氷の試験
樹にぶつかって気絶して復活したアイが出したのは、俺達の分身だった。
そいつらは滑らかに、腕を回して武器を振る。その動きは、普段見る銀やピンキー達と全く同じだった。
でも本人達より白っぽい。
「雪だるまですか。じゃあ僕から行きます!!!」
叫ぶや否や。
黒蹴が双銃を手に持ち大きな水塊を上段に放った!
水魔法だ!
黒蹴は水を被って、双銃を取り落とす! 地に届く前に、双銃は黒蹴りの放った魔弾の連射で、遠くに飛んでった。
ちょうど、広場状になったここを囲むように広がる、若木で出来た雑草群の中に。
一瞬唖然とする黒蹴、すぐに武器を取りに走る! しかし地面の葉が水で滑って上手く走れない!
それを見て黒蹴は、静かに右手の銃を手放した。そして残った右手の銃に、魔力を込め・・・。
わかったぞ!
そのまま、自属性の特大の炎魔法を出して溶かs
「出番です頑張ってください!」
空いた右手を懐に突っ込む黒蹴。なんか出てきた。
虹色でトゲトゲのちっちゃいのが、懐からぬるんっ。
なんか凄い見覚えがある。
俺が思い出す前に、黒蹴はそれを、ポイっと投げた。
「きゅるるるっきゅ~」
虹色の小動物はくるくるくるーと回って、水まみれになった黒蹴の頭に、ペタりと張り付いた。
振り払おうとする黒蹴。必死に捕まる小動物。頭皮を引っ掻く小動物のせいで、黒蹴は戦いに集中できていない!
あ、黒蹴が双銃のうちの一丁を拾い上げた!
すかさず、尻尾で顔面を隠す小動物!
黒蹴 は ねらいを さだめ られない!
黒蹴が、目をふさぐ尻尾を掴み、そのまま力一杯引っ張った。
必死で爪を立てて抵抗する小動物。
「ぎゅるるるるるるる・・・」
痛そうに鳴く小動物の声が辺りに響く。
がんばれ小動物! もうちょっとで黒蹴の魔法が発動するから!
あれ? でもあいつ、どうやって逃げるんだ? ま、考えでもあるんだろう。
何とか目の前の尻尾を払いのけた黒蹴は、頭上の小動物に銃を突きつけた、が。
同時に、自身を狙う魔法が発動直前だと気づき。
一瞬だけ炎の魔法を銃から出して、足元を乾かした。
そして。
そのまま、背の高い雑草群の中にしゃがみ込み。黒蹴は、黒蹴の視界から消えた。
障害物に守られた黒蹴。対して黒蹴は、比較的広い広場状の所に立っている。
色が地面と同じ白っぽい黒蹴は、背景に完全に溶け込んでいた。ガサガサという音と、小動物の鳴き声だけが頼りだが・・・。
俺みたいにシルフが味方するわけでも、ピンキーみたいに耳が4つある訳でもない黒蹴。
あれは魔法で狙いにくいぞ! どうする!
そして黒蹴は、このまましばらく考え込む・・・。
と思ったら、
黒蹴がめっちゃ普通に、雷の魔法を放った。
最初に黒蹴が隠れた位置に銃口を向けたまま、魔力を貯めに貯めた、特大のやつを。
いやいや、ちょっとは考えろよ。
さすがに最初の位置には居ないだろ?
素早く銃口の先に走った光は、黒蹴が最初に居た地点を焼・・・いては、いなかった。
それは、銃口とは全く関係の無い上空に登っていき。
そのまま、ある一つの地点に落ちた。
まるで、最初から狙っていたかのように、魔法が生きて、その場所を狙ったかのように。
地面に魔法が到達した瞬間、その地点の雑草が焼き切れ、一瞬そこに潜む者の姿が映し出された。
地に伏せ、銃口を黒蹴に向けた黒蹴と、その頭に噛みつく小動物。
その小動物の背に、金色の光が落とされた。
落ちた辺りの地面が弾け、周辺が一瞬の炎と煙に包まれる。
煙が晴れた時。
そこには、バラバラに砕けた黒蹴が落ちていた。
アイが近づき確認すると同時に、煙となって消えていく。しかしどこにも、小動物の姿は無かった。
満面の笑みでアイを見る黒蹴。
頷くアイ。
樹の元にハケる黒蹴。
無言の皆。
「じゃ、僕合格みたいなんで、先に休んでますね!」
え? あの小動物、放置でいいの?!
黒蹴の言葉にビックリして樹の根元を見ると、黒蹴が虹色の小動物を撫でていた。
いつの間に!? っていうか小動物、無傷!? 先に逃げてたのか!?
「黒蹴が珍しく積極的だと思っていたけれど、あれを試したかったんだね」
「だな」
銀とピンキーの、朗らかに会話する声が聞こえる。
「じゃ、次ウチの番かなー」
横では、ユーカが杖をブルンブルンと凄い音させて素振りしている。
〔ニルフさんはどうやって倒すんですか?
というか、わたくしは楽器なのか挑戦者なのか、立場が分かりませんわね?〕
若葉は、既に自分達への戦いに集中を始めている。
『モウ全ク分カラナイヨ!!!』
〔なんで片言なんですか!?〕
だって、あの小動物が色々と謎すぎるんだもん!!!
次回メモ:秘密
いつも読んでいただき、ありがとうございます!!!
あつっ夏あつっ