謎の人物アテ氏ザンス
デカめの水音なってビクってしたら鞭にぶち当たってフッ飛んだ。
くっそ黒蹴くっそ! 泉で≪登録≫するとき膝カックンしてやる!
とか思ってたら泉の周りを囲う樹の枝にぶつかった。
背中痛い。それなのに枝、折れてねぇ。ちょうどいいクッションになってる。助かった!
顔を上げると、銀達がそれぞれ飛びかかって行った後だった。
いつもは銀が最前列で敵の攻撃をイナしてるのに、今日はピンキーが至近距離で無数の鞭よけつつ戦ってる。
普段は銀が前でピンキーは若干後ろで魔法補助なのに・・・あ。
魔法が使えないから物理で殴るのか。
普段から物理で何とかしてる銀 (魔法使うのが苦手)と、体内の魔法で狼に変化してるピンキーがボッコボコに敵をボコってる。
狼ピンキーって事は、自身の体内でつかう魔法は発動するんだな。そいえばさっき身体強化魔法使ったわ俺。
ピンキーが鞭を避けつつ左右に飛んで口に咥えた片手剣で切り裂いていく。本体を狙ってるみたいだけど、デカく厚い樹の皮のような服が盾にもなってて、攻撃届いてるのか分からないな。
鞭と共にアテ氏が飛ばす虫は銀が叩き落としつつ、投げナイフで本体を攻撃している。
服の隙間をねらって体に刺そうとしてるっぽい。樹の皮の服は厚かったけど、直接体に刺さったら痛いよね!
そして倒れてたユーカは。
「うぉおおお! ウチ△▽△▽△▽---!!!」
なんか向こうの方から叫びながら走ってきた。
さっきピンキーが運んでいったところだな。
そして全速力でピンキーに走り寄ったかと思ったら・・・ピンキーを追い抜かしてアテ氏を殴りに行った。場所は、アテ氏の真横。
やったね! 鞭とか関係無しだよ! あっけにとられるアテ氏さん。一瞬服での防御忘れて、顔面にユーカの杖を受けた。
「な、なにザンス!? 貴方!」
「▽▽△▽△△▽△△!!!」
「キィイイ!? 鞭が当たらない!? 氷の魔法ザンスか!?」
確かにユーカ、氷の自動ガードがいつも通りに出てたから無傷なんだけど。
「貴方バカザンス!? 魔法使えないって言ってるのに普通に飛び込んできたザンス!?」
そんなの、きっと考えてないよその子!
ユーカは叫びながら杖を滅茶苦茶に振り下ろし続けてる!
「△▽△△△△▽△△△!!!」
「なにザンス? 虫!? 虫を手で掴んだからってそんなにブチギレ・・・イタタタタタ痛いザンス!! 痛いザンス!!!!」
型もへったくれもなく振り下ろされる細くて硬っい杖にひるむアテ氏。
その瞬間、銀の投げナイフが樹の皮の服をすり抜けて本体に刺さった! 何本か。
「ギャァアアアアア!!!」
「ピンキー!」
「△▽△△△銀!」
太もも(?)と腹(?)辺りを押さえて蹲るアテ氏。背中ががら空きだ!!!
そこにピンキーの強力な前足の爪攻撃!!! 剣使わないのかよ!!!
下から救い上げるように、服の下から背中をザックリ切り裂いた!
「参ったわ・・・アテシの・・・負」
うめきながら、ゆっくりと地に倒れ伏すアテ氏。
その後頭部に、ユーカの杖がめり込んだ。
勝負あり!!!
と思った瞬間。
スローモーションのように、ゆっくりとアテ氏が、立ち上がった。
「フフフ・・・参ったと言っているのにさらに追い打ちをかけるこの仕打ち・・・。
さすがは不法侵入者ザンスね・・・。
理解したザンス・・・」
なんかよく分からないうちに不穏な空気になってた。
辺りに茶色い風が舞う。天井の葉がバラバラと落ちる。
なんか声かけてみるか?
『理解したって、なにを?』
アテ氏はフっと笑うと。
「貴方達に、情けなど、無用という事がナァアアアア!」
バッサァアアア!!!!
