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勇者だったのかもしれない  作者: ぷっくん
召喚者with俺
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召喚の理由 と 今後

 王の話は続く。


「今回、召喚者様がお越しになると知ったのは3日前。人族の信仰する教会の総本山に、神からの神託があったのですじゃ。

 そして神の御使いとしてあなた方をお迎えすると決まったのです。

 しかし、神の御心。なぜあなた方がこの世界に召喚されたのかは、分かっておりませぬ」

「俺達の世界の話だと、≪世界の危機に命を懸けて召喚して、救世主になってもらう≫っていう目的があるんだけどね」


 ピンキーの言葉に、王が続ける。


「なにぶんこの世界は平和でして。争いらしい争い事もここ数百年、起こっておりませぬ」

「つまり。僕達が何をすれば帰れるのかも、分かっていないと・・・?」


 黒蹴は、少し悲しそうに言う。残してきた妹が心配なんだろうな。

 俺は、なにかヒントが無いか王に質問を投げかける。


『ピンキーの言う、世界を滅ぼすような敵は居ないのか?』

「一応人族に害を成すモノとしましては、実際に世界に出没するモンスターがおりますな。後は伝説上の話になりますが、魔族が存在するといわれております。しかしいずれも、世界を滅亡に導くほどの問題には成っておりません。お力になれず、申し訳ない」


 王の言葉に嘘はなさそうだ。ずっと黙っていた、銀が口を開いた。


「なるほどな。では最後に一つ聞きたい。

 この国が召喚者を迎え入れることになった理由は何だ?国同士のやっかいな問題に巻き込まれるのは御免だからな」

「ふむ、そういうことはございませんのでご安心を。余計な混乱を避けるため、国民には≪召喚者≫に関することは全て内密にしております。実際に知っているのは、各国の上層部のみになりますな」


 王は一旦言葉を切った。


「丁度いい機会ですので、各国について説明いたしましょう。

 この世界には3つの大国がありましてな、それぞれ東の大国、西の大国、南の大国と呼ばれております。

 どの国が召喚者様をお迎えに行くかの指定は無かったのですが、西と南の大国は≪大精霊を敬う祭り≫の準備が迫っていた為、本国がお迎えする次第になった訳でございますじゃ」

「≪大精霊を敬う祭り≫ですか?」

「はい、世界にはあの島の世界樹の他に、4つの世界樹がございます。それぞれ火、水、風、雷をつかさどっておりましてな。

 それに応じた大精霊が住んでいるのです」

「オレ達が武器を強化する為に必要だと言われた場所だな」


 王の話に黒蹴が質問し、銀がじいさんの言葉を思い出す。


「そうです。そして祭りと言うのは、失われた最後の一本の世界樹≪土の世界樹≫を鎮める儀式なのですじゃ。

 東が春、南が夏、西が秋、そして世界樹の島で冬の祭りを行って、世界の平和を願います」


 王の話にピンキーが食いつく。


「つまり四代元素である火、風、水、土の他に雷があるって事は、それ以外にも元素があるかもしれないね。雷って事は・・・他は氷、光、闇かな」

「なるほど、ピンキー様の世界にはそのような言い伝えがあるのですな!実は魔法の属性に氷がありましてな。

 詳しい事はそこにいる第3師団隊長に聞くと良いですじゃ」


 王様は近くに控えていた1人の兵士を呼びつけた。30代くらいのムッキムッキの色白背高兵士だ。厳つい。


「魔法や剣術に関してはこの者に聞いてくだされ。あなた方の世話役を命じておりますので。それでは、他に質問はありますかの?」

「あの・・・」


 ピンキーは意を決して言う。


「質問と言うかお願いがあるのですが。俺達に敬語はやめていただきたいのです」


 これは4人で話し合ったことだ。やっぱり王様の方が立場が上だし、ね。後、年上の人に敬語使われると居心地が悪い。

 王はそれを聞いてしばらく止まり、「心意気、感謝いたす。」と言ってくれた。


 *


 結局、なんのために俺達が召喚されたのかは分からずじまいだった。

 何もしないわけにもいかないので、とりあえず今後の事を相談する。

 最終目的は≪黒蹴を元の世界に返す≫って事に決まった。一番落ち込んでいるからな。


 この世界にはギルドがあるらしく、冒険者の仕事を斡旋してくれるらしい。そこに登録して自分の実力を測りつつ、何か動きがあるまで世界樹じいさんの言っていた精霊の石碑に≪登録≫していくことになった。


