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勇者だったのかもしれない  作者: ぷっくん
地面に向かって突き刺され!!
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地上に里帰り

 ー*美女と部下*-------------

 南の大陸には、世界樹島に近い所に一番大きな街がある。

 その中の、大きな建物の中では。


「やっと帰ったわねぇ」


 豪華な部屋に1つだけ置かれた、これまた豪華な机の前では、細身の体が大きく伸びをしていた。

 ふぅ、と息を吐いて腕を回しているのは、銀のふわふわロングヘアーにふわふわの服をまとった美しい女性。

 美しい顔には おくれ毛が張り付き、すこし疲れがにじんでいる。

 

「そうだわ。飲み物でも入れようかしら」


 一通り体をほぐした女性がそう言いながら席を立った、その時。コンコンとドアがノックされた。

 はぁーい、という可愛らしい返事を待ってから開かれたドア。

 そこに立っていたのは。


「あら」


 驚いた顔をする女性。

 部屋の前には、青い礼服を来た男がいた。

 男は青い帽子を取りコートかけにけつつ、自身の分の茶器も用意している女性に声を掛ける。


「ごめんねクミちゃん、いろいろ大変だったみたいだね」

「いいのよぉ。美女、これくらい平気だから」


 女性は自身を美女と呼び、その美女に、男はクミちゃんと呼びかけた。

 客人に、女性は手に持ったカップの2つの内の1つを差し出す。

 カップを受け取った男は、優雅に微笑んでそれを口に運んだ。


「それで、実家に帰っていたアナタが、どうして戻ってきたのかしら?

 まだ休暇はあったじゃない。副ギルドマスターさん?」


 熱い飲み物を綺麗な動作で飲みつつ、女性は男に話しを切り出す。

 男に向けられた目は、幾分いくぶんか厳しさを含んでいる。

 しかし。


「面白い事があったから、一番にクミちゃんに知らせたくてね」


 副ギルドマスターと呼ばれた男は、さらりとかわして言葉を紡いだ。


「あら、面白い話ってなぁに? 美女、気になっちゃう!」

 

 無邪気に身を乗り出す女性。それを見て微笑む男。


「僕達が故郷を出たきっかけになったあの子が、見つかったよ」

「まぁ!? めでたいわね!? それで どこにいたの?」

「やはり地上に居たらしいよ。でもね。既にこの世を去ってしまった」

「まぁ・・・!」


 話を聞くなり。

 女性は口元に両手を当てて、そのまま床に倒れ込んだ。

 ぶつかった戸棚がガシャリと音を立てる。


「クミちゃん!?」

「・・・大丈夫よ、ちょっと驚いただけだから」

 

 彼女を支えて椅子に座らせた男は、すぐに水魔法でハンカチを濡らして女性の額を拭く。

 しばらく介抱していると、女性の顔色はじょじょに良くなっていった。


「落ち着いたかい?」

「ええ、ごめんなさい。美女、話の途中だったのに止めちゃったわね」


 濡れたハンカチを男から受け取った女性は、困ったような笑顔を男に向ける。

 その儚げな表情を見た男は、ホッとしたように彼女に笑いかけた。


「そんな事ないさ。でも今日は辞めて置いた方がいいね」

「いいえ、大丈夫よ! さぁ、話を続けて頂戴!!!」


 両手をグッと握りしめた女性を見た男は、やれやれ、と首を振る。


 豪華な部屋で、豪華な椅子に座った銀のロングの髪を持つ、背の高い細身の「美女」は。

 横に立つ、青い礼服に身を包んだ長身の男に挑戦的な目線を向けて。


「心して聞かせていただくわね? 美女の副ギルドマスター、ポッポルちゃん」


 呼びかけられたその男は、左目にかかった前髪を整えると。


「それでは、報告させていただきます。我らが南の国ギルドマスター、クミユちゃん」


 まるで主君に行うかのごとく優雅な礼を、彼女に贈った。

 部屋には2人以外誰もおらず。

 部屋に面するあらゆる場所の人払いも済ませてあった。


 2人は言葉を交わし合う。

 今回の報告。故郷の様子。ずっと探していた、あの子との思い出話。

 

