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勇者だったのかもしれない  作者: ぷっくん
空に向かって駆け上がれ!
142/187

氷の女

 ---*氷の大精霊*---------------

 目の前には半笑いで泣きそうな顔の若い男。

 背中の向こうには思い思いに騒いでいる男の仲間達。

 男の手元には、喋るハープ。

 覇気は無く、どちらかというと捨てられた子犬に近い男の腰には、何故か木刀。


 ここに来るほどの猛者には見えない男の周りには、白く光るアイの眷属達が、ふわふわと舞い降りてきていた。

 -------------------------



 目の前に座る透明な女性は、俺を見て何とも言えない顔をしている。

 さっきまで俺の『ここは氷の世界樹ですか?』って問いに、呆れた顔をしてフリーズしてたのに。


 ちなみにこの透明な女性は氷の世界樹の大精霊で、「見た目は高1の、目の大きい幼め美少女」(ピンキー談)だ。

 スカートは透明で短く、靴は履いてないので生足ズーン!だ!

 なぜか服が透明なのに中身見えないけど。見えないけど。


〔・・・あの〕


 しびれを切らしたのか、若葉が話を切り出した。

 ナイス若葉。俺なに質問しようとしてたか忘れたんだ。

 後は任せた。


〔ニルフさんは質問を忘れているようなので、代わりに失礼いたします。わたくし、若葉と申します。

 元は地上の巫女見習いだったのですが、諸事情によりこのような姿で失礼いたします〕


 若葉の丁寧な言葉に、氷の大精霊の表情が緩む。


「ほう、このようなハチャメチャパーティにまともな人が居たとはビックリなの!

 なんでも聞くがよい!なの!」

〔ありがとうございますですの。それでは。

 わたくし達は地上の都合で魔界を目指しておりまして。こちらに魔界への入り口があるとお聞きしまして、伺いましたのですが〕


 氷の大精霊は、若葉の言葉にウーンと考え込んだ。


「うーん、それなら知ってるんですの。まぁここまで来れられた者達なら、魔界に行っても大丈夫かなーなの。

 だから教えてあげるの! ・・・ふぁっ?!」

「あ、待って、それは俺から」


 立ち上がりかけた氷の大精霊の肩をキュッと押さえて座り直させたのは、向こうで熱弁をふるっていたピンキーだった。

 久々に見たな、あの弾丸お喋りピンキー。前は机に乗せたキッタナイ小さなズタ袋を、王宮魔導士さんと睨みつけつつお互い喋りまくってた。


「ごめんね大精霊さん。俺は行き方を聞いてるんだけど、皆には内緒にしててね。

 分かるでしょ? (・・・あの方法、皆知ったらビックリするよ・・・?)」


 途中まで大精霊の肩に手を乗せてしゃべっていたピンキー。最後の方に急に上半身を折り曲げて、大精霊の耳に口を近づけてボソボソっと呟く。が、シルフ達が拾ってきたから丸聞こえだった。

 耳に息のかかった大精霊がブルブルっと身を震わせるが、すぐにピンキーの言葉に目を輝かせた。


「・・・!!! なの!?」

「うん、きっと皆。フフフ」


 目を輝かせる大精霊と、悪い顔で笑うピンキー。


「そうとなったら早速皆をあそこに案内するなの!」

「よろしくね、氷の大精霊さん。・・・ところで名前、あるの?」

「名前、なの?」


 こてん、と首をかしげる氷の大精霊。

 大精霊なのに名前があるの?


〔もしかして、アイ、では?〕

『あ、ずっと アイ って言ってたもんな!』

「違うなの!」

『違うかったなの』

〔移ってますなの〕

「2人共なに言ってるの?」


 ピンキーが呆れた顔で見てきた。

 だって耳に残るんだもん。


 結局「アイ」ってのはただの一人称らしく、別に名前は無いっぽい。

 アイって、初めて聞く一人称だな。なんでアイなんだ?