 王は最後に、精霊の力を集めて行けば何かが分かるかもしれないと言っていた。国でも総力を挙げて色々と調べてくれるそうだ。

 最後に、城の外に出るときは必ず王か、第3師団隊長に許可を取るように言われて、解散となった。


≪神の使いとしてお迎えする≫と言われた時は祭られるのかと一瞬思ったが、神が何の目的で召喚したのか分からない為、好きな様に過ごしていてほしいと言われた。

 本当にいい国だ。他の国も大体同じような感じらしい。


 こんな平和な世界に、なぜ俺達は召喚されたんだろうな。


 *


 *~~~~~~~~~~~~~~~~

 村にはもう居られない。

 さっき感覚で探ってみたら、身に覚えのない【農作業の能力】や【料理の能力】なども持っていた。

 きっと仲の良かった村人達のものだろう。


「あんなに仲良くしてもらったのに・・・。もう二度と奪わないって決めてたのに!」


 悔し涙が頬を流れる。もうあの村にも住めないだろう。

 一緒にいるだけで【能力】を奪うとすれば、父や母の物もすでに奪ってしまっているはずだ。


 この世界が【能力】を持たない者にどれだけ冷たいか、ボクはいろいろな街を回ったことで理解していた。しかも今の時代には魔王がいる。

 村を飛び出し、山を下り、また別の山を登って日が暮れた頃に見つけた一つの洞窟の中で、ボクは身を丸めた。


「これから・・・どうしよう・・・」


 そうして一晩眠り、翌朝、ボクは山を下った。

 *~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 鳥の声で俺は目を覚ました。

 すがすがしい朝だ。

 だが俺は今見た夢の事で頭を抱える。


(これ、前に見た夢の続き・・・か? 【能力】ってなんだ? これが悪魔っていわれていた理由か?

【能力】って この世界では聞かなかったよな。一体どういう・・・)


 そこで部屋のドアがノックされ、俺の意識はすぐに夢から離れて行った。


 *


 異世界召喚3日目。とうとうギルドに出発だ!!!すごく眠い。

 朝っぱらからノリノリのピンキーと黒蹴に叩き起こされて、俺は今、城下町に居ます。石作りの家に石畳が美しい、素敵な街です!人も沢山いる!2人はスイスのような街並みだといっていた。


 銀がいない。既に部屋には居なかったようだ。朝飯の場にも居なかった。とりあえずメイドさんに伝言して、一足先にギルドにやってきた。


 朝8時だけど、ギルド開いているのかな。ギルドの場所は、その辺の店の人に聞いてみた。

 メインストリートをずっと進んだ酒場の横にある建物だそうだ。冒険者が利用するからか、町の出入り口の門にけっこう近い。


 意を決して入る。こういう場合、最初に舐められるとカツアゲのいいカモになるからな。ほんのりと記憶の底にそういう光景が浮かぶ。あれ? 実体験?


 ボーっとしていると、ピンキーが元気よくドアを開け放った。

 一斉にピンキーを見つめる厳つい猛者共の目・目・目。

 お、露出度の多い美人お姉さんもいる!受付のギルド職員さんも、清楚系の美人さんだ!


 その全員が、ピンキーを見つめて目を丸くしている。そりゃそうだろう。確かピンキー、この世界で初めての獣人だ。


 朝早くであまり人が居なかったが、さっそくからまれるピンキー。見た目が中性的なたれ目美人だったのが仇になったな。

 そのまま厳つい男達に連れられて行った。奥でカフェコーナーの椅子に座らされているのが見えた。


 黒蹴が男達の中からピンキーを発掘している間、俺は窓口に向かった。


「いらっしゃいませ!ギルドのご利用は初めてですか?」


 黒髪ウエーブを肩まで流した美人の職員さんが対応してくれる。鼻の下、のびないようにしなきゃ。

 鼻の下を軽くこすってから、俺はシルフ石を使って話す。


「ぎるど ぼうけん とうろく」

「ギルドの冒険者に登録したいんですか? かしこまりました! それではあちらの受付にお回りください!」


 笑顔で案内された受付には、いかついおじさんが腕組みしたままこちらを睨んでいた。戻ってきた黒蹴が小さく「ぶーときゃんぷ・・・」とつぶやいた。俺の中で目の前のおじさんは、キャンプ(仮)と名付けられた。

 無事に戻ってきたピンキーも一緒。耳がボサボサになってるな。


「俺、もう帽子かぶる・・・」


 涙目でつぶやくピンキー。帽子かぶったら獣耳が折り曲がりそうじゃない?


「よおおおぉうこそお! 東の国ギルドへぇぇぇ! 新たな冒険者の諸君!!!

 ここは君という小さな種を芽吹かせる場所! 君たちはどんな大樹に生長するかなあぁあ!」


 うわっめっちゃ声がでかい。てかめっちゃぐいぐいくる。ぐいぐいピンキーの手を握ってる。黒蹴の目が点になってる!ピンキーすごい勢いで引いてる。めずらしい!

