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勇者だったのかもしれない  作者: ぷっくん
地面に向かって突き刺され!!
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泉に出発&到着(はやい)

「魔物から魔族が生まれるかだってぇ? 

 結構珍しい事らしいが、無くは無いぞ?」


 喫茶店に行くってピンキーに付いてったら、たまたま隣に座って居たオジサンと、魔族の生まれ方の話になった。

 なんか知り合いに学者がいるらしい。

 難しい話をしてるけど、若葉も一緒に来てるから安心だ!

 俺が分からなくても若葉が分かってくれるさ!


「一般的には魔族は、魔族から生まれますね」


 バーテンさんまで話に加わってきた。

 さっきまでピンキーと難しい話してたのに、もういいのかな?

 あれ、ピンキー既にこっちに来てるわ。

 めっちゃ凄い勢いで、こっちの会話の内容メモってるわ。



 覗いてみると、


 ・地上にも魔物はいるけど、そこから魔族は生まれるのか?

  例:ハーピー


 とか考察まで書いてあった。細かい字でびっしりと。

 


「変な生まれ方する奴とかもいるらしいけどな」

「昔と比べて、魔界にも日に耐えられる者が増えてきているらしいぞ」

「ところで≪泉≫で見つけたとか言ってたな、お前さん達。

 ≪泉≫といやぁ、なんか各属性を宿す≪泉≫があって、そこで力をもらうとか聞いた事があるな」

「それはガセだと聞きましたが。大精霊がそこに居ない為、力は授からないと」

「首都のお偉いさんだけが手に入れられる力じゃねえのぉ? 金の力とかでさぁ」

「なんだ?アンタは精霊を肉眼で見れるのか?なんで居ないって分かるんだ?」

「見える奴ぁまれだろぉ?皆がそう言ってるって意見を俺は述べただけでなぁ」

〔喧嘩しないでくださいまし〕


 ちょ、周りでお茶飲んでたお客さんまで混ざってきたぞ!

 冒険者同士で喧嘩っぽい会話まで始まってて、慌てて若葉が止めてた。


 でもなるほど、魔族でも精霊見える人はまれなのか。

 それに、≪泉≫を目指すのは間違って無さそうだな。


〔ありがとうございます、皆さん〕

 

 若葉がお礼を言うと、喫茶店のカウンターに座ってたおじさんたちがデレデレした。

 そいえばずっと喋ってるけど、大丈夫なの若葉?


〔今更ですの!?〕

「こういう大きな街には様々な姿の方々が集まりますからね。

 変わった姿の方でも、そういう魔族もいるのだな、というものですよ」


 バーテンさんがコップを丁寧に磨きながら教えてくれた。



「つまり、地上で生まれた魔族が天海や魔界に散らばった事により、そこで交配が起こり、日に強い者が生まれたって事かな?

 天海族も、昔から魔族と交流があったと言っているし、血が混ざってもおかしくは無いだろうし!」

〔ピンキーさん、すごく生き生きしてますわね〕

『だな。入り浸ってると思ったら、いつもあんな会話してたんだな』

〔それにあの子達、珍しい生まれ方をした魔族だと言われてましたわね〕

『だな』

「それそれ! 俺、魔物が魔族になる様子を見たのかもしれない!!!」


 ピンキー、大興奮。


 キャーキャー喜ぶピンキーと一緒に宿に戻ると、5人が嬉しそうにしがみついてきた。

 ピンキーだけに。

 俺にはギュってしないの? って聞いたら、チョップとかパンチとかされた。

 解せぬ。


 



 

 *







 次の日。

 ≪泉≫に向かう事になった。


 ここから泉へはかなり遠い。

 泉に向かえば、しばらくはこの街に戻れなくなるだろう。


「それじゃあ、行ってきます」

『また来るから!』

「行ってらっしゃい!元気にやるんだよ!!!」

「うわぁあああんオバちゃあああん」


 泣き崩れてオバちゃんにしがみつく黒蹴。

 ちょっと大げさじゃね!?


 そして俺達は無人の門を抜けて街を出て、人気のない森に入る。

 あの、リザードマンに送ってもらった森だ。

 そして少し奥に行ってから、腕輪の宝石(もともと武器についてたやつ)から地図を出して、転移をする。

 転移先はもちろん・・・。


「水の≪泉≫に到着しましたー!!!」


 一瞬で着いたのに、馬車で長旅したみたいに腰を反らせる黒蹴。

 おっさんか!