黒「アイスのアイ、とかですかね」

ユ「英語!? いやそれやったら目の意味ちゃう?」

ピ「異世界で英語とかおかしくない?」


 うぉ、向こうで喋ってた黒蹴兄妹がいつの間にか来てた。

 スッゲー驚いた。ピンキーはビックリするほど自然に会話に混ざってたけど。

 

 結局何なんだって聞いてみたけど、大精霊の答えは「んー、忘れちゃったなの!」だった。

 でも「氷の大精霊」より呼びやすいので、「アイ」と呼ぶことになった。

 さて、アイの話によると。


「ここの、氷の世界樹のちょうど真下にある、なの!」

「氷の世界樹の真下なん? それどうやって行くん?」

『一面真っ白な(葉っぱの)大地が続いてるもんなぁ』

〔崖とか探します?〕


 しばらく話をしていると。氷の世界樹の周りに、雪が降りだしていた。

 黒蹴のギルドの後輩のコナユキ君が降らせる魔法の雪よりも、弱々しくも儚さが凄いこう・・・〔無理しないでくださいまし、ニルフさん〕・・・はい。

 雪が降り始めると同時に、銀が木陰の外に出ていった。

 そのまま、手に雪を捕まえてはジッと見つめている。


「これが雪か。初めて見るな」

「そうだったっけ?」


 銀の呟きに、ピンキーがそっけなく答えていた。


 さて、どうやっていくかって事になって。


氷「考えてみるといいのなの!」

ピ「ふふ、俺は知ってるからね。皆考えてみてよ」

黒「うーん、ピンキーさん!ヒント!」

ピ「早いね黒蹴!?ヒントは、昔ながらの方法、かな?」

ユ「分かった!この樹を引っこ抜いて気球を作る」

氷「!? 樹を傷つけちゃダメなの!!!」

ユ「じゃあ樹の枝を全部落としてそれでシャベル作って地面を掘る」

氷「だから傷付けちゃダメなの!!!!!」

ユ「はずれかー、じゃあこの樹の周りを掘ってそのまま魔界に落として敵に大ダメージ!」

氷「もっとダメなのぉぉぉぉ!!!」


「そろそろアイが泣きそうだから、もうちょっとヒントあげようか。アイ、頼んでもいいですか?」

「うぅぅ、そうなの、もう見せた方が早いの・・・」


 ピンキーのアイデアで、半泣きのアイが立ち上がった。

 そのまま歩き出した2人に付いていくと、どんどん2人は透明な樹の幹を回り込んでいき。

 ちょうど俺達の座っていた場所から反対側あたりで2人は止まった。

 そこには。


「泉や!石碑もあるわ!」

「さっき幹から向こうの景色見てたのに、全く気付きませんでした!」

『そりゃボコボコの幹越しだったら景色曲がってて見えないだろ黒蹴』

〔それよりも皆さん、大精霊と勝負して≪登録≫しろという事では?〕


 俺達の言葉にグシグシと涙を拭っていた手を止めて、顔をあげた。


「うぅん、それもあるんだけど・・・。もっと湖に近づいてみて?」


 湖?


〔地上の世界樹の泉よりもかなり大きいですわね〕


 あ、だから湖か。

 見ると湖畔には小さなボートが1つ揺れていた。


「ちょうど、中央辺りなのよ。水底を見てみるのよ!」


 4人でボートに乗り込み、言われた通りに覗き込む。ゆらゆらと揺れる黒い水面に、青い月がキラキラと反射していて・・・。


『綺麗だな、見えるか?若葉』

〔ええ・・・!綺麗ですわね・・・〕

「幻想的ですねー」


 4人で月明かりに照らされる湖面の幻想的な光景に見とれる中。

 ユーカが一言。


「でも湖の中、ぜんっぜん見えへんな」


 まあ、夜だもんな。

 ユーカの言葉を聞いたアイの目に、また涙が浮かんだ。

次回メモ:音


いつも読んでいただき、ありがとうございます!!!

ちょっとずつでもポイントが上がっているのって、スライムを倒してレベル上げしてるのを思い出して楽しい・・・!

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