 一気に目が覚めた。


「ちょっと! ギルドマスター! またかわいい女の子にちょっかいだしてるんですか~!?」


 キャンプ(仮)の後ろのドアが開き、小柄な女の子が現れた。クリーム色の髪をポニーテールにして、ギルド受付係の服を着ている。まだ13歳くらいなのに大きなキャンプ(仮)をしかりつけた。


 てかキャンプ(仮)、ギルドマスターだったのかよ! マスターがナンパすんなよ!

 ようやくギルドマスター(キャンプ)から解放されたピンキーは既に疲れてぐったりしていた。


 結局しっかり者の女の子のおかげで、3人ともサクサク登録が終わった。普通に契約書に拇印を押して、分かる範囲の個人情報を書くだけだったな。


 契約書は頼んでないのに勝手にギルドマスターが読んでくれた。ごく普通の契約書だったな。死んでも責任は負いませんとか、悪いことしたらギルド会員の権利をはく奪しますとか。平和だ。


 ピンキーの性別をみたギルドマスターが絶句してるのが見えた。恨めし気に見つめるなよ。


 登録が終わってカードを渡された。そこには≪ブロンズ・ふたば≫と書かれていた。


「向こうの掲示板に書かれたクエストをこなしていくと、階級が上がっていくんですよ~」


 カードを渡してくれた女の子職員が説明してくれる。

 階級には≪ブロンズ≫≪シルバー≫≪ゴールド≫があって、それぞれ≪ふたば≫≪わかぎ≫≪たいぼく≫の段階を経て、次の階級に行くそうだ。

 クエストクリアのポイントを貯めていくと昇進できる方式だ。モチーフは世界樹。


 とりあえず1つクエストを受けてみる。俺達は初心者だからな。何を受けよう。


 一番詳しそうなピンキーが萎れているため、黒蹴と俺とで選んでみた。とりあえず≪薬草採取≫かな。

≪薬草採取≫の紙を選んで窓口に持っていこうとした瞬間、肩にポンっと手が置かれた。


 振り返ると両手剣を背中に装備した銀と、息を切らした第3師団隊長(私服)がいた。

 そして銀が言う。


「戦い方も知らずに行くと、死ぬぞ?」


 *


 あの後、城に帰った俺達を待ち受けていたのは王と第3師団の隊長とその他偉い方々からの、お説教だった。


  特に怒られたのが≪護衛役の第3師団の隊長に何の相談もなしに出発したこと≫。

 どうやらピンキーと黒蹴、ギルドがある事に舞い上がって許可取らずに出てきちゃったらしい。


 あの時、銀が俺達が居ないことに気付かなかったら、武器の使い方もあやふやな俺達はすぐに死んでいただろうと言われてしまった。

 いくら平和な世界だと言っても、魔物は居る。そして人が相手になる場合もある。

  俺は魔法で蹴散らせばいいかと軽く考えていたが、ピンキーと黒蹴は別だった。彼らは魔物の居ない世界で育ったんだった。

 なぜそんな重要な事に気付かなかったんだろう。まるで他人を気遣う戦い方を知らないみたいに。


 *


 俺はその日の夜、モヤモヤとした気持ちでベッドに寝転んでいた。なんだか体に力が入らない。

 そういえば召喚された直後、じいさんが脱力感まみれの俺を治してくれたんだった。

 確か首に杖を刺して・・・、ツボでもあるのかな。押してみよ。ぐぇっ。


 特に脱力感が消える訳でもなく、押して痛くなった首をさすっていると、違和感を感じた。

 なんか首に痕がある・・・?

 鏡で確認すると、じいさんの杖で出来た青痣の他に、ちょうど喉仏の辺りに20cmほどの、一閃されたような傷跡があった。


 じいさんの杖の跡は、既にほとんど治りかけていた。


 *


 次の日から、心配性の王様の許可が出るまで、みっちりお城の兵隊さんに技術を叩きこまれた。

 日々基礎体力作り・剣を振る型の練習・魔法の練習・魔力を練る練習と、とにかく色々な事を叩きこまれ、二ヶ月経った頃に、ようやく少しは戦えるようになった。


 4人ともそれぞれに苦手な点があったが、やはり一番に修業を終えたのは、直前まで傭兵として働いていた銀だった。

 俺達が修業している間、ちょくちょくどこかに行っていたっぽい。

 そして今日、ようやく4人全員に、町の外に出る許可が出た。


 さあ!ギルドに行こう!

次回メモ:第2章


いつも読んでいただき、ありがとうございます!!

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