天海~皆の話~2
~前回のまとめ~
女神から聞き出した情報を報告しあう。
黒蹴は日本に帰る方法、由佳は日本に帰った時に召喚の影響が出るのかどうか(時間など)を聞いていた。
そしてピンキーは、「魔界への行き方」「魔王の居る場所」「このまま魔界に行っても安全か(大気が毒などの危険の有無)」「他のPTメンバーは女神に会えるのか」を聞き出しており、さらには皆に「女神は召喚者を呼んだ者を知っている可能性」を告げた。
そして最後はこの3人。
俺と銀と勇者君だったけど。
『俺は記憶を聞いたんだけど、う~ん』
「言いづらかったら、言わなくてもいいよ」
他の2人が口を開かないから、俺が話を切り出してはみたんだけど。
何を言えばいいのか分からずに唸っていると、ピンキーに気を使わせてしまった。
俺が女神から聞いたのは、召喚される前にいた自身の住む世界と、自分の事についてだ。
別に話しても良い内容だったとは思うんだけど。ただ俺の場合は・・・。
女神との約束を、思い出す。勇者と魔王に連なる者には・・・。
勇者君と目が合った。
彼には、言っちゃいけないって事か?
『えー、っとな。俺は、なんでか「言えない」「分からない」って言われたな』
「なんでだろう」
勇者君は不思議そうに首をかしげる。
「もしかして、さ」
ピンキーがいたずらを企む子供のような顔で笑う。
「ニルフの正体が、この世界の秘密を解き明かす鍵・・・だったりして?」
それを聞いて、皆で大笑いした。
さすがに、んなわけないだろ。
『記憶と言えば勇者君はどうだったんだ?』
一通り笑った後で、俺は勇者君に話を振る。
なんとなく、銀は答えたくないって思っているような気がしたからだ。
「ボクはね、聞こうとしたんだけど。
聞いたら勇者としては生きられないって言われたから、聞くのを辞めたよ!」
「辞めちゃったんですか!?」
黒蹴が驚いた声を出す、が。
「うん、辞めたんだ。ボクが成りたいのは過去のボクじゃなくって、仲間と一緒に目指した『勇者』なんだから」
勇者君はサラリと言い切った。
俺は眩しくて、彼を直視できなかった。
勇者君の答えの後。
一通り終わったという空気が祠に流れ、皆が雑談を始める。
止まっていた食事の手も動き出し、俺は再びスズの実の皮剥きに戻った。
『黒蹴バクバク食い過ぎだって! 剥き方、本当に知らないの?』
「知りませんよぉ。ニルフさんこそ、どこで食べてたんですかこんなにおいしいモノ!」
『だから森だって!』
「森って大雑把な! あ、もしかして世界樹島の森ですか!? それとも遭難したっていう島の森!?」
『覚えてないんだって!』
黒蹴と言い合いながら、アイツが食べるスピードよりも速く剥こうと躍起になっていると。
ユーカが果物に手を伸ばした。
そのまま2人で話を始める。
「にーちゃん結構長い間女神様と会ってたって聞いたけど、なんでそんなちょっとしか質問してないん?
一個だけって言われへんかったんやろ?」
「なんか、女神様に逆に質問されてるうちに時間たってたんだよ。
なんだっけ・・・『今の旅の目的は何ですか?』だったかな」
「ふーん、それでなんて答えたん?」
「日本に帰って、家族全員揃う事って答えた」
「なんで?」
「そりゃぁ、この世界は楽しいけど、サッカーも無いしテレビも漫画も無いしさ。
母さんも姉さんもケンタも、・・・父さんも心配してるだろうし・・・。
それに・・・はやく安全な日本に帰って、ちゃんとした和食が食べたい!!!」
「・・・そっか」
「どうしたんだよ由佳、体調悪いのか?」
「んーん、大丈夫。てかホンマの理由は一番最後の奴やろ! 和食くらい彼女に作ってもらいーや! って、この世界、和食無かったんやった・・・。そや、にーちゃん なんで彼女作らんの?」
「なんで今彼女の話!?」
「えーからえーから、教えーやぁ。なんでにーちゃんだけパートナー的な人おらんのか気になっててんって。
ほらほら観念して、ほらぁ!」
「ちょっと、なんで由佳まで女神様と同じ事聞いてくるんだよー!!!」
逃げ回る黒蹴を追いかけつつ由佳は、「女神様ありがとう」と小さく呟いていた。
--*由佳*--------------
「貴方は私に何を聞きたいのですか?」
あの時。
白い部屋に入ったウチに、姉によく似た女の人が話しかけてきた。
ウチは1つ深呼吸をして、女神様に聞いた。
「ウチは、ウチが聞きたいのは。
にーちゃんがウチのせいで「日本に帰る」って事に雁字搦めになってるんと違うかって、不安やねん。
にーちゃん、何年もここに居るんやで?
この世界に彼女とか居ててもおかしくないのに、ずっと日本に帰る方法を探し続けとって、そういう事 見向きもせえへんから。
最初は、ウチの無事を知りたいから日本に帰ろうとしてたって聞いてん。
でもな。
ウチとこの世界で再開してからもまだ、わき目も振らずに日本に帰ろうとしててな。
もしかしたら、ウチを日本に帰すためかなって思ってしもて。
無理してるんちゃうかって思って。
ウチは、それを、知りたい」
それは、ウチが一番、聞きたい事やった。
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次回メモ:彼女
いつも読んでいただき、ありがとうございます!!!
天海はめっちゃ短いと思ってたら、ようやく3分の2でした。
あれ?どこが増えた・・・?