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勇者だったのかもしれない  作者: ぷっくん
空に向かって駆け上がれ!
149/187

試験の正解

 目の前で真っ二つになったゆきだまが崩れていく。

 ハープも一緒に袈裟切けさぎり。バッサァ。


 唖然とする俺の横で、銀がフゥっと短く息を吐いた。

 いやいや、カッコよく剣振ってこびり付いた雪払ってるけど!

 俺の格好した雪玉だったんだから、俺が倒さないとダメなんじゃないの!?

 もしかして俺、不合格・・・。


 俺は泣きそうになりながら、周りで戦ってる皆を見回す。

 皆、唖然とした顔で俺達を見ていた。

 ピンキーも噛みあってる途中でポカンとして口を開けたまま固まってる。

 狼のポカンとした顔って初めて見たかもしれない。

 樹の麓では黒蹴が「ファ!?」って感じで止まってた。口からクッキーがボロボロ落ちてる。汚い。


「え、マジで? いいの? あれいいの? ねぇなんか言いやアンタァ」


 ユーカは自分の相手(ゆきだまユーカ)の襟元を掴んで揺さぶってた。

 不思議なことに雪玉たちも、皆と同じように止まっていた。


≪な、なぜ雪像たちも動かないのでしょう・・・?≫


 やっぱり変だよね?!

 バッと氷の大精霊(アイ)を見ると、めっちゃ険しい顔してこっちを見ていた。

 ほらぁああ! なんか怒ってるよアイ!

 ガッデムって顔してるよ試験してる主!

 あぁああああ、俺の合格なくなったあぁぁああ!

 魔界行けねえええ!

 あ、でもいけない方が安全かもしれない。俺戦えないし。

 地上から皆を回復する手段とか無いもんかな・・・。


≪どうしてそこで嬉しそうな顔になるんですの?≫

『若葉、シーッ』


 そのとき。


 遠くの方から「よくきづいたのぅ」と聞こえてきた。

 誰だ?

 顔を上げると、シー君とフーちゃんが俺の頭上をフワフワと漂っていて。

 樹のそばでは、風の大精霊じいさんが俺達に向かってホッホッホと笑いかけていた。


「やはりな」


 銀の満足げな声が広場に響き、ピンキーがボフンと人に戻る。


「分かったよ銀。結局いつも通りか」

≪・・・あぁ、そういうことですの≫

「何なん? ウチにも説明してぇやぁ」


 皆が俺の周りに集まってくる。

 よく分からないって顔をしていたユーカも、ピンキーに耳打ちされて、満面の笑みで杖をブルンと振り回した。


「ほら、にーちゃんもぃ! まだ合格ちゃうで!」

「・・・ぅぇえええええええ!? 何でですかぁ!? ちょっと教えてくださいよニルフさん!」


 それは俺も知りたい。


 ユーカに呼ばれた黒蹴が戻って来て、いつもの陣形になった。

 俺&若葉と黒蹴を中心にユーカが俺達の近くを固め、ピンキーと銀が周囲を守り攻撃する陣形だ。

 ホントはピンキーが俺達の近くを固めてたんだけど、狼フォームになってから外の方が動きやすいって言って外に行った。

 かわりにユーカがこっちに来たんだけど。ユーカって攻撃全部効かないから、全部自分の体で攻撃弾いていくんだよね。

 一回地上でこの陣形試してみた時、黒蹴の後輩のソルジャー君たちがユーカの役割見て二度見してたな。


 そうだ、・・・さっきの銀達の言葉だけど。

 どうやら試験の内容は、自分を模した相手を倒せば合格ってことでは無かったっぽい。

 皆で全員ぶちのめせ! それまでは全員合格じゃないよ、って事だったみたいだ。

 さっきのアイの渋い顔は、それがバレたかららしい。


 氷は真偽を見る属性。

 偽を見破れずして、合格などうんたらかんたら風の爺さんは言っていた。

 詳しい内容は忘れた。


 とか考えてるうちに、銀とピンキー(ゆきだま)が斬り合ってた。

 いや、銀が両手ナイフでピンキー(ゆきだま)かじってる?

 

 向こうではピンキー(狼)とゆきだまが戦ってる。

 いつの間にか向こうも陣形を組んでいたけど・・・。

 真ん中にしているのはユーカ(ゆきだま)だけだ。そっか、ゆきだまは銀がさっき切っちゃったから。

 2人の雪玉の真ん中に立つユーカ(ゆきだま)は、攻撃が効かない事をいいことに、2人の間を行き来しつつたいりょくの回復魔法とまりょくの回復魔法をかけて行ってるっぽい。

 後はこっちに魔法放ってくる。

 黒蹴が相殺してるけど。


 ピンキー(ゆきだま)は銀の攻撃をかわすのに精一杯な感じなのに、ゆきだまはピンキーの攻撃を避けつつもたまにナイフを投げてくる。

 なんか10本くらいバラバラに俺を狙ってくるソレを、ユーカが自分の体ではじき返した。


『杖使えよ!』

「めんどいねん!」

≪また飛んできますわよ!≫

「痛っ!?」


 ごくたまに黒蹴にも向かって飛んでいくけど、それは完全に無視してた。

 たまに刺さってた。黒蹴に。痛いって言ってた。

 

 俺はそれを横目で見つつハープを奏でる。今は戦闘開始すぐだから風魔法たいりょくかいふく

 黒蹴は銀とピンキーに援護射撃してる。

 頭にはさっきの小動物。

 改めて真近で見るけど、焦げ1つねえな。やっぱり。


「きゅるるるっきゅ~」


 小動物が俺を見て鳴いた。

 ホント誰だっけこれ、すっごい見覚えあるんだけ・・・あ、プラズマだこれ!


