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勇者だったのかもしれない  作者: ぷっくん
地面に向かって突き刺され!!
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アイツが起きる前に岩山を出発しよう

 こっそり逃げようとしてた俺達は、まとめかけの荷物を持って走っていた。

 地面がうねって皆コケた。

 銀だけ空中で投げナイフ投げてた。

 

 何が起こった!?

 顔にべっちゃり付いてる木くずを払う前に、銀がナイフを投げた方向を見る!


 パキィンって音と、男の声。

 そこには。


「警戒しなくていいザンス。アテシもやり過ぎたザンス。」


 アテ氏が立っていた。

 地面にコケてる俺達は顔を見合わせる。

 起きる前に逃げようと思ったのに!!!


 アテ氏はいつの間にか、また樹の皮の盾っぽい服をまとっていた。殻の付いた木の実の端っこみたいな所から、顔だけにょっきり出てる。

 ピンキーがミノムシみたいだと言っていた服から見える、イケメンなその顔は、怒っていなかった。


『どっちかっていうと、疲れてる?』

「当たり前ザンショ!?」


 クワっと目を吊り上げるアテ氏。ぎゃぁ怒った!!


「怒ってないザンス!」

「どっちかっていうたら、ツッコミやんなぁ」


 ユーカの言葉に皆ウンウンうなずいていた。

 なんでだ?


「ふぅ・・・。まあ、座るザンス。もう危害を加えるつもりは無いザンスから」


 アテ氏の様子を見たピンキーと銀がパッと顔を見合わせ、俺達に「従おう」と耳打ちをする。

 俺達は、さっきの泉の周りに再び、レジャーシート(っていうらしいこの布)を広げて座った。






 *






「ふぅ」


 白いお茶を飲んだアテ氏が一息。それを見たピンキーが茶菓子を出す。


「良ければこれもどうぞ。このお茶、珍しいでしょう。これは天か・・・」

「天海の葉を使ったものザンスね。よくいただくザンス」


 その言葉に、俺達は驚く。


「天海に行った事があるんですか!?」

「違うやろにーちゃん、天海経由で魔界にきた人にもらったに決まってるやん!」

≪そ、そうですわよ! 黒蹴さんの言葉だと、魔族の方が地上を経由して天海に訪れているという事になりますものね!?≫


 黒蹴の言葉に、ユーカと若葉が続けざまに突っ込んだ。

 俺は『飲みなれてるんだな』としか思わなかったけどな!


 と思ってたら、アテ氏がチラリと俺を見た。なんだ?


「そうザンスよ? ここから、ほとんど人族は降っては来ないザンスが、ときたま天海族が降ってくる事があるザンス。

 アテシはそれを送り返す事もしてるんザンスよ?」

≪魔族が、天海族を助けているんですの・・・?≫


 震える声で答える若葉。それを、アテ氏は鼻で笑った。ふふんって。お茶の湯気が鼻息で飛ぶ。


「お嬢ちゃんにとっては信じられないようザンスね。

 その理由は分かりましテヨ。どうせ地上では 魔族は悪、という話がいまだに伝わっているのでショウ。

 でもね、お嬢ちゃん」


 アテ氏に真正面から見据えられて、腕の中の若葉ハープが、ごくりと息を飲んだ気がした。ハープなのに。


「でもね、お嬢ちゃん・・・それにはきちんとした、理由があるんザンスよ?

 それに・・・アテシは魔族ではありませんコトヨ」

≪それは・・・、一体どういう。それに、魔族でなければ、貴方は・・・≫

 

 若葉の言葉に、アテ氏は微笑んだ。意外だなぁ。


「理由は自分で考えなさい、若い巫女よ。そしてアテシの正体、それは」

「大精霊、ですよね。それも、地上では見つかっていないと言われている、土の」


 意外なことに、答えを言ったのはピンキーだった。


≪土、ですの? あり得ませんわ! だって、土の世界樹は魔界を封じ・・・あ”っ≫


 なんか若葉が、≪言っちゃダメな事言っちゃったー≫って声を出した。

 そいえば、いつの間に若葉しゃべりだしたんだっけ!? 泉に浸けてもしゃべらないってちょっと心配してたのに、気づいたらベラベラしゃべりまくってるよ!


「お嬢ちゃんが聞かされていたのは、これザンショ?