さっき振るっていた、鞭のような脚を体の周りに広げるアテ氏!
樹の皮っぽい服がバザッと舞い上がる!!!
「アテシの真の姿を見せるときが来たようね」
木の葉と樹の皮っぽい服が舞い落ち、視界が塞がれる。
それらが全て落ち切った時、そこに立っているのは・・・!
あ、見える!
って思った直後、泉から巨大な火の玉が打ちあがって、天井付近に伸びる枝に直撃。巨大な樹の枝が降ってきて、アテ氏の上に落ちた。
「ぎゃんっ!」
「「「『・・・』」」」
無言で樹の下を見つめる俺達。
一瞬「ぎゃんっ!」って聞こえたけど、アテ氏この下だよね?
「いやー、やっと上がれましたー」
銀に連れられてやってきたのは黒蹴だった。
さっき泉に落ちたの忘れてたわ、ごめん。
「先ほどの火は黒蹴らしい」
銀の言葉に、黒蹴を見る。
「実は・・・あの泉けっこう深くてですね、上がろうと思って銃から火の魔法撃ったらうっかり威力失敗して飛んでっちゃいました」
黒蹴、失敗が見つかっちゃったーって顔して頭をポリポリしていた。
うっかりで敵倒すってどんだけだよ。
ちなみにアテ氏。
俺達が喋ってる間ピンキーとユーカが警戒しながら樹の下を覗き込んでたけど、見つからなかったらしい。
しばらく見てたけど一向に出てこないので枝を砕きつつ引っ張り出したらイケメン出てきた。気絶してた。
アテ氏の「真の姿」とやらは見てないけど、埋まってたのはアテ氏だけなのでたぶんこれがアテ氏だろうな!
「ニルフさん!!!」
アテ氏の横でハープ弾いてる俺に走り寄ってくる黒蹴。
さっきまでそこでお茶飲んでたのに、どうしたんだ?
『クッキーなら貰ったけど』
「ずっと聞きたかったんですけど」
『なんだ? 俺が戦いの間何してたかとか?』
「なんでずっと口パクなんです?」
『黒蹴の事すっかり忘れててさー悪い悪い・・・って、え!?』
口パク!?
ちなみに俺はあの時ふっとばされた後、速度上昇の雷魔法でハープ弾いたけど特に皆に変化がなかったので、銀の落とし損ねた虫を木刀で叩き潰してってた。
「そんなことよりも、だ」
銀が急に横に居た。いつもながら驚いた。
「ニルフ、黒蹴の言葉が分かるな?」
『そりゃそう・・・あれ!?』
「声出してくれないと分かりませんよ!」
黒蹴の言葉が分かるようになってる!?
銀とピンキーが相談した結果、黒蹴だけ泉に落ちたからじゃないかって事になった。
あのとき黒蹴は双銃を持ったまま落っこちた、つまり。
地上で武器を泉に浸けたときに≪登録≫出来るように、魔界でもこの行動には何かしらの効果があああああああああ
「ニルフしっかりしろ」
銀に肩持って揺さぶられた。
隣では黒蹴も「あああああ」なってた。
難しい事は考えるの苦手だ。
さて。
せっかく泉を守るアテ氏が気絶してるんだ。
今のうちに勝手に泉に武器つけようぜってなった俺達。
ようやく皆の言葉が分かるようになるぜ!!!
ちゃぷ。
そいえば戦闘中、アテ氏言ってたな。
「この領域の大精霊の許可を得なければ、魔法も精霊達も、使う事は出来なくってヨ」って。
俺も若葉も風の精霊たちに声に出せない言葉を運んでもらってた、(はず)。
そして俺達の言葉を翻訳してるのは、体に取り込んだ世界樹の小精霊だ(ったはず)。
つまり。
俺が泉にハープつけると若葉がしゃべるようになる!
なぜならはーぷをつけることによりほんやくのかぜのせいれいがあああああああああ
やめよ。
あ、膝カックンすんの忘れた。
次回メモ:逃
いつも読んでいただき、ありがとうございます!!!