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勇者だったのかもしれない  作者: ぷっくん
地面に向かって突き刺され!!
172/187

馬車完成!!!

 -*???*----------

「結界を破ったものがいるらしい」

「そうなんだ。それ、私たちに関係ないよね」

「言っていられるのも今のうちだ。準備をしておけ。

 奴らにこの街を、破壊されたくなければな」

「・・・わかった。2人にも伝えておくよ」

「良い心がけだ。じゃあな」

「いつも情報ありがとう」

「・・・この程度しか協力出来ず、すまない」

「十分だよ。そっちも気を付けてね」

「・・・あぁ」

 -----------------


 


 静かな部屋に、鳥の鳴き声が小さく響く。

 ここはどこだっけ。

 薄く目を開けると、見覚えのある部屋だった。

 静かな朝だ。もうひと眠りしよう・・・。





 *





ピ「完成したよ!!!」


 朝。

 若葉ハープ片手に食堂に行こうとして廊下を曲がったら、ピンキーがいた。

 ここ最近見かけないなーって思ってたら、全身ボロボロで目の下にはクマ。

 

若〔・・・今にも倒れそうですわね。何してらしたんでしょう〕

ニ『そういえば、なんか作るって言ってたような。・・・何作ってたんだっけ』

若〔聞いてみましょうか〕

ニ『おはよーピンキー。お腹空いた』

若〔おはようござ・・・って、聞くのそれでしたっけニルフさん!?〕

ピ「そういうの別にいいから! 早く来て!」

若〔そういうの・・・〕


 「そういうの」って・・・。

 妙にハイテンションなピンキーに手を引かれて、地下にある部屋に連れてかれた。

 ここってそういえば、来た事ないな。


 中を覗くと、小さな建物っぽいものが置いてあった。

 部屋の中に小屋。なんかシュール。

 しかも無駄にゴテゴテしている。

 なんだコレ? ヤンキーの作ったボロ小屋?


ピ「どう? 苦労したんだよ、この感じ出すの」 


 作ったピンキーは、出店の横で腰に手を当てて反り返ってる。

 すごいドヤ顔だ。


 そんな彼に、俺は聞いてみた。


ニ『なにこれ』

ピ「なにって、馬車」

ニ『ば・・・しゃ・・・』


 どう見てもボロ小屋です。

 百歩譲って、馬小屋です。


若〔こんな・・・こんなのが馬車だなんて・・・〕


 ほら、若葉も声震えてるぞ。これに乗るなんて認めたく無いんだな、分かるぞ!


若〔馬をどこに付けるんですか!!!〕


 違ってた。


ピ「馬は使わないよ」

若〔え、要らないんですか?〕

ピ「うん、ほら魔界で馬車って見かけなかったでしょう? 調べてみたら、魔界は馬車以外に交通手段があるそうなんだけどね、俺達旅人じゃ手を出せないほどの高級品らしくて。

  だから街では見かけなかったんだね。

  で、普通の人達はどうやって移動してるのかっていうと」

ニ『歩き?』

ピ「そっ。民間人は皆歩きか、人力車で移動してるらしいね。ほら、魔族って丈夫だから」


 衝撃の事実。魔界、馬車系のモノが無かった。

 ほぼ皆が丈夫なせいで、移動手段が発達しなかったらしい。

 一部の非丈夫な人達は丈夫な人が運んでるとかなんとか。

 「ギガンテスっぽい人もいたもんねー」とピンキーは目をキラキラさせてる。

 一瞬、ピンキーに寄り添うリボンを付けた一つ目巨人が頭に浮かんだ。

 惚れられたから仲間に入れますとか言いだすなよ?


ピ「話がそれたね。それで、コレは便宜上馬車って言い方をしてるんだけど、実際は出店としての形を取ってるんだ。

  そっちのほうが、街に違和感なく置けるからね」


 思考がこっちに戻ってきたピンキーが、ボロ小屋をポンっと叩いた。

 ・・・え、ちょっと待って。

 なんで出店のほうが街に違和感なく置けるの?