「今頃気づいたか、馬鹿め」


 急にキリッとなった愛玩動物に罵倒された。

 てかさっきのアレ使えば雪玉全員倒せんじゃないの?


「あれ、使っちゃダメってアイに言われちゃいました」

「我の力に恐れをなしたのだな!」

『最初のはいいのか?』

「大精霊を召喚出来るのも力のうちだから、一回目はいいそうです」

「普通は一度召喚すれば、魔力が尽きるモノだからな! まぁ我は? 黒蹴に自分から付いて行ってるだけだから? 召喚の必要は無いわけだがな?」

「なんで語尾上がってるん? プラちゃん」

『スゲードヤ顔だな』


 二回目は、やったら失格って言われたそうな。


≪あら、お2人共決着がついたようですわよ?≫


 ずっと戦況を見ていた若葉が声を上げた。やっべえおしゃべりに夢中で全然見てなかった。

 若葉は手が出せない分、≪ナイフ○本飛んできましたわ!≫とか≪魔力回復の頃合いですわね≫とか細かい所を教えてくれていた。

 だいぶ楽になるよね、これ。ありがとうな若葉。


 銀達に目を向けると、2人がそれぞれ相手にしていた雪玉が崩れ去るところだった。

 その少し後ろでは、ユーカ(ゆきだま)が杖を握りしめて、歯噛みしていた。


「残るはオマエだけだ」

「どうやって倒そうか?」


 前に立つ2人が、短い会話を交わすのが聞こえる。

 黒蹴達に、それを伝える。


 突如、黒蹴から巨大な炎の玉が飛び出した!

 前衛2人の間をすり抜け、銀達とにらみ合ってたユーカ(ゆきだま)に直撃!!!

 火柱がその場を焼き尽くす!!!


「強い炎で焼いてみましょう!」


 やってやったぜ! って顔でブイサインする黒蹴。

 いや先に言えよ! ビックリするだろ!? ほらもう、銀もピンキーもこっち見る顔引きつってんじゃん!!!


 しかしユーカ(ゆきだま)は無傷だった。


『おい、雪玉ユーカ無事だぞ』

「下の大地は焦げてるのに!」

「にーちゃん、いきなり妹焼き尽くそうとせんといてぇや。もうちょっと心に優しい方法でやっつけてぇや。しかも全然効いてへんし」

「下の大地は焦げてるのに!」

≪少々どころか、全く溶けてすらいませんわよね。

 ユーカさんは氷で守られている訳ですから、炎なら少しは、と思いましたのに≫

「ウチ、炎の大精霊の炎も効かんかったよ?」

『そういえば聞いたな、それ』

「下の大地は焦げてるのに!」


 分かったって黒蹴。燃えた大地は焦げ焦げだよ!


 ユーカ(ゆきだま)は火柱から飛び出してピンキーに飛びかかって、今は銀と交戦中。

 銀が全部の攻撃受け流して、なんとか押さえてるって感じっぽい。

 あ、ピンキーこっちに来た。


 ユーカ(ゆきだま)にばれないように、銀がうまく体を死角にしてる。


「ふぅ、俺じゃ役不足だったよ」

「どうするん? ウチでも相殺するだけやったし」

≪倒すのが無理なら、行動不能にさせるとか、でしょうか≫

『湖に沈める?』

「由佳、泳ぐの得意ですよ?」


 俺達の相談する向こうでは、銀とユーカ(ゆきだま)が物凄い戦いを繰り広げていた。

 剣と杖の切り合い殴り合い。残像が見えるほどの動きを、ユーカ(ゆきだま)も銀も無傷でさばいている。


『すげーな、あれ』

「ハリウッドのアクション映画みたいですね・・・」

「ウチはアクションタイプのRPG思い出した・・・」


 その時、銀が投げたナイフがユーカ(ゆきだま)に弾かれて、焦げた地面に刺さった。

 超至近距離で凄い速さで投げられたナイフ。普通ならこれで勝ってたんだけどユーカ(ゆきだま)だからな。

 ひるませる程度にしか使えない。


 と思ったら、地面に刺さったはずのナイフが消えていた。


『あれ、ナイフどこいった』

「あぁ、地面が焼けてボロボロになっていたから崩れたんじゃないかな。

 ここは天海で地面が世界樹の葉で出来ているから、ナイフの重みで地上に・・・」


 ピンキーの説明に、全員で顔を見合わせる。

 そうだ、穴開けて落とそう。

次回メモ:湖


いつも読んでいただき、ありがとうございます!!!

日にちが過ぎるのが早い・・・!

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