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勇者だったのかもしれない  作者: ぷっくん
空に向かって駆け上がれ!
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天海~合流~2

「こっちの方が走るの速いからさ」

『そういう問題!? っていうかどういう事!?』


「あ、居たいた。おーい!」


 遠くからバタバタと走って来る茶色いアレは・・・黒蹴か。

 俺と同じで茶色にコンガリ焼けてる。

 でもバンダナしてるからな、黒蹴。きっとデコ辺りは面白い事になってるだろうな。

 ピンキーに追いついた黒蹴は俺を見て、ぷっと噴き出した。


「ニルフさんの焼け方、えげつないですね」

『これでもましになったんだよぉ!!!』


 マフラー外して顔面にまんべんなく日が当たるようにしたからな!!!

 黒蹴が笑いながら、俺をまじまじと見つめる。


「白人も焼けるんですね」

『ん、そうだっけか? 普通じゃない? 』


 言われて確かめてみると。

 目の端でシュワっと人型に戻ったピンキーはいつも通りの色白だった。

 後ろからゆっくりとこちらに来る銀も、いつも通りの色白だった。


 地上は常に薄雲が張ってるような状態で、快晴がほぼ(というか全く)無いから日焼けをしている人はほとんど居ない。

 だから肌の色とか気にした事無かったけど。


「ニルフさんの面白い顔のせいで、気になって来たんですけど!」

『知るかよ面白い言うなよ人の顔をぉぉぉお』

 

 てか白人って何だ? 俺の知識には無いぞ!


 後ろで聞いていたピンキーが笑いながら教えてくれたことによると。

 黒蹴達の住んでいた地球には肌の色によっていくつかの人種が分けられていたそうだ。


「確か白人種も普通に日焼けしてたはずだけど。俺や銀は俺達の知る白人種とは違うのかもしれないね」


 ピンキーはこの世界に来たときの≪願い≫によって、体の構造が変わっているから。

 銀は、地球とは違う世界から来た異世界人だから。


 んじゃ、俺は?

 俺は一体誰なんだ?



 頭に浮かんだ疑問の答えを探して 手の平に目を落とすと、そこだけ白く焼け残っていた。


 



 *





『それで、天海族ってどんな人達?』

「ニルフさんきっと、腰ぬかしますよ」

「あー、初めて見たらちょっと驚くかも」


 向こうに見える村への道中、ピンキー達に天海に住む人々について聞いてみた。

 地上に住む人族からみると、少し変わった人々だそうだ。

 女神を信仰して過ごしているのだという。


「ほら、話をしてるうちに着いたよ」

『え、ここがもう村の中?』


 柵とか区切りとか門とか、無いんだな。

 俺は村の中をきょろきょろ見回しながら歩いた。俺達から少し遅れて、銀がつづく。


 ピンキー達に連れられて到着した村は、一見すると 広場に白い雲を丸めて置いただけのように見えた。

 その雲玉1つ1つが建物や住居らしい。

 壁は石を伸ばして曲げて作ったような、よくある方法で作られた柔らかみのあるデザインだ。


「地上にも在るんですか? この方法」


 白い色は、この天海に広がる大地と全く同じ色。

 つまり葉っぱと、雲?


『ちょっと触ってみてもいいのかな』

「どうぞどうぞ」


 建物を触ると、地面と同じでフワフワかさかさモファモファしていた。


『意外と手触りいいんだな』

「断熱と保温とクッション性にすぐれているんですよ」

『お、このカラフルなのはドアか。ピンクの下地に黒の斑点』

「かわいいでしょう?」

『でも窓が無い』

「中に入ってみます?」

『え、いいの?! てかそんな勝手に決めちゃって・・・』


 建物をモサりながら振り返ると。


「はい! そこ、自宅なので!」


 丁寧に両手を体の前で組み、満面の笑みを浮かべた、俺よりちょっと小さめの背の。


『ぎゃぁああぁぁぁあああああ!!! 毛虫ぃぃぃぃいいいい!!!?』


 が、居た。


 




 *







「うふふふふ、驚きましたか?」

『あ、イエ。叫んじゃってスイマセン・・・』

「私、ピンキーさんにお世話になっています、ケムと申します」


 彼女はドアと同じ柄の体色によく合う(?)緑のワンピースを着た彼女は、丁寧に俺にお辞儀をした。

 ちょうどなんていうか、威嚇した毛虫が後ろ脚で立ち上がってる感じで、なんていうか。

 その状態で常時立っていて、頭には長い綺麗な黄色の長髪が流れていて、なんてったらいいんだろう。


 毛虫の擬人化?


 結構色々衝撃な光景にぼんやりしていると。


「ニルフさん、見惚れちゃってぇ」


 黒蹴に背中を小突かれた。

 さっきは気づかなかったが、彼女の横には柔らかく笑ったピンキーが立っている。

 ずっと俺の質問の返事してたの、ピンキーだと思ってたけどケムさんだったっぽい。


「彼女はね、生まれつき耳が聞こえなくてね。ちょうど音を伝える道具の試作品を作ってみたから試してみたんだよ。

 ニルフのシルフ石からイメージを膨らませたんだけど、案外うまくいってさ。

 雷の魔法を上手く使って電気信号を精霊石に(ry」


 彼女は俺を家に案内してくれた。

 つなぎ目の無い真っ白な壁に嵌る、彼女の体と同じ色の扉を開け、一歩踏み入れる。と。


 空から、柔らかな光が降り注いでいた。

 それは天井を透けて入ってきているようにキラキラと、しかし優しく俺達を照らす。

 さっきまでの夏の快晴のような、強力な太陽の光とは全く異なっていて、まるで。


『これって、木漏れ日・・・』

「はい。先ほど話した通り、この家は天海の地面と同じ、雲と葉で出来ていますので。

 水は通さず日の光は通すんです」


 つまりそれって。


『木陰で日向ぼっこしながら毎日過ごしてるようなもん?』

「最高の住み心地なんですよ!」


 いいなぁ! 俺もこの家に住みたい!!!

 木漏れ日に満ちた玄関からは廊下が一本伸びていて、いくつか扉が見えた。


「中はいくつかの部屋に分かれてまして。

 あ、おトイレは後で案内しますね。

 まずはこちらに・・・」


 ケムさんが1つの部屋に、俺を案内しようとした時。


「ニルフさんニルフさんニルフさん! 知ってますかこの家!

 見てくださいよお風呂、雲! 雲風呂なんですよ!!!」


 いつの間に先回りしたのか、両手いっぱいに雲を抱えた黒蹴が違う部屋から飛び出してきた。

 その瞬間。「ひぅっ」って声を出して固まるケムさんが開けかけていた扉からユーカが出てきて黒蹴を一発しばいて部屋に引きずり込んだので、俺も後に続いた。


 部屋の中には勇者君も居た。

 後から銀とピンキーも入ってきて、久しぶりの全員集合だ!

次回メモ:村


いつも読んでいただき、ありがとうございます!!!

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