 島の世界樹の真裏の海底に土の世界樹はある。魔界との出入り口を封印している。

 封印が解けると、木が生えるのではなく、木の形に海底が裂ける。

 土の世界樹がある場所は、「海の滝」とよばれている海域。どうザンス?」

≪うぅう・・・世界樹島だけの秘密だったんですが・・・≫


 秘密うっかりしゃべっちまったのか。そりゃ≪あ”っ≫って言うわ。

 そのまま若葉がしょげてしまったので、ピンキーと銀、アテ氏が会話を始めた。

 難しかったのでいつも通り3人で聞き流していたら、アテ氏が「貴方アータ達も何かないザンス?

答えるザンスよ」って言いだした。

 どうやら会話が久しぶりらしくて、もう少し楽しみたいらしい。


『んじゃせっかくだし? アテ氏って男? 女?』

「精霊に性別なんてないザンショ」


「ウソやん!? 水の大精霊おねえさんとか火の大精霊ちゃらおとか性別全面に押し出してたのに!?」

「あれはあの方達の趣味でしょうネ」


「そういえば! プラズマ(雷の大精霊)もパッと見ても性別がありませんよ!?」

『そりゃ小動物だし』

「ウチら、プラズマの性別調べたことないし」

「パッと見て分からないデショ」

「えぇぇ・・」

「・・・きゅ?」


 道具袋で寝ていたプラズマが起きた。

 その後もしばらく皆でお茶を囲んで、さっき聞き逃した銀とピンキー達の質問の内容を聞いたり、地上や天海での俺達の冒険を語ったりした。

 なんでも、この木は俺達の居た地上を丸ごと作っている樹らしい、とか、天海で最初に見たあの透明な謎の樹は、光の世界樹らしい、とか。

 あっちの方角には村があるようだ、とか。


 そのころにはすっかりミノを脱いだアテ氏は、茶色い系のふぁっしょんに身を包んだ、細身で背の高いイケメンだった。

 あの虫とか虫の脚っぽい鞭とかはミノの効果らしい。


 久々に他の大精霊と会ったらしいアテ氏は、プラズマとも楽しそうに会話していた。

 そして。


ア「すっかり引き止めてしまったザンス。すまないザンス」

ピ「いえ、こちらも貴重な話を沢山聞けましたし」

銀「助かった」

ア「アテシに聞かなくとも、雷の大精霊に聞けばよかっただろうザンスに」

黒「プラズマ、樹から離れると、気合入れないとただの小動物になっちゃうんですよ」

プ「きゅるるっきゅ~?」

ア「本当ザンスね・・・先ほどまでの荘厳な雰囲気が無くなってるザンス」

ユ「小首かしげとるなぁ」

若≪それでは土の大精霊様、わたくし共はおいとま致しますわ≫

ア「ご丁寧にどうも、お嬢ちゃん」

ニ『またなーアテ氏』

ア「アテ氏じゃないってのニ!」

ニ『語尾ブレブレですよ』

ア「キィィィイイ!!!」


 キィイイイってなってるアテ氏に引きつった笑いをしてたピンキーが、最後に


「またしゃべりに来ますね」


 と言うと、アテ氏は出会ったうちで一番の良い笑顔で笑った。

 俺達が立っている巨大な岩山の表面が、グニャリと歪み、整備された道になる。


貴方アータ達が来るときには、いつでもこの道を用意しておくザンス」


 アテ氏が用意してくれた道は、とても降りやすかった。

 これならいつでも来れるね、と。

 黒蹴が、プラズマに話しかけていた。







 -*おまけ*-------------------

 さっきアテ氏に村があると教えてもらった方角に歩いてるとき、ユーカが不思議そうに銀に尋ねた。


「泉に武器つけるまでニルフの声全然聞こえへんかったんやけど、なんで銀はニルフの言葉分かったん?」

「口を読んだ」


 スゲエ銀。でもなんで俺の口の動きが分かったんだ?

 いつも口元隠すように、マフラー巻いてるのに・・・。


≪ニルフさん!? マフラー置き忘れてませんか!?≫

『あれ・・・ない!? 樹の天辺てっぺんに置き忘れた!?』

「あ、僕持ってました。スイマセーン」


 そういえば魔界に来てすぐの、目が覚めたときに黒蹴に取られたままだったわ。

 巻きまき。

 うん、あったかい。

次回メモ:竜


いつも読んでいただき、ありがとうございます!!!

今のところパソコン大丈夫!


ピンキーは、アテ氏の「この領域の大精霊の許可を得なければ、魔法も精霊達も、使う事は出来なくってヨ」という言葉から、アテ氏が大精霊と気づいたのかもしれない。


前話での黒蹴が魔法を使えた流れですが、

アテ氏の「負けた」発言→ニルフ達を認めた→泉に武器つければ精霊の協力OK(魔法使える&言葉分かる)→黒蹴バーン! です。

今おもいついt(ry

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