもたれかかり、ハープを手に持ち曲を奏でた!
いつも通りにシー君とフーちゃんのシルフ2人組が周りのシルフ達にも呼び掛けて、曲を仲間に運んでいく。
けど、なんか・・・
ニ『シルフの人数が少ない?』
若〔!!! 上です!〕
俺に、大きな影が落ちた!
とっさに岩に飛び乗る!
目の前にデカい塊が落ちる!
風に飛ばされかけた俺を、シー君とフーちゃんが風で支えてくれた!
ニ『こんな手助け初めて!』
若〔誰ですの!?〕
そうだった。シルフ達の直接的な手助け(初)に感動してる場合じゃなかった。
ニ『誰っていうか岩が飛んできたんじゃない・・・の・・・?』
目の前には、縦横2mくらいの でけぇ犬がいた。
ニ『・・・』
?「・・・」
ニ『えっと・・・どちらさま』
プ「プックだお!!!」
プック?・・・プックって言えば・・・。
ニ『誰だっけ』
プ「ひどい!」
若〔・・・以前黒蹴さんが、東の大陸で見つけた、見世物小屋に捕まっていた犬では無かったかと〕
ニ『そうだっけ』
プ「うん!」
あの犬かよ!?
って事はあと1人はたぶんザンアクロス。
その見世物小屋にプックを迎えに来たっていう奴だったはずだ。
んで、ザンアクロスと言えば確か・・・。
若〔キラ子さんが探していた、キラ男さん、でしたっけ?
その方をさらったという疑いがあったかと〕
ニ『ソウソウソレソレ』
若〔覚えてなかったですわね!?〕
気のせい気のせい。うん。きっとそう。
ニ『オイオマエ! キラ男ハ無事ナンダロウナ!』
若〔なんで片言ですの!?〕
プ「キラ男・・・もう返したい・・・」
『〔え???〕』
一瞬遠い目をしたプックに2人で聞き返すも。
キリッと表情を一変させたプックがその巨大な体をさらに大きく膨らませた。
ニ『やる気か!』
若〔来ますわよ!〕
プ「いくおー!!!! あっ」
大きく、俺が乗ってる岩の倍以上に体を大きく膨らませたプックは・・・。
風にあおられて、そのまま後ろに倒れた。
プ「・・・」
若〔・・・〕
ニ『・・・チャーンス』
振り慣れた木刀で、滅多打ちにした。
プ「ひどーい! この人ひどーい!!!」
起き上がられずにもがくプックの胴に飛び乗って木刀で滅多打ちにするも、しかし毛が衝撃を吸収しているのかダメージが入らない。
ニ『ちくしょう!殴っても殴っても全然ダメージ溜まってるって感じがしない!』
若〔どういう感じですのそれ?〕
ニ『なんか・・・痛そうな顔してないっていうか』
若〔確かに・・・。で、でも殴るたびに毛が飛んでますし、このまま衝撃を吸収する毛を全て千切り取ってしまえばいいのでは!?〕
ニ『おっしゃそれでいこう!』
削り落とす勢いでメッチャ木刀でケダマを叩き千切る!
しかしプックは毛玉を量産しているのか、なかなか地肌が見えない!
なら顔を狙って・・・って、ご丁寧に顔にまで毛を密集させてガードしてやがる!
若〔こういうとき魔法が使えれば・・・〕
恐らく自分へと向けたものだろう。歯噛みする若葉の声が小さく聞こえる。
けど、それに返事を返さずに必死に目の前のケダマを千切り続けた。
だってこれ、早くプック倒さないと。
全体回復する人居ないよね!?
ハーピーは魔物 (?)だから、風の世界樹に≪登録≫できないらしく、回復の風の魔法が使えないっぽい。
そんなハーピー、岩落とす合間にポニーさんに近寄って何かを塗ってる。
たぶんあれはピンキー行商隊の商品の1つ、高級回復クリーム的なやつだ!
原材料は俺の手から出る回復練り込んだ魔力。
なんか俺の手から出たやつ。
役に立ってる用で何より。
でもピンキーがいないのが気にかかる。
どこに居ようともハープならシルフ達が勝手に回復届けてくれるのに!
足元で転がって「びゃー、立てないー」とか言ってるデカいだけの犬が煩わしかった。
俺はその時気づかなかった。
魔族が、毛玉でダメージを軽減するだけの方法を取るはずがないって事に。
若〔さながら、毛玉の鎧ですわね〕
ニ『火の魔法が使えれば一気に燃やして・・・うわ!』
プ「そだ、乗ってるとこ膨らませよ」
急に足元が不安定になり、俺は後ろに飛ばされた!
そのまま風にあおられて宙に浮いたところを、狙ってプックが毛玉の塊を矢のようなスピードで飛ばしす!
ニ『やられてたまるか! おりゃ!・・・軽い?』
妙に軽い手ごたえで打ち返せた顔くらいのデカさの毛玉たち。
目の前をフワフワと漂った後・・・風に乗って1つの方向に吸い込まれていく。
飛ばした毛玉は竜巻---ジジの方に流れて行って、そのまま風に巻き込まれて小さく細切れになり、そのまま辺りに散らばっていった。
次回メモ:ザンアクロス
いつも読んでいただき、ありがとうございます!!!