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勇者だったのかもしれない  作者: ぷっくん
空に向かって駆け上がれ!
151/187

氷の上級魔法

「ちょっとそこの貴女、なの!」

 

 俺の掃除を監視してた氷の大精霊(アイ)が急に大きな声を出した。

 そのままズカズカと、広場の方に向かう。

 アイの向かった先に居たのは・・・


「ん? ウチ? 何の用?」

「んー・・・」


 アイはユーカの目の前で止まると。

 そのままジロジロと眺めまわした。


「な、なんなん」

「ん~・・・」


 アイは、ジロジロと眺めまわす。


〔ところでニルフさん。「ジロジロ」の後は「眺める」では無く「見る」では?〕

『え、そうなの? 適当に言ってたわ』

〔わたくしも詳しくはありませんけどね。あら?〕


 目を離してた間にユーカはアイにマンツーマンで指導を受けていた。

 何があったのかは見逃した。



 しばらく経って、俺が世界樹の根元の片づけを終えた頃。

 ユーカの世界樹で出来た杖の上には、虫メガネのような丸いガラスが付いていた。

 それを満足げに眺めるユーカとアイ。

 アイはなんだか誇らしげだ。

 ユーカはその虫眼鏡を覗き込んであちこちを見回しては「ひょー」とか「すげーわぁ」とか言ってる。

 マジで何があったんだろう。


「なんでもですね」

『うわビックリした』


 真後ろに黒蹴が居た。


「なんでもですね。ユーカには氷魔法の属性があったらしく」

〔ずっと氷がユーカさんを守ってましたものね〕

「さっきその事に気づいたアイさんがマンツーマンで指導をした結果」

『戦闘中にも氷出てたのに、アイは気づかなかったんだな』

〔さっきって事は先ほどの「ジロジロ」の時ですものね〕

「なんか上級魔法が使えるようになったらしいです」

『マジかスゴいな!』

〔どんな魔法ですの?〕

「なんか、虫メガネのぞくと真実の姿が見えるって言ってました!」


 真実の姿か。


「今は世界樹の周りに一杯ちいさな変なやつが飛んでるって言って喜んでます」

〔それ、氷の小精霊では?〕

「あ、なんかアイさんもそんな事言ってましたね」

〔わたくしも見えますわよ? 

 世界樹島にいる小精霊たちは、各地の属性世界樹のある大陸に居る小精霊の姿と同じなんですわ〕

『そうなんだ。確かにシルフは東の大陸に居るのと同じだったな』

「2人共いいですよねー。僕も見たいです」

『今度シルフ石貸してやるから』

「覗き込むと精霊が見える石でしたっけ?」

〔そうですわよ! わたくしの眼鏡も、精霊石で作られて・・・あら? ユーカさん、こちらに来てません?〕


 ユーカが虫メガネをのぞき込んだまま走ってきた。

 足元には世界樹の根っこや地面の枝がザクザク生えてるのに、全部上手く避けて走ってきてる。見てないのに。

 よく転ばないな!

 そして俺達の横に来たユーカは、


 俺を見て「うげっ」

 そして広場で剣を振る銀を見て「うそやぁあああん!」

 その後、銀の手合わせしてるピンキーを見て「・・・ごめん、驚きが薄れた」


 そう言って、口元を押さえて湖の方に去って行った。


「・・・」

『・・・』

〔・・・〕

『何を見たんだ!?』

     

