情報収集
その後、さっそく宿に向かった。
さっきの喫茶店のマスターおすすめの店だ。
「ちょっと裏通りにあるらしいけど、いいところらしいよ。
ここから離れてるのが難点だけどね」
言いながらピンキーはすごい勢いで紙に何かメモってる。
チラ見したら地図かいてた。またあの喫茶店に行く気満々だな。
大きめの裏道をクネクネ歩く。いや、道がクネクネしてるんだよ?
小さめの工房とかが多くなってきた。
見かける人々も、「ちょっと名が売れるようになってきましたよー」って感じの人が多めな感じだった。
大通りから行く道もあるそうだけど、人が多くて時間かかるだろうからって、マスターが教えてくれたらしい。
「この街に慣れてきた、中級冒険者って感じの人が使う道みたいだね」
周りを見回しつつ、ピンキーが言う。
何あれすごく落ち着いてる!!!
ユ「(あっちこっちに色々機械置いてあるから、また暴走するかと思ったけど、落ち着いてるなぁ)」ヒソヒソ
若〔(マスターと散々話してましたもんね)〕ヒソヒソ
黒「(スチームパンク、でしたっけ。もう飽きた、とかならいいんですけれど)」ヒソヒソ
ユ「無理やろ!」
「何が無理なんだい?」
地図を見ていたピンキーがキョトンとこっちを振りかえる。
サッと顔を反らす黒蹴達。
2人共、目、ちょっと泳いでるぞ。
そして、30分後。ついた先は。
黒「めっちゃ普通の宿屋ですね」
ユ「高級でもボロボロでもないなぁ」
銀「だが造りは丈夫そうだ」
皆のいう通り、パッと見もじっくり見てもスッゴイ普通なのに、なんでかメッチャ丈夫そうに見えるな。
その名も「馬駆祖兎」。何故かピンキー達の使う文字に似てる気がする。
ニ『あれニホン語か?』
黒「それっぽいですよ・・・ね?」
ユ「でも読まれへんな。なんて書いてあるんやろ?」
ピ「うま・・・かける・・・そ・・・うさぎ? ・・・まさか、いや、でもそれは・・・」
銀「入るか」
そのままブツブツ言って止まったピンキーを置いといて、とりあえず中に入ってみた。
分厚い木で作られた、重そうに見えるドアを銀は片手で押し開ける。・・・何故か一瞬首をかしげた。
『どしたの銀?』
「いや・・・このドア」
「いらっしゃいまっせー」
明るく甲高い声が大きく響く!
一瞬でそっちに注目しちゃった。すぐに銀に目を戻したけど、銀もすでに声の方を凝視してた。
ごめん銀、後で聞くから!
ドアを開けてすぐの玄関ルームには大きめの横長の机が置いてあって、1人の恰幅のいいオバちゃんが笑顔でこっちを見つめていた。
その周りの長椅子には、冒険者っぽい人達がたむろしてる。
〔あそこが受付のようですわね〕
若葉の言葉に頷いた銀が、受付に向かって歩く。まだピンキーは入ってきてない。
銀がオバちゃんに「通りの外れの喫茶店のマスターに紹介された」とか「しばらくこの街に滞在したい」とか言ってる間に、受付を見回してみた。
地上の宿屋はそう変わりは無かったけど、魔界はどうなんだろ。ちょっと気になってた。
机の上には、ベルとかノートとかが置かれていて、奥の壁には鍵が吊られてる。
なんだ。地上とあんまり変わり無いなぁ。
「変な機械とか置いてないんですね」
「電話とかあるんかと思ったのに」
同じようにアッチコッチ見回してた黒蹴兄弟も、なんだかガッカリしてた。
「なんだい? あんたたち。こんなシケた宿屋に珍しいもんが置いてあるわけないだろ?」
俺達の様子を見てた周りのお客さん達が、その言葉で大きく笑う。
「さ、あんたたち、部屋に案内するから付いておいで。
ほらほらお前さん達も笑ってないで、しっかり宿代稼いで来な!」
「相変わらず手厳しいなぁ女将さんは」
「うちのカーチャンにそっくりだぁ」
受付から出たオバちゃんは、お客さんと軽口を交わすと、すぐに俺達に手招きをする。
仲いいんだな お客さんと。
そう思いながら玄関ルームの横にある廊下に差し掛かった頃に、お客さんが叫んだ。
「新しい客 逃すなよカーチャン!」
「誰があんたのカーチャンだい!」
すぐに言い返したオバちゃんに、周りが笑いに包まれる。
なんかいいなぁ、この宿。ずっと泊まっててもストレスが少なそう。
それにしてもオバちゃん、引きずるくらい長いスカート履いてるな。足が見えない。転ばない?
しばらくして走ってきたピンキーと一緒に宿泊中の注意とかの説明を受けて(ほとんど普通の宿屋と一緒だった)、いい宿だねって感想言い合って。
とりあえずこの街を拠点に動くことになった。
部屋割りは、一応ピンキーと俺と銀で一部屋。そして黒蹴とユーカで一部屋だ!
ユ「嫌やわ、にーちゃんと一緒とか!」
黒「僕だって好きで一緒の部屋になってるわけじゃないですよ!」
ピ「敵とか襲ってきたら、1人だったら危ないし、ね?」
ユ「それやったら若葉ちゃんと一緒でええやん!」
『〔えっ?〕』
ユ「いや、若葉ちゃん女子やん?」
『〔あっ〕』
忘れてた。
部屋割りは、ピンキー・俺・銀・黒蹴で一部屋と、ユーカと若葉 (とベリーとプラズマ)で一部屋だ!
狭い。
「ちょっと狭くないかい?」
オバちゃんにも言われてる。
「ま、また空き部屋が出来たら一部屋取りますので・・・(魔界のお金稼がなきゃ)」
「そうかい? じゃあ部屋空いたら声かけるよ!」
ピンキーの返事を聞いたオバちゃんが豪快に笑いながら部屋を出て行った。後でご飯だから食堂に来るようにね、って言いながら。
この宿に来てから笑い声しか聞いてない気がする。
さて。
まず地上のみんなを呼ぶために、≪登録≫出来る場所を探さなきゃな。
*
『ふぉおおああああ! 寝てた!』
ご飯の時間過ぎてた!!!
若葉がいつも起こしてくれるのに! って、若葉はユーカんとこか。
『まだご飯残ってるかなーっと』
「あ、ニルフおはよう」
食堂に顔を出したら、ピンキーが座ってた。
白い塊を棒でつまんで食べている。
「もう昼ごはんだよ?」
『寝る前に言ってたのは何ご飯だっけ』
「晩御飯」
半日寝てたんか、俺。
「向こうのカウンターで食事受け取れるよ。
あ、そうそう。あの後色々聞いて回ったんだけどさ」
ピンキーが、机に置かれた箱から2本の棒を取り出して、俺にスッと差し出しながら言う。
「魔界には、四天王がいるらしいよ」
次回メモ:(仮)
いつも読んでいただき、ありがとうございます!!!