天海~ニルフと銀~5 銀
ジワ投稿されてないって思ったら「5月17日」になってたワッホィ
急に、全てが光に包まれた。
『まぶしっ!』
とっさに手で、目を庇った。
・・・なんか目が痒いな。擦っちゃえ。ガシガシ。
乾いた目に、ビリッと痛みが走る。思わず頭をのけぞらせると、そこに、額からの汗が直撃した。
ものすごい痛。
なんだ俺、目ぇ開けっ放しだったのか?
ヒリヒリする目に若干泣きつつ、周囲を見回すが、何故か目が慣れない。
過剰な光を受けた時みたいに、辺りが白くてまぶしい。
目が見えないまま動き回ろうとしたが、硬い何かを踏んで後ろにひっくり返った。
ガスッ!
後頭部に衝撃が走る。勢いよく前によろめきかけて、そのまま滑って尻餅ドーン!!!
涙出た。
俺は尻を撫でながら、『もう夢から覚めたんだなー』と感じていた。全身で。
もうなんていうか。誰も居なくて良かったよ。
目が慣れるまで座っとこう。
*
『今まで自分の記憶の欠片だと思っていたこの夢は、この世界の勇者の記憶だったのか?』
目が慣れるまでの間、俺はさっき見た夢について考えていた。
ていうかアレは夢なのか?
このルートは先に天海に来たピンキー達も通ったのか?
ピンキー達はこの夢を見たのか?
っていうか。
・・・もし今思った通りに、アレが全て、俺の記憶だとしたら・・・。
『俺の半生、後半が悪い出来事ばっかりなんだけど? 』
泣いてもいいやつ? コレ。
・・・1人でブツブツ一人芝居 (?)してるうちに、だいぶ目が慣れてきた。
なんでこんなに眩しいんだと思ったら、遺跡の天井が崩れて太陽光が直に俺達に降りかかっている。
俺達の見つけた石版は、崩れた天井の下敷きだ。
『これじゃあ、もう1度触って夢を見るってのは無理か・・・』
ピンキーに、調べてもらいたかったんだけどな。
俺は瓦礫を退けられないか確かめようと、座っていた場所から腰を浮かした。
その時。
フッ・・・と、隣から、気配!
背筋のゾワッとするような、凶悪な何かが・・・居る!?
『誰だ!?』
サッと振り返った俺の隣には・・・!!!
うわっ銀だ! 銀が座ってる! 銀あぼーってぐっふゃああ!!!?
そういや、銀と一緒だったんだっけ!?
忘れてた。めっちゃ驚いた。
銀は遺跡の壁に身を預けて座っている。天井辺りの1点を見つめたまま動かない。
俺けっこうバタバタしたんだけど、それにも気づく様子が無い。
『おーい、銀。・・・どした?』
珍しいその表情に、つい肩に触れた。瞬間。
「何をする!!!!」
激しい怒鳴り声。宙を舞う俺の体。
・・・え? 俺、跳ね飛ばされた?
そのまま勢いよく瓦礫の山にぶつかる俺。を、銀が見る。
背筋の凍る、冷たい目で。
俺は、動けなかった。
それが、とても、とても憎しみの籠った目だったから。
俺のぶつかった衝撃で、天井からまた、ガラガラ音を立てて瓦礫が降り注いだ。
それを意に介さないまま、ゆっくりと、銀が俺に近づく。
怖い。
銀の目に竦すくみあがった俺は、動けない。
瓦礫に埋まり倒れる俺の襟ぐりを、銀が掴んで引き寄せる。
そして、背に負った剣をスラリと引き抜き、なんの躊躇もなく彼は、俺の首に・・・。
触れる、瞬間。
彼の目が見開かれた。驚きに染まった表情。
彼は、自身の右手にぶら下げた俺を何度も見直して・・・急に、手を放した。
『ぐぇっ』
腰から地面に落ちた。
尻から脳天に突き抜ける衝撃に、変な声が喉の奥から出る。
そのままぶつけた尾てい骨を押さえてうずくまる俺。
・・・の足の横に、何かがサクっと刺さった。
見たら、銀の剣だった。
俺の太もも数センチ横に、デカめの剣がザックリ床に刺さってる。
ひぃ、ギリギリっギリギリセーフ。もうちょっとで太もも削れてた。
「お・・・オレは。オレは何を」
戦慄する俺の真上から 力の全く籠っていない銀の声が上から振ってきて、俺はぶつけた尻の痛みも忘れて、彼を見上げる。
ちょうど俺の足の上に仁王立ちするような形で立ち尽くす銀は。
呆然と自身の両手を見つめていた。
その手は少し、震えてるように見えた。
*
あの後。
「悪かった」と言って俺に回復魔法をかけた銀は、いつも通りの銀に戻っていた。
さっきの事を聞いてみるも、「いや・・・なんでもない」とはぐらかされ続けたが。
気になるから、と何度も何度も聞き続けている内に、やっと話してくれた。
銀は、俺が見たものとはまた別の記憶を見ていたらしい。
ただ、どんな記憶だったかは、話してはくれなかった。
「あれはおそらく・・・いや、先に向かった皆の意見を聞いてからにする」
そう言って、彼は早足に遺跡から出ていった。
まだ、はぐらかされてるな・・・。そんなに俺は信用出来な・・・。
いや、仲間を疑うのは良くないな。ここはポジティブに考えてみよう。
そう、例えばまだ銀にも、憶測が立てられないとか?
ほかにも聞きたい事はある。
なんで銀は、俺を殺そうとしたのか。
誰かと見間違えたのか、俺が忘れた記憶の中で、銀に何かをしていたのか。
よし、聞くぞ!
あの入り口を抜けたら、俺は銀に聞いて、何かしてたら謝るんだ!
『な、なあ。銀・・・』
「・・・」
銀を追って遺跡を出た後も、どこか険しい、というより焦ったような表情の銀に、それ以上声を掛けられなかった。
次回メモ:ピ
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