魔界に出発馬車がゴー
次の日。
元気になってテンション落ち着いたピンキーと一緒に魔界に転移した。
もちろん、転移する時は≪見せない君≫振りかけて来てる。
≪見せない君≫で姿を消して転移する。
≪泉≫では黒蹴が見張りをしていた。
俺達に背を向けるようにして座った黒蹴は、俺とピンキーを感知したのか、ピクリと動き・・・。
「ぐぅ」って言った。
寝てるじゃねえか! おい見張り!!!
プ「きゅるる~?」
ニ『プラズマが代わりに見張りしてる・・・』
それでいいのか、飼い主。
ピ「この後、銀とハーピーとポニーさんが馬車に乗って転移してくるよ」
ニ『うん、上手く行けば良いけど』
若〔もしもの時は、わたくし達が・・・〕
ピ「・・・回復は、まかせたよ。地上と魔界を、召喚者以外が転移出来るのかが疑問、だからね」
一応、今まで転移に失敗した事ないけど、失敗したらどうなるんだろうな。
念のため、地上にはユーカが残ってる。
ちなみに、ポニーさんは東の城の女性兵士で、ハーピーはそのまんまハーピーだ。美女系フクロウだけど、今は猛禽類系美女に化けてる。
ニ『どうしてハーピーとポニーさんが乗るんだ? 銀にベタ惚れだから?』
ピ「それもあるけどね。銀は召喚者、ポニーさんはこの世界の人間、ハーピーは魔物でしょ?
3人共立場がバラバラだから、誰が転移できて誰が出来ないか、一目で分かるからね」
ニ『ほーん』
色々考えてるんだな。
俺達の着てる服とか持ってる荷物とかは普通に俺達と一緒に転移してたから、物資は大丈夫だと思うけど。
地上の人は転移できませんーとかだったらどうなるんだろう。
ポニーさんだけ部屋に取り残されるのかな。ぽーんって。
若〔そろそろ時間ですわね〕
若葉の声で現実に戻される。
念のためもう一度≪見せない君≫を自分たちに振りかけて、彼らを待つ。
その時、泉の横が白く光る!
食い入るように光を見つめるピンキー!!
果たして3人の安否は!!!
緊張の瞬間!!!!
ピ「この前レモン達と転移した時は成功したんだけどね」
〔『えっ?』〕
え?ってなって一瞬ピンキーに目が行った。
目を離したすきに≪泉≫の横には馬車が現れていた。
中からは元気な3人が出てきていた。
銀達も馬車に≪見せない君≫をかけてたから、お互いの姿が見える。
俺達はお互い手を振りあって、無事を確認しあった。
馬車の中身も無事だった。
ピ「うんうん、上出来だね! それじゃあ。明日にでも出発するよ!」
ピンキーが、弾んだ声で宣言した。
黒「んびゃぅ~スヤスヤ」
プ「きゅるるー」
黒蹴だけ、何にも気づかず眠り続けてた。
*
黒「馬車って結局2台なんですね~」
ガタガタ揺れ・・・ない不思議な馬車に乗りながら、黒蹴が馬車の後ろから、外に顔を出しつつ言った。
俺達の馬車は少し変わっていて、馬車の下から魔法を一定の出力で出し続けて、空中に浮きながら移動している。
当然その魔力は馬車の中の人が出してて、その魔力が枯渇しないように常時回復させるのは、俺のハープの役目だ。
俺は馬車が移動してる間ずっと、2台分の魔力を回復しつづけるお仕事だ。
ま、そんな変わった移動の仕方をする馬車だから、今ももちろん≪見せない君≫で目隠し中だ。
でもこれ、急に街近くで現れたりしたら、それこそ不審者扱いされない?