ク「あら。じゃああの子を見つけてくれたのって、あの子達なのね!」

ポ「凄い偶然だよね。故郷でも出会うって、おじさんもビックリだよ。それにあの子も・・・まさか東の大陸に居たなんて」

ク「別の大陸だったから、気づかなかったのね・・・。そういえば」

ポ「なんだい? クミちゃん」

ク「さっき銀ちゃんが来たわね!?」

ポ「そうなのかい!?」

ク「ポッポルちゃんの事、根掘り葉掘り聞かれたわね!?」

ポ「鉢合わせなくて良かったよ!」

ク「あの子の勘ったら、すごいわね!?」

ポ「そうだねクミちゃん!?」

ク「次に会った時の言い訳、考えないとね!?」

ポ「脱皮の事は村の秘密だからバレてないけど、なんとか誤魔化すしかないね!?」

 ------------------------






 南のギルドのマスター部屋が騒がしくなってる頃。

 ニルフは山に居た。

 

「畜生こいつら、切っても樹っても回復しやがる!」

「だがヒーラーが居るようには見えないが」

「えへへ、いっぱい切れる切り放題」


 山奥で、悪いおっさん達に襲われていた。

 8人のおっさん達は木々の間に自然に出来た広場の中央で、黒蹴達を囲むように陣を組んで剣を振り回している。


『うぅぅ、なんでこんな目に。俺達、ただギルドで薬草取って来てって言われただけだったのに・・・』

〔すっかり黒蹴さん達と分断されましたわね。こちらにはまだ気づいていないので、邪魔されずにハープで回復できるのは安心ですが・・・〕


 俺と若葉は広場から離れた森の樹の幹に身を隠しつつ、その様子をうかがっていた。

 なんでこんな事になったのか。



 *



 久々に地上に戻って数日後、おっさんの楽器店に顔を出しに行ってみた。

 んでその帰り。

 ギルドに顔を出したっぽい黒蹴が、後輩冒険者の3人を連れてクエストを受けた所に鉢合わせた。

 で、黒蹴に「今から簡単なクエスト行くんですけど、ニルフさんもどうです?」って言われて。

 内容みたら薬草採取で『あぁ、これすぐに終わる奴だ』って思って着いていって。


 ここまでは良かったんだ。


『薬草って、森に行くんだよな』

「街近くにある、西の森の薬草は最近ですか?