 おっさんといえば、そういえば。昨日の喫茶店のマスターとかおっさん達に挨拶してねえな。


『ピンキー、喫茶店に挨拶したん?』

「してきたよ? ほら、宿屋出る前に出かけてたでしょ俺」


 そういえばそうだったっけ?


〔綺麗な所ですわね〕


 若葉が、うっとりとした声を出す。

 釣られて見回すと、空からは一筋の光が泉に射しこんでいて、まるで雲の切れ目から差し込む日光のようだった。

 きらめく泉の周りには、美しい薄い色合いの花畑。

 一部分だけ花畑が大きく枯れて地面が露出してる所があったけど、ピンキーのいってた毒っぽいものはどこにも見当たらなかった。


「おー、地上のより精霊さん、薄いガラスみたいな色してはるわぁ」


 ユーカが杖を覗き込みながら精霊を見てるっぽい。


〔本当ですわねぇ。この形状は、西の国のと同じ形ですわ。・・・あら?〕

「どしたん若葉ちゃん。・・・ん? なんやアレ」


 同じく精霊の見える巫女の若葉が楽し気に話してたら、急に あら? って言った。

 どしたんだ?

 ユーカも何か見つけたっぽいので、着いていく。


 そこには。

 水の泉の横に、小さなさびれた石像があった。

 傍には、真新しい小さな花が添えられている。

 

「道祖神のようなものかな?」

「この前は花は無かったな」


 銀とピンキーも像に気づいて、会話しながら歩いて来た。

 黒蹴来ないなって思ったら、地面の露出した場所に五つ子と一緒に寝転んで日向ぼっこしてた。

 ベリー枕にして、腹の上にプラズマ乗っけてる。


 おいお前もコッチ来いよ!!!







 すっかり苔むし、誰の像かも分からなくなったその表面に触れると、簡単に苔がボロボロと落ちる。

 石像の台と思っていたものは、石の板だった。周りに豪華な装飾が彫り込まれている。

 その表面には・・・


「アルファベット!?」

『もひゃっ』

〔きゃぁ!?〕


 ピンキーが俺を突き飛ばして石像にしがみついた。

 回転してコケた俺が起き上がった時には、すでにピンキーはメモを取り出して必死に解読しているところだった。

 ちょっとぁコッチ見ろよぉ!


 数刻後。

 ピンキーは書きあがったメモを見つめて、唸っていた。


「これは・・・英語じゃないな。ローマ字でも無いし。・・・いや、この文字。これはアクサン! この特殊文字が使われるのはf」

「これフランス語ですね!」


 急に元気な声がした。

 ピンキーの頭の耳の横からひょっこり顔を出した黒蹴が、メモを見てサラっと読んでいく。

 

「読めるの黒蹴!?」

「テレビでやってるの見てたら読めるようになりました」

「!?」


 なんかピンキーが凄い顔してる。

 一瞬落ち込んだっぽいピンキーだったけど、その後は黒蹴と一緒にメモを解読してた。

 ちなみに俺達は≪泉≫に武器さして≪登録≫してみたり、五つ子ちゃんやベリー達と花畑で遊んだりしてた。

 銀にはハニカミながら花の冠送ってるのに、なんで俺にはパンチしかくれないの? 五つ子ちゃんよ。



 そして夕方。


「おわりましたー!!!」


 嬉しそうな黒蹴の声に2人を見ると、ガッツポーズする黒蹴の横でピンキーが顔をぐったり伏せていた。

 なんかブツブツ言ってる。

 気になるからシルフに頼んでみると、


「フランス語専攻受けた俺より解読早いとか」


 って言ってた。

 なんのこっちゃい。

 後で聞いてみたら、「フランスにいるアニメ好き仲間と交流を図るために覚えてる所だった」らしい。  多彩だな。



 さて。

 2人が解読した、石板の文字。

 それは、この世界で≪勇者≫として戦った、1人の女性の思いがつづられた物だった。

次回メモ:石碑


いつも読んでいただき、ありがとうございます!!!

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