まぁピンキーの事だから、その辺は色々考えてそうだけど。
御者席では銀が魔力を出しつつ進行方向を決めていて、ピンキーは床に広げた地図を見てる。
ピ「そうだよー。前も男女別で2台用意してたけど、今回あの子達も一緒にいくからね。
当然狭くなっちゃうから、大きめの馬車を昨日一台もらったんだ。
ほら、今俺達が乗ってる方」
若〔一日で仕上げたんですの!?〕
ニ『よく間に合ったな』
中を見回しても、昨日銀達が乗って転移してきた奴と遜色ないのに。
ピ「俺が作ったのを見本にして王達が作ってくれてたんだよ。もちろん、材料は魔界の物を使ってるから、俺達が地上から来たってバレる事もないし」
若〔凄いですわねぇ〕
ニ『だなぁ』
俺達の馬車は二台とも、ボロ小屋風にデザインされていた。
なんかこのボロ小屋が魔界の出店のデザインらしくって、魔界では出店が街の間を移動するのが普通らしくって。
なぜかこんなことになってた。
ボロ小屋が宙を浮きつつ高速で滑るとか、完全にホラーだよな。
先頭を走るボロ小屋は男用の馬車だ。その後ろを、女用の馬車が走っている。
女用にはピンキー親衛隊 (幼女、幼女、巨乳、女剣士、女兵士、仔狼)と銀にべったりな2人 (女兵士、鳥女)と、妹だ。
こっちの男用には、俺、銀、黒蹴、ピンキーの召喚者4人と、黒蹴のペット、銀のペット、そして・・・。
黒「痛いですって!」ドタドタドタ!!!
ニ『ちょ、踏まないで!』バタバタバタ!!!
ピンキーが水の≪泉≫から連れ帰ってきた、花の魔族の五つ子も乗っていた。
なんでかっていうと、ピンキーから引き離すと泣くわ暴れるわで手が付けられないからだったんだけど。
若〔一緒に乗っていても、悪戯が凄いですわね・・・〕
ニ『ピンキーのいう事しか聞かないんだもん。イテテテテテテ!!!』
やめて、髪を毟らないで!!!
俺が悲鳴を上げて頭を押さえると、地図を見ていたピンキーが顔を上げた。
ピ「こら辞めなさいラーリールーレーロー!」
ピンキーが怒ると5人共一瞬だけシュンってなるんだけど。
またすぐに暴れ出すんだよなぁ、これ。
黒「わあぁぁー」
あ、黒蹴が尻蹴られて落ちた。
ピ「ぎゃー!黒蹴ー!? 5人とも!!!やめなさーい!!!」
ニ『ラーリールーレーローって何?』
銀「ララー、リリー、ルルー、レレー、ロローの略らしい」
ピンキーが黒蹴が落ちた所に走り寄ったすきに、呼ばれたと思ったのか、五つ子が一斉に銀を見た。
そのまま膝に力を貯めて、力いっぱい突進!
ギロリ。
銀が一瞬睨むと、5人共サッと止まってクルッと回ってピンキーの所に走って行った。
今の銀の目・・・すげー怖かった。
若〔ニルフさんも にらめばいいんですわ〕
ニ『にらんでるんだけどなぁ・・・』
若〔舐められてますわね、わたくし達・・・〕
銀「殺気を出せ」
ニ『相手子供だぞ!?』
銀「魔族だぞ?」
ニ『あ、そうか・・・でもなぁ・・・うーん』
銀『魔の王を倒そうとしているんだ。魔族に手加減するな」
ニ『銀どうした怖いぞ?!』
若〔そ、それより銀さん、どこに向かってるんですの?〕
銀「・・・。
この先2kmほどの所に、細いが道があった。底へ向かっている」
黒「いつ見つけたんですか?」
銀「見張りの時だ」
うぉあビックリしたぁ!
急に帰ってくんなよ黒蹴!
服はちょっとススけてるけど元気そうでなりより!
銀「ピンキー」
ピ「ん、なんだい銀?」
御者席に座り、俺達に背を向けたまま銀が低い声を出す。
銀「・・・しっかり躾けろ」
ピ「・・・わかった」
銀の声色におびえたのか。
馬車の後ろでは五つ子が、縮こまっていた。
*
銀のいった通り、途中から細い道が現れた。
ずっとそれをたどっていくと、小さな村を見つけた。
少し離れた所にあった高い草むらに馬車を隠し、≪見せない君≫の効果が切れてから村に入った。
寄ると、そこではお祭りの真っ最中だった。
あちこちにカラフルで見栄えのいい出店が立ち並んでいる。
パッと見、地上の子供が好きそうな店が多いな。
俺は自分の馬車を見る。まるで、ヤンキーが作った小屋が雨ざらしにされていたかのような、外見をしている。
見比べて思った。
ピンキーの作った出店、魔界のモノと全然違う!
次回メモ:宿
いつも読んでいただき、ありがとうございます!!!