おいでませ魔族の村
ベリーに馬乗りにされてたのは、ポッポルという若いリザードマンだった。
なぜすぐにリザードマンって分かったかというと。
「以前、東の国の森で他のリザードマンに会った事があるんですよ」
『あの時のリザードマンより超デカい・・・』
「なるほど、そうでしたか」
地上にもいるんですね、といって笑っていた。
ポッポルは全身を鮮やかな青い鱗で覆われていて、めっちゃ背が高かった。ピンキーの倍くらい?
頭には短い円柱の帽子のようなものを被っていて、皮膚と同じ青でそろえていた。
帽子は若干斜めにかぶっていて、片目を隠している。
『左目、怪我ですか?』
「これかい? ファッションだよ」
ファッションだった。リザードマン、おしゃれ。
そんな彼は今、爽やかな笑顔を浮かべながらベリーをモッフモフしている。
腹を出してされるがままのベリー。あれ? さっきまで牙剥いてなかった?
ベリーは満足したのかワフッと鳴くと、尻尾を振りながら森の奥に歩いていった。
ポッポルが立ち上がる。
「さあ、君たちも案内しよう」
彼はそう言って、俺達を振り返った。
*
森を抜けた先は、開けてた。
森と同じ茶色い材料で作られてるっぽい家が立ち並んでる。
あっちこっちに様々な大きさの、老若男女のリザードマンたちが生活していた。
それぞれの家の前には小さめの箱みたいなのが置いてあって、中に色々入っている。
干した肉が吊ってあったり、乾燥に強そうな果物が置いてあったり。
「店みたいですね」
「間違ってはいないよ」
黒蹴の問に、ポッポルが答える。
デケぇリザードマンに見下ろされると、ちょっと怖いな。
なんでも、各家で「採取したり作ったりしたけど消費しきれないな」ってやつをブツブツ交換してるらしい。
魔界のお金でも、商品同士の交換でもいいらしい。
村のリザードマンたちは一瞬俺達を見て止まったが、何かを納得したみたいに「あぁ」って感じで日常に戻って行った。
なんだろ、土の大精霊の力?
「たまに旅の商人が訪れるからね」
『なるほど』
ポッポルの説明に納得する。って事は、俺達このままでも商人として怪しまれずに魔界まわれそうだな。
≪あら?≫
『どうした若葉』
≪いえ・・・。
(あの、周りのリザードマンの皆さん、鱗が茶色がかっているんですが、ポッポルさんは青いなぁ、と)≫
『あぁ・・・』
個性じゃね?
しばらく村を歩いていると、ユーカが呟いた。
「リザードマンって、洞窟とかに住んでないんやなぁ」
「・・・君たちの出会ったリザードマンは洞窟に住んでいたのかい?」
「うぅん、ウチのイメージなだけやけど。にーちゃんに聞いたんは、森で人族と一緒に居ったって事だけやわぁ」
「あのリザードマン、魔物と戦って、ベリー守って死んじゃったんですよね・・・」
『助けたかったな』
「はい・・・」
あの時、テイマーの人族の男達がリザードマンとベリーを魔物と戦わせて大笑いしてた。
ボロボロになってる2人を助けようともせずに、逆に傷つけて。
それを見てイラッとしたのが銀とピンキー。
『あんときの銀とピンキー、怖かったなぁ・・・』
「はい・・・!」
特にピンキーが怖かった。
「(でもこの事は、ポッポルさん達には言わない方が良さそうですよね)」
『(だな。人族敵対だーとかなったら怖い)』
≪(それよりもその話しましたら、人族とバレますわよ?)≫
ほんとだ。
ナイスアシスト若葉。
「(それよりもさぁ)」
なんだ? ユーカが会話に混ざってきた。
「(ウチら、言われるがままホイホイついて来たけど、これ大丈夫なん?)」
「(だ・・・。大丈夫でしょう。ベリーいますし)」
『(大丈夫大丈夫。ベリーなついてるし)』
≪(大丈夫でしょう。ベリーさんが進む方向に来ていますし)≫
「ベリーへの謎の信頼感!!! いやウチも信頼はしてるけど!」
「キャン?」
ヒソヒソ話を忘れて叫ぶユーカの声に、呼ばれたと思ったベリーが振り返る。
首をかしげたひょうしに、首輪にいつも下げている一枚のウロコがシャラっと揺れ、天井からの光を一瞬、青く反射した。
次回メモ:石とウロコ
いつも読んでいただき、ありがとうございます!!!
リザードマンの話は、章「戦闘開始!」の「森」と「狼」にあります!