登録!
穴に落とそう。
倒す方法を思いついてからは速かった。
攻撃が通らないユーカに向かってピンキーが飛び出す。
銀がめっちゃ速くナイフとか剣で至近距離から攻撃して、ピンキーがめっちゃ速く走ってかく乱、その隙間を狙って黒蹴が日頃の恨みを晴らすかのようにものすごいこう、なんか見ない方がいい感じの容赦ない連続魔法をぶちかましてて、若干銀達を巻き込みつつ攻撃。
ユーカはそんなの関係無しに銀とは逆方向から自分の分身をボッコボコに殴りつけていた。
俺の役目?
ハープ弾いて黒蹴の魔法で焦げたり切れたりしてるピンキーと銀の治療だよ!
ちょっと手加減しようぜ黒蹴、いくら回復するからってさ。
強力な魔法をぶつけてかく乱、殴るユーカ、その間を縫って銀がナイフを円形に放ち、先ほど焦げた大地を緩ませた。
そこに上手く誘い込むピンキー(狼)。
最後に黒蹴が背中をボコっと蹴り飛ばして、ユーカは地上に落ちて行った。
と思ったら浮いて戻ってきてる!?
あ、靴からなんか出てる! あれはピンキーと王宮魔導士さんの開発した「空翔ける靴」か!
どうやら俺達の分身は装備まで同じだったっぽい。気づく前に全部倒したけど。
落ちたって思ってすぐに足の「空翔ける靴」で脱出しようとするユーカ・・・だが。
銀の剣の先が、ブーツの靴ひもを「ほどいて」いた。
脱げかけの靴にバランスを崩し、スローモーションのようにユーカの体が地上に引き寄せられる。
固く結ばれて雪像の様だった口が、小さく動いた。
に - ち ゃ ん た す け
その時。
パンッと、黒蹴が靴だけを魔弾で弾き飛ばした。半笑いで。
そのまま、ユーカの分身は絶望の表情で地上へと落ちて行き・・・。
彼女を見つめる俺の横では、ユーカが黒蹴にドロップキックをかましてた。
「にーちゃんも一回落ちてみぃ!!!」
「痛い痛い痛い! ってぇ、あぶっ危ない! 落ちる由佳落ちるって!!!」
仲いいなーこの兄妹。
*
「・・・さっさと≪登録≫するなの。ほら」
ユーカの姿が全て見えなくなった頃。穴を覗き込んでた俺の真後ろから声を掛けられた。
氷の大精霊だった。なんかちょっと不機嫌。
「少し休憩したいですけど・・・」
「ウチもしんど・・・」
「まぁまぁ、≪登録≫してからゆっくり休もう? (アイの気が変わらないうちにさ)」
さっきの飛び蹴りの後、ちょっと喧嘩になってた黒蹴兄妹がちょっと辛そうだったけど、空気を読んだピンキーに促されて湖の方に向かう。
てかピンキー、今2人に向かってボソッと言ってたけどさ、アイにも聞こえてるっぽいぞ。
俺達の事、めっちゃ睨んでるもん。
湖に着くと同時に「サッサと終わらせるなの!」と言われていつも通りにサッサと湖に武器を浸ける。
俺は少し迷った後、ハープをそっと水に入れた。
パァっと光る武器。
その光が収まらないうちに、
「終わったら戻って来るなの!」
アイに呼ばれた。
「流れ作業か!!!」
「まぁまぁ由佳まぁまぁ」
「ぎゃー!!!」
〔黒蹴さんが落ちましたわ!?〕
「さっさとするのなのー!!!」
岸では暴れるユーカをピンキーが一生懸命宥めてるし、湖では武器拾おうとした黒蹴が大きな水柱立ててるし、アイはキレてるし。
天海にきて初めての世界樹への≪登録≫なのに、雰囲気 無ぇな!!!
てか何でアイはあんなにイライラしてるんだ? 負けたから?
さて。
氷の世界樹の石碑に≪登録≫した俺達だけど。
『氷、出ないな』
〔石碑に≪登録≫したからといって、それまで使えなかった方が使えるようになる、というものでも無いようですわね〕
さっき雪像と戦った広場では俺と若葉以外の皆が、氷を出そうと何度も挑戦していた。
でも一欠けらの氷も出ないな。
あ、むしゃくしゃした黒蹴がユーカに魔弾ぶつけた。氷が弾け飛ぶ。ユーカを守る氷の膜だな、あれ。
出ましたーとか言った黒蹴がまた、ユーカにドロップキックされた。
吹っ飛ぶ黒蹴。バカだなーあいつも。
「・・・まだ片付かないなの?」
『ア、ハイ精一杯片づけてオリマス』
それを見つつ俺は、樹の麓に広げっぱなしだった荷物を片づけていた。
さっき黒蹴が試験終ったと思ってお茶飲んでた、アレだ。
まぁ俺の魔法はハープ弾いて効果が表れる奴だから、後々何の効果か分かるってのが多いからいいんだけどさ。
せっせと手を動かしていると、若葉に小さく呼ばれた。
珍しく真剣な声色だ。
〔アイ様のご様子が、少し変じゃありません?〕
『?』
言われた通りにアイを見ると・・・俺を見張っていたアイが、いつの間にか広場を凝視している。
何を見てるんだろ?
目線の先は・・・ユーカ?
次回メモ:上級
いつも読んでいただき、ありがとうございます!!!