 普通出店がアッチコッチぽんぽん移動してた方が疑問に思われない?


ピ「その点は大丈夫!!!」


 ふふん、と鼻を高くしたピンキーはクルリと回った。


ピ「魔界では、店がよく移動するんだ!!!」


 どういうこったい。







 *







黒「・・・という事は、こういう小さい店は、よく街の間を移動してるんですね。

  巨大な魔族の人が、肩に乗せて」

ピ「そういう事。人が集まる場所に引っ越しつつ出店を出すスタイルが流行ってるらしいよ」

ユ「その人トラック代わりやん」


 完成したのがよほどうれしかったのか、ピンキーはそのまま食堂に走って行った。俺達をほっといて。

 んで、黒蹴達連れてきて、ボロ小屋を見せはじめた。

 2人共朝食の途中だったらしく、両手に皿持って、パンとかかじりながら見てる。


ニ『あ、いいな黒蹴。そのパン一個ちょうだい』

黒「嫌ですよ。僕のなんですから。って、あ!」

ニ『そのベーコンももらっていい?』

黒「ちょ、勝手に取られた! ニルフさん勝手に取ってく!」

ピ「聞いてる?2人共」

「『聞いてる聞いてる』」


 つまり。ニホンでいう祭りを追う出店のように、魔界では人ごみを追いかけて店を出すスタイルが人気らしくて、出店が街を移動するのは不自然な事ではない、と。

 この辺は地上の 馬車での行商と同じだと思う。

 店ごと移動するって点で。


 んで、店はそういうの専用の職に就いてる魔族が店丸ごと肩とかにのっけて運ぶらしいんだけど。

 さすがに俺達の仲間にそんな力持ちは居ない。

 んじゃあどうするのか。


ピ「飛ばすんだよ。いつもの俺達の馬車のごとく」

黒「あぁ、リニアモーターみたいなアレですね」

銀「なるほどな」

ピ「今使ってる馬車のスペアを元にして作ったから、乗り心地は良いと思うよ」

 

 そいえば俺達の馬車には、飛ぶ機能が付いてたんだった。

 前にピンキーが発明した≪カイチューデントー≫。魔力を流すと、その人の属性の魔法が、一定の量の出力で出るって奴。

 それを、この東の国の王宮魔導士さんが馬車の下に一杯取り付けた。


 そしたら、飛ぶようになった。


 揺れが少ないから長距離走っても疲れないし、商品も傷まない。

 欠点は常時魔力を使う事だったんだけど。

 俺が常にハープで魔力を回復させてたら、別に大丈夫だった。

 皆もここに召喚された頃よりも魔力の最大値もあがってるっぽいから、回復しなくてもかなり持つし。

 っていうか銀がサラっと紛れててビビる。


ユ「でもそれ、目立てへん?」

若「大丈夫ですわ。ピンキーさんの発明品の中に、認知をさまたげるものがありましたので〕

ピ「≪見せない君≫だね」


 えーっとたしか、≪見せない君≫は・・・。

 魔力を込めると先端から煙が出て、その煙をかぶった者の姿を認識できないようにする。

 音に関しても、聞こえていても、聞こえていないと錯覚させられる。

 煙をかぶった者同士だと、姿は認識出来る。人にも物にも使用可能、だったかな。


 なんで俺はアイテムの効果をいちいち思い出してるんだろう・・・。



ピ「って訳で、さっそく今日出発するよ!」

黒「待ってくださいよ、まだ今日はソルジャー達と約束が!」

ピ「大丈夫大丈夫、走り心地を確かめるだけだから! ここじゃ外に出られないし!」


 なんで部屋の中に作ったんだ?