 残念ながら、俺の問に誰も答えてくれなかった。









 *








「そうなの。ユーカもピンキーも、氷の属性を持ってたなのー」


 すっかり機嫌が良くなったアイが世界樹の枝の上でジュース飲みながら教えてくれた。

 あの後ユーカは若干青い顔して戻ってきて、今は樹の根元で寝てる。

 アイの話だと酔ったんだろう、って事だった。


「レンズ覗き込んで走るからなのよ」

「そりゃ酔うね」


 答えたのはピンキー。

 ちなみにピンキーも氷の属性を持っていると言われていたが、アイがユーカをマンツーマンで指導してるうちに自力で上級魔法を編み出してた。

 今は腕だけ狼だ。

 顔だけとか体だけとか狼に出来るらしい。


 顔とか腕だけ狼になるのは なんかカッコよかったけど、体だけ狼になった時は笑ったな。

 体だけ狼の人が直立で立ってるんだもん。

 なんか物凄ものすご面白おもろかった。

 笑い過ぎてちょっと吐いた。


 って事で、俺も気持ち悪くなってユーカの横で寝てる。

 頭上で、風の大精霊じいさんと若葉が同時にため息を付いていた。


「そうなのニルフ、笛、吹いてほしいなの」

『笛? 楽器屋のおっさんが作ったあれか?』

「そうなの! サッサと頼むなのー」

『へいへい』


 俺は銀がくれた水を一口飲んで、笛を取り出して口に当てた。

 そのまま、何度も練習した曲を静かに奏でる。

 若葉に会うために、何度も何度も練習した・・・


〔あら、これは・・・〕


 若葉が、少し驚いたように声を上げた。

 かなり遅れたけど、この曲・・・巫女の舞う神楽で若葉を驚かすのには成功したっぽいな。


「ユーカ、見てみるといいなの」

「ん? 杖?」


 シュっと音を立てて、アイがユーカの横に降り立つ。そのまま杖を拾って、レンズをユーカの目に当てた。


「また酔いそうなんやけど・・・うぉぉおおお!!!」


 急に大声出すなよビックリしたじゃねえか!!!

 って睨もうとしたらアイが俺を睨んでた。

 「曲止めんなよ止めたら命止めんぞ」って目ぇしてる。絶対に止められない。


 ユーカは嬉しそうに世界樹の周りや自分の周りを一生懸命に見ている。

 年頃の女の子がピンキーの行商馬車で綺麗な小物を見てる時に似てるな。目がキラキラしてる。


 なるほど、アイは仲良くなったユーカのこの顔が見たかったんだな。

 ほら、俺を睨んでいたアイはもう、俺を見ていない。

 ユーカと同じように自分の周りを満足げに見回して・・・。


 そのままアイはうっとりとした目でユーカ・・・では無く楽器屋のおっさんを見つめ始めた。

 おっさんはうんうん頷いて俺の曲聞いてて気が付かない。


 あ、これが本当の目的か!!!



 



 後でユーカに聞いたら。

 俺が笛を吹くと同時に、氷の小精霊たちが山のように集まって来たらしい。


きぃの周りをクルクル回ってなー、吹雪みたいやったわ。緑のちっさいやつも混ざっててめっちゃきれいやったー!」


 緑色のは、多分シルフだな!

 俺が楽器屋のおっさんからもらった笛は、氷の世界樹の枝で作られてる為、吹いたら氷の精霊が寄ってくるそうだ。







 *







 とかなんとかしてたらすっかり日が傾いていた。

 もう今日出発するのは無理だな。


〔明日の朝、出発がいいですわね。ただどうやって、あの穴から魔界に行くのでしょうか〕

『さあなー。ピンキーに聞かないと』

「呼んだ?」


 うわぁああ! また俺の真後ろから声が!

 皆俺の真後ろ好きすぎるだろ!!!


「あはは、だってニルフ、面白いんだもの!

 さて、どうやってあそこから魔界に行くのか、だけど」

『湖に穴空いてるのは見たぞ!』

〔飛び降りるというのは予想出来ていますわよ!〕


 問題は、そのままだと地上から魔界に行ったらたぶん死ぬって事だ。

 たぶんじゃなくて絶対死ぬな。頭にさっきのユーカ(ゆきだま)が浮かんだ。


「そこは大丈夫。そのために氷の大精霊、アイに勝ったんだから」

『ピンキー、いつの間に!』

〔では無くてですわね、どういうことです?〕

「それはね、ちょうど魔界への入り口をふさぐ竜巻の中心を通」

「さあ、魔界に行く条件はそろったの! 皆出発なのー!!!」


 それが、ピンキーの立てた魔界へ行く作戦だ!

 っておい! アイの声で全部かき消されたぞ!!!


 あ、ちょピンキー、苦笑いして「さあ行くよ」って行っちゃったし!

 出発明日じゃないのかよおぉおお!!!

次回メモ:穴


いつも読んでいただき、ありがとうございます!!!

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