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勇者だったのかもしれない  作者: ぷっくん
空に向かって駆け上がれ!
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天海~合流~

 ===================

 見渡す限りの白い大地に、ポツンと浮かぶ1つの村。


 建物の数は約30~40ほどで、これでも天海では比較的大きな規模の村らしい。

 家は白い大地と同じ物質で作られているらしく真っ白で、まん丸なフォルムをしている。

 それらは統一の大きさではなく、驚くほど小さいモノから見上げるほどに大きいモノまで様々だ。

 家主の体形や大きさに合わせているのか、はたまた、儀式的な意味合いを持っているのか。


 村の周りには柵などが設けられておらず、しかし村に破壊の後が無い事などから、危険な生物が生息していない事を表している。

 村のほぼ全てが大地と同じ色をしているため、天海に慣れていない者が見た場合、村の姿は地平線に紛れてしまい、気が付きにくい。


 遠くからこの村全体を見回したものは、こう言うであろう。

 まるで—――

 ==================



「まるで雪見大福ですね」

「うわっ。居たの? 黒蹴」


 後ろから掛けられた声に驚いて、振り返るピンキー。

 その手元には、几帳面な文字がびっしりと書き込まれた一冊のノートがあった。

 一時期皆で回し書きされていた「異世界冒険記 (ピ)(黒)(ニ)(銀)」だ。


「そのノート、誰も書き込まなくなって、いつの間にかピンキーさんのメモ帳になりましたね」

「皆 飽きたんだろうね。勿体ないから使わせてもらってるよ」


 木陰に座ったまま、パタンッとノートを閉じるピンキー。その横で、黒蹴が腰を反らせて大きく伸びた。

 背後にある大木がサワサワと音を立て、暖かく柔らかい風が駆け抜けて眠気を誘う。


 2人が居るのは天海にある一番大きな村のすぐ近くにある、小さな高台だった。

 高台と言っても他の大地と同じく真っ白な葉や雲が重なって出来たものだったが。

 しかし不思議なことに、ここには大きな樹が1本生えている。

 世界樹などではなく、地上と同じ樹が、土も無い場所で力強く10mほど伸びていた。

 そのため、村人たちはこの高台を大切に思っているようだ。


 ちなみにここからは村が一望できるため、よく住人のピクニックに利用されているらしい。


 大きく伸びた黒蹴はそのまま真後ろに倒れ込み、葉の絨毯にモフサッと埋もれた。

 そのまま手を伸ばして、ピンキーの横にあったお菓子をつまむ。

 レモン達が持たせてくれた、保存の利く干し菓子だ。


「この景色、由佳はショートケーキって言ってましたよ」

「あー、確かにそう見えるね」


 家の出入り口には、遺跡のある島から取ってきたのだろう、木の板で作られた扉が取り付けられている。

 扉はそれぞれの好きな色に塗られていて、まるで色とりどりのチョコレートの板を撒いたようになっていた。

 村人によると、少しでも村が見つけやすくなるようにとの配慮らしいが。

 残念ながら扉に太陽の強い光で反射して、きっと遠くから見ただけでは気が付かないだろう。

 上半身を起こしてその光景を見ていた黒蹴の腹が鳴る。


「もうすぐお昼だね」

「ケーキ食べたいですね」

「俺は月見トロロうどんが・・・」


 ピンキーの声が止まったことに気づいた黒蹴が顔を向けると、ピンキーの4つの耳のうち、頭の天辺についている2つがピクピクっと動いていた。

 ここから村を結ぶ直線状の、地平線を凝視しながら。

 

「どうしたんですか?」

「んー、あれは・・・。ニルフ達、かな?

 でもどうして、あんなに離れて歩いてるんだろう」


 目を眇めたまま、ピンキーは答えた。




 *




 どうもニルフです、こんにちは。


 あの後2日。

 ドンドン1人で先を行く銀と、ほとんど会話の無いまま旅して、ようやく今までとは違う景色を見かけた。

 なんか高台っぽい白い大地の上に、地上版の木が生えてる場所。

 最初俺が見つけてさ、めっちゃテンション上がったよ。

 だって高台だぜ高台。周り見回せば遠くに何か見つけられるかもしれないじゃん?

 んでさ、見つけた事、銀に知らせようとしたんだけどさ。

 

 一瞬こっちを見ただけで、サッと目をそらされた。


 いやー、長かったよ2日。

 ずっとムスッとしてるんだもん銀。

 俺が話しかけても何も答えないし、なんか殺気なのか変な威圧みたいなの全身から放ってるしさ。

 「近寄るなゾーン」って名付けてやったわ。ふはは。

 

 んでさ。取りあえず高台に登ってみようって言うだけ言ってさ。

 俺だけそっち方向にザクザク歩いてた。そしたらさ。

 白い中に、真っピンクの物体が近寄って来るんだよ、高台の方から。すごい速さで。白い土煙、巻き上げげながらさ。




 逃げたね、俺。



 捕まったね、俺。



 ピンキーだったよ。ピンク色。

 


 そのピンキー、今は俺のマフラー 口に咥えて憤慨中。

 あ、今マフラーは腰に巻いて縛ってるから、ちょうど腰で釣られる形でぶら下げられてる。


 


「逃げることないじゃない、ニルフ」

『いや、魔物だと思ってさ。っていうか何でピンキー』




 なんでピンキー、2mの狼姿? 


 また呪われちゃった!?

次回メモ:村


いつも読んでいただき、ありがとうございまっすん!!!

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