 そこは既に、森スライムに食いつくされて見つけにくいんですよ。ですから最近では街の東側にある山奥で採取を行っていますね」


 後輩冒険者の内のコナユキくん・・・一番物知りな彼が、丁寧に地図を広げて目的地を教えてくれた。

 なるほど、前にゴブリンが大発生したあの村の近くに向かうっぽい。


 以前だったら数日かかったその場所も、今では交通網ばしゃが完備されてるのであっという間に近くに着くそうだ。

 なんか国とギルドが一丸となって推し進めてる計画らしい。

 トシバス計画っていうとか。ゆくゆくは りにあもーたーかー計画を発動するとか。なんとか。


 とりあえず、それでゴォォって村のある山まで一気に移動して、俺達は山を登った。

 村近くの分は村人の為に残しておくからって、山奥のケモノ道を進んでって。


 着いたのは、少し広めの広場だった。

 っていうかここ知ってるぞ。ゴブリン住んでた洞窟の近くじゃねえか。


「俺達が見つけたんっす!」

「ソルジャー、迷っただけじゃん!」

「喧嘩しないで2人共。ソルジャーが獲物追いかけて、偶然ケモノ道に迷い込みまして。

 それで見つけた場所なんですが。ここなら村人も入り込まないですし、穴場なんですよ」

「凄いですね3人共!」


 キラキラした目で自分の胸を叩いて黒蹴に報告する戦士のソルジャー君。

 それを茶化す短剣使いのアンちゃんと、事情を説明する魔法使いのコナユキくん。

 黒蹴はそれを嬉しそうに褒めていた。


 で、穴場っていうからすぐ見つかる物かと思ってたら・・・。


『見つからないな、薬草』

〔他の冒険者の方が、取りつくしちゃったのでしょうか〕

『ちょっと森の奥見てみるか。おーい皆、俺ちょっと森側みてみる』



黒「気を付けてくださいねー。無いですね、薬草」

ソ「以前は沢山あったんっすけど・・・」

コ「スイマセン、黒蹴先輩・・・」

ア「もぉ・・・どこにあるのよぉ・・・」

?「おまえら、なにしてんだ」


 んで、声の方向を見ると、剣持ったキッタないおっさんが立ってたっていう。

 そのまま問答無用で仲間呼ばれて襲われてるっていう。

 

 

 ≪泉≫の見張りの交代時間がまだ先で 暇だったからって、着いてくるんじゃなかった・・・。

 ちなみに、楽器屋のオッサンはまだ帰ってきてなかった。

 ピンキーは魔界風の馬車を作るって息巻いてて、銀はスライムとハーピー連れて南の国のギルドに顔を出しに行ったらしい。

 ユーカは、今≪泉≫の見張り番中だ。

 交代時間までに街に帰れそうになかったら、こっそり転移で城に帰るつもりだったのに。

 これじゃあ交代時間間に合わねえよぉ! ユーカ怒らせたら怖えんだぞ!


〔危ないニルフさん!?〕

『うぉ!?』


 隠れてた木の根元に折れた剣先が飛んできた!?

 重心くずれるるるるるる!バキィ!


 枝ふんじゃった!?


「おい木の後ろのあいつ・・・」

「! お前なにしてる!!!」

『ふぁ!?』


 しまった、見つかった!

 黒蹴達の周りを囲んでいたうちの、後方にいた2人が気づいて走って来る!


「どうした!やはりヒーラーいたのか!」


 2人に追い詰められたところで、もう1人走ってきた。最悪だぁああ。

 ボロボロの服を着たおっさん達は大きめの剣に木漏れ日を反射させつつ、俺に近づいてくる。

 なんでか困惑の表情を浮かべながら。


「・・・おい、コイツ本当にヒーラーか?」 

「いや、ヒーラーってよりこいつは・・・演奏者?」


 チャーンス!!!


『ハイ!演奏者どす!』


 大きな声で答える!

 はた目から見たら俺、無害な演奏者だもんね!

 後回しでいいよ!俺攻撃するの最後でも安全だよ!

 だから早く興味なくして!!!

 