ピ「それに手直しやレモン達の行商の具合も調整しなきゃだし、今≪泉≫見張ってる銀とも連絡取らなきゃだし。する事は一杯あるよ!」

銀「オレはここに居るが」

ピ「あれ、何故か銀が目の前に見えるよ・・・初日は銀が見張りのはず・・・」

銀「今日は黒蹴だ」

黒「あれ、そうでしたっけ」

銀「来なかったから呼びに来た」

若〔忘れたの、2度目ですわよね〕

ピ「え・・・今日って帰って来てから何日目・・・」

ユ「とりあえず休めや」


 ピンキーはユーカに抱えられるようにして部屋を出て行った。

 たぶんあのまま食堂とフロ行って寝るんだろう。

 もちろん世話するのは、その辺を歩いてる兵士さんか、ケモラーさんあたりだろう。

 ユーカはそこまで面倒みない。


 それにしても。


ニ『どうして地下にある部屋で馬車作ろうと思ったんだ? 中庭に近い部屋貸してもらえばよかったのに』

銀「アレがあるからだろうな」


 銀が指さした先には、動物の毛皮やら変な果物やら赤い植物やらへんな色の枝やら金属やらが一杯置いてあった。

 あ、あれ見覚えあるぞ。確か魔界の街で・・・。


ニ『そうか、ここはピンキーが買った魔界のアイテム置いてる部屋なんだ!』

銀「そこじゃない」

ニ『そこじゃない』


 銀の指さした方向の、さらに奥を見てみる、と。

 直径2mくらいの円が床に書かれていた。中は、白っぽく光ってる? 若干渦巻いてる?

 ドアから一番奥の部屋の隅っこに、渦巻き。


 壁際には所狭しと魔界のアイテムが飾られているのに、その周りには何も置いてない。


ニ『あれ?』

銀「そうだ」

若〔なんでしょう。なんだか吸い込まれるような・・・〕



 吸い込まれるような、って言っていたので、若葉ハープを渦巻きに置いてみた。

 


若〔ちょ、何〕



 若葉ハープが消えた。



ニ『ぇぇぇえええええええ!?』

若〔るんですか、ニルフさん。ってあれ!? 銀さん!?〕


 真後ろから若葉の声!?


 振り返ると、銀が若葉ハープを持って立っていた。

 もう一方の手には、ピンキーのリュック。


ニ『あれ、そのリュックって』

銀「ま、そういう事だな」


 銀が若葉ハープをリュックに入れる。

 と、俺の後頭部を誰かが殴った。


 振り返っても誰も居ない。

 その代わり、足元には若葉ハープが落ちていた。


銀「天海には居なかったはずのベリーが魔界に来た理由はコレだな。

  この部屋は王の許可を取り、王宮魔導士が管理しているそうだ」


 そう言うと。

 銀は部屋を出て行った。

 俺は銀の置いていったリュックを手に取って、若葉ハープを入れてみた。

 渦から若葉ハープが噴出された。


若〔・・・リュックに入ると、ポーンと飛び出すんですね〕

ニ『よくアイテム壊れなかったな』

若〔きっと王宮魔導士さんが、非番の兵士さんでも使って・・・いえ、なんでもありませんわ〕

ニ『今日の定食なんだっけ』

若〔確か≪王嘆く!まだ行かないでよ子供達≫定食ですわ〕

ニ『食いづらいな』

若〔早くいかないと無くなりますわよ〕


 王の心情を定食名にするこのシステム。


 俺はしばらくリュックと渦で遊んだあと、朝飯を食べに食堂に向かった。


若〔ちょうど最後の一個だけ残っていましたわね〕

ニ『ラッキー、早く食べよう』

若〔あら?〕

「「「「「 !!! 」」」」」

ニ『げっ』


 ちょうど定食運んでる瞬間に、食堂通りかかったピンキーの五つ子と目が合って。

 

 結局 取られた。

次回メモ:転移


いつも読んでいただき、ありがとうございます!!!

エラーでログインできぬんぬん(´・ω・`)

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