お「やはり怪しい!なぜこいつだけ戦いに加わってなかったんだ!」

ニ『皆の心を癒してほしいって言われてついてきたので!』

お「それで演奏中も弾いてたのか!?」

お「でも音全く聞こえなかったぞ」

お「ああ、弾いてるそぶりはあったがずっと音が聞こえていなかった。やはり怪しい!」

ニ『戦闘中は音が聞こえなくなる仕組みでして!』

お「なんだその仕組み!?」

お「聞こえなかったら心を癒す効果出ねえぞ!?」

お「切って良い?」

お「ああ」

ニ『駄目です!ぎゃーやめてー!!!』

お「な・・・こいつ」

お「弟の斬撃を、全て避けている・・・だと」

お「アハハハハ切り放題アハハハハ!!!」

ニ『ぎゃー!!!』

お「どうした!早く援護しろ!そっちは1人だろう!」

お「やべっ兄貴が手練れとタイマンしてた」

お「後で殴られるぞ早くいくぞ!」

お「おい、そいつほっといて向こうに行くぞ!」

お「アハハハハアハハハハ!!!」

お「聞いてねえな」

お「しょうがねえ放って行こう」

お「不運だったな、にーちゃん」

お「アハハハハハハハ!!!」

ニ『ぎゃーーー!!!』


 たぁん


お「アハ!?ぐぇ」

ニ『わっ倒れた!?』

黒「だーいじょうぶですかーニルフさーん」

ニ『助かったよ黒蹴ー! うわータンコブ痛そう』

黒「敵止めますので、早く弾いてくださーい」

ニ『おっけー黒蹴ー! ひやー、おっさんの後頭部の髪、丸焦げだ』

お「やはりあいつがヒーラーだったのか!」

黒「違いますよ!」

お「ならなんだ?冷静に物事を判断するために必要、とでもいうつもりか?」

黒「それも違います!ニルフさんのハープ聞かないと落ち着かないんです!!!」

お「戦闘中に落ち着いてどうする!? それに音聞こえないだろう!」

黒「そこは雰囲気ですよ雰囲気!そーれいきますよー!」


 たぁんたぁんたぁん


お「ぎゃー!!!」

お「兄者ーーー!!!」

お「兄貴をよくもギャ!」

ア「あたし達を忘れてもらっちゃ!」

ソ「困るっすよ!」

コ「完全に不意打ちだけどね。黒蹴さん、アジト見つけましたよ。洞窟の出入り口の床全部凍らせてきました」

黒「うん! じゃあちょっと縛ってギルドに報告しよっか!」


 こうして 突然襲ってきた男団はぶったおした。

 後で聞いたら、盗賊団だったらしい。

 出入り口で滑って出られなかった残党たちとボスは、ギルドの冒険者さん達がぼっこぼっこにしたらしい。

 後でギルドにいたおっさん達を見たら、綺麗に洗われて牢屋に入れられてた。

 あの時みんな同じ顔に見えたのに、洗った後見たら全然違う顔だったな。


 あのアハハハハって言ってた人は、おっさんじゃなくて青年だった。

 盗賊としてあの辺に住居移したのは最近だったらしくて、近くにいい水場を見つける前だったからお風呂とか入ってなかったらしい。

 イケメンだったのにもったいない。


 黒蹴と後輩冒険者君たちはクエスト以外に臨時収入もらったらしい。

 俺はハープ弾いてただけって盗賊さん達が証言したから、何ももらえなかった。


黒「ニルフさん、僕ご飯おごりますよ」

ソ「黒蹴さん、俺達もいくっす!」

ア「ニルフさん居ると、酒場もりあがるもんね!」

コ「酒場はダメだよ2人共。音楽せがまれて、食べる暇ないでしょうし」

黒「うーん、何食べたいです? ニルフさん」

ニ『大丈夫だよコナユキくん。俺、酒場のシチュー食いたい!』

黒「じゃあ、酒場に行きましょうか!」

ア「わーい!デザートデザート!」

ソ「ニルフさんが来た日って、デザート無料になるんっすよね!」

コ「それ完全に普段酒場に来ない人が音楽目当てに来てるだけじゃないかな!?本当に大丈夫ですかニルフさん!?」

ニ『大丈夫大丈夫!さあいこう!!!』

黒「デザート食べますよぉおおお!!!」

若〔黒蹴さん、はしゃぎすぎですわ!?〕

コ「ん?今女性の声がしませんでしたか?」

黒「気のせいだよコナユキくん!さあいこーう!」

「「「はい!!!」」」


 確かに酒場に行くと、ハープや笛をせがまれて中々食べる暇はない。

 でも、こういうのも結構いいかなって。

 ちょっと思ってる。

 俺だけデザート食べ放題だし!!!







黒「いやぁ、食べましたねー」

若〔そういえば、交代の時間・・・〕

ニ『・・・あ”っ』


次回メモ:作


いつも読んでいただき、ありがとうございます!!!

この胃腸の不快さは夏バテというものか